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第101話

「…懐かしいな。あの頃と全然変わんないな」


4年ぶりに戻ってきた、かつての我が家。

そして今のユイトを形作る原点ともなった場所。

ユイトの脳裏に当時の記憶が蘇る。


「ここがユイトさんが住んでた場所なの?」

「あぁ。そこの岩壁に小さな穴があるだろ?

 あん中は洞窟になってて、奥の方に行くと巨大な空間が広がってるんだ。

 俺はそこで暮らしてたんだ」

「あの中が、ユイトさんが暮らしてた場所…」

嬉しそうな表情を浮かべるティナ。


「ユイト様。ではあの中に魔石が?」

「あぁ。超高純度な魔石が山ほどあるぞ」


「そうですか……。ついに…ついにここまで来た」

命懸けで辿り着いた場所を前に、なんとも感慨深そうなユリウス。


「ではユイト様。早速あの中に行きましょう!」

「まぁ、そんな焦んなって。

 あの穴の大きさじゃ、ユキが通れないからな」


そう言うとユイトは岩壁の小さな穴に向かって歩き出した。

そして岩壁に向かって大きく両腕を広げると、岩壁全体を土魔法で補強。

その後、ユキが通れるほどの大きさまで岩壁の穴を拡張した。


「よし、これで大丈夫だな。じゃあ行くか」


「うんっ!」

「ワオォンっ!」

「はいっ!」

皆わくわくドキドキ、胸を躍らせながら穴の中へと飛び込んでいく。


そして…


「……うわぁ、凄い!壁がほんのり光ってる!」

淡い光を放つ洞窟の壁を前に、感動の声を上げるティナ。


「不思議だろ?

 実はこの壁、全部魔石なんだよ。

 純度の高い魔石ってのは、こんな風に淡い光を放つんだ」


「…こ、これが全て魔石なのですかっ!?」

「あぁ、全部魔石だ。奥に行けばもっと純度の高い魔石が山ほどあるぞ」

「………」

予想の斜め上行く状況にユリウスは唖然。


「…それにしても凄い魔素濃度だね」

「そうだな。でも奥の方はこんなもんじゃないぞ。

 ま、そのおかげで高純度の魔石が出来るんだけどな」

「そっか…。確かにそうだね」


「じゃあ、奥に進もう」


出迎えてくれた淡い光への感動もそこそこに、奥へと進んでいくユイトたち。

奥に進むにつれ、壁の放つ光がどんどん強くなっていく。

その幻想的な光景に、ついついここが終末の森であることを忘れてしまいそうになる。


その後もどんどん奥へと進む。

そして進み始めてから1時間ぐらいがたった頃、突然、目の前に大きな空間が広がった。


「……すごい」

ティナとユリウスから言葉が漏れる。


なおも奥へと進むユイト。

すると突然、ユイトが足を止めた。


「よぉ、グレンドラ。久しぶりだな!」

洞窟内にユイトの声が響く。


「…ユイト様?誰かいるのですか?」

「んっ?目の前にいるだろ?」

「えっ?どこでしょうか?」


「久しいな。ユイトよ」

その時、太い声が洞窟内に響いた。


すぐに、声がした方に顔を向けるユリウス。

直後、ユリウスの目に飛び込んできたのは、目を疑うほどの巨大なドラゴン。


「ド、ド、ド、ド、ド、」


ドスンッ


初めて目にしたドラゴン。

そしてそのドラゴンが放つ尋常ではない威圧感と圧倒的な存在感。

そのあまりの衝撃にユリウスは気を失い、その場に倒れ込んだ。


「あー気絶しちゃったよ」

「かっかっかっか。そう言うお主も最初は驚きのあまり、

 おかしな動きをしていたではないか」

「あーそういや、そうだったな。

 あん時はまじで心臓が止まるかと思うくらい驚いたからな」


「……で、ユイトよ。その娘は?」

「一緒に旅してる俺の仲間だ」


「初めまして、グレンドラさん。私はティナといいます。

 ユイトさんに命を救われ、今はユイトさんとともに世界を旅しています。

 グレンドラさんのことはユイトさんから伺っています」


「ほう、面白い娘だ。我を見ても驚かぬか。中々の胆力だ」

「だろ?でもティナはそれだけじゃないぞ。

 グレンドラの遊び相手ぐらいにはなれると思うぞ。

 さっきもレッドデビルに圧勝してたからな」

「ほう。それ程にか」


グレンドラがじっとティナを見る。

「……お主、称号を持っておるな?」

「はい」


「がっはっはっはっは。

 まさか、稀有な称号者が2人も揃うとはな。やはり面白い。

 ユイトよ。いい仲間を見つけたな」

「あぁ。俺は本当に運が良かった」


「そこのフェンリルもお主たちの仲間なのか?」

「あぁ、そうだ。ユキって言うんだ。ユキはティナと従魔契約を結んでる」

「ほう。フェンリルが従魔契約を結ぶとは、これはまた珍しい。

 …ふむ。若いのに中々の佇まい。素質もかなりのものだ。どれ…」


そう言うとグレンドラはユキに向かい、なにやら聞き取れない言葉を発した。

その直後、ユキからオーラのようなものが溢れ出す。

これまでもフェンリルにふさわしい存在感を誇っていたユキ。

しかし、それがかすむ程の圧倒的な力強さと神々しさを放っている。


「おい、グレンドラっ!お前一体何したんだっ!?

 ユキが凄いことになってるぞっ!?」

「んっ?気になるか?そうかそうか。くっくっく」

そう言ってニヤニヤするグレンドラ。


「おいっ!」

「かっかっか。冗談だ。

 なんてことはない。

 フェンリルの奥底に眠る神気を呼び起こしてやっただけのこと」


「…神気?」

「うむ。フェンリルは神獣だからな」


「神獣?神獣って、神の獣って意味の神獣のことか?」

「そうだ。太古の昔、神がこの世界を創造した際に、

 神によって創り出された生物。それが神獣だ」


「じゃあユキが…その神獣だってのかっ…!?」

さすがのユイトとティナもこれには驚きを隠せない。


「がっはっはっはっは。どうやら驚いたようだな。

 お主のそんな顔を見たのは久々だ」

「そりゃ驚くだろ!神が創った生物って、んなもん聞いたことないぞっ!

 つーか、何でお前がユキの神気を呼び起こせるんだよ?」


「んっ?それは我も神獣だからな。こんなことぐらい朝飯前よ」

「…は?グレンドラが神獣!?おいおい聞いてないぞ、そんなこと!!」

「そりゃあ言ってないからな。がっはっはっはっは!」


「……はぁ、なんかどっと疲れた。

 まさかグレンドラが神獣だったなんてな…。さすがにびっくりだ」

「そうだろう、そうだろう。崇めても良いぞ。がっはっはっはっは」

グレンドラはご機嫌だ。


「…じゃあさグレンドラ、

 ユキが神獣ってことは、ユキもお前みたいに話せるようになるのか?」

「ふむ。いずれは話せるようになるだろうが、今はあまりに若い。

 あと数百年は無理であろうな」


「数百年!?そんなにもかかんのか……。

 …まぁ、いっか。今でも俺たちの言葉は理解してるみたいだしな」

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