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第1話

「……えっ?……えっ!?えーーーーーーっ!?」


辺りに響き渡る声。

その叫び声を上げるのは、如月ユイト、20歳、日本人。

調理師専門学校に通う学生だ。

そのユイトの視界に突然飛び込んできたもの、それは見渡す限りの鬱蒼とした森。

そしてユイトのすぐ横には、先ほどまでアルバイトをしていたコンビニが。


右へ左へと首を振り、辺りを見渡す。


「………。は?」


突然の出来事に思考は完全に停止。

しばらく沈黙の時間が流れる。


そしてふと我に返ったユイト。

「あー分かった!夢だ!これは夢に違いない。

 ……あぁ、びっくりした」


ということで、ほっぺたをつねってみる。

「……痛い」


もう一回。

「……痛い」


次は、びんたにしてみる。

「………。よーし、一旦落ち着けー落ち着くんだ俺。

 こんなときはまずは深呼吸だ。

 すぅはぁー、すぅはぁー、すぅはぁー」

深呼吸を繰り返すユイト。


「おぉーだんだん落ち着いてきた……さすが深呼吸。

 …って、そんなわけあるかーーーっ!!」

自らつっこむユイト。


「おい、何で夢じゃないんだよっ!?

 つーか、一体ここどこだよ!?」


もう一度辺りを見回す。

前も後ろも、右も左も見渡す限り鬱蒼とした森。

「……はぁ、終わった……」

何が終わったか分からないが思わず声が漏れる。


状況から察するに、ユイトとコンビニは先ほどまでいた場所とは全く違う場所に転移したようだ。


「……けど、こんなことってあるのか?

 まさかこれが神隠しってやつなのか……?」

この状況の理由を必死に考えるも、その言葉ぐらいしか出てこない。


次は上を見上げてみる。

すると木々の隙間からわずかに明るい空が見える。


ユイトがアルバイトしていたコンビニがある場所は、深夜になるとめっきり人通りが減る。

そのため、24時間営業ではなく、朝7時~深夜0時までの営業時間。

この日もユイトはいつものように夜のシフトで働き、深夜0時になったことを確認して店を閉めた。

そう、ついさっきの話だ。

つまり深夜0時なわけで、空が明るいなんてあり得ない。


「はい、日本じゃないこと確定……」


だんだんと不安になってくるユイト。

もともと不安だったが、+αで何かやばい気までしてきた。


(まじでどうする?一体どうしたらいいんだ…?)

(まずはこの森から抜け出したい。…けど出れるのか?)

(この感じだと相当広いよな……)


不安に駆られながらも必死に考えるユイト。

(……でもやっぱ、まずは身の安全の確保だよな)


じっくり考えたいのは山々だが、場所が場所だけに、いつ何に襲われるか分からない。

今この瞬間も危険が差し迫っている可能性だってある。

安全な場所を確保することが、言うまでもなく今のユイトにとっての最優先事項。


「……はぁ。……探しに行くか」


だがユイトは、中々その一歩を踏み出せない。

(……行くのか?ほんとに?この森を?)


不気味な森。熊や猛獣がいてもおかしくない。

言いようもない恐怖がユイトの考えを支配する。

しばらくその場に留まり、葛藤し続けるユイト。


安全な場所が向こうからやって来てくれれば言うことないが、そんなことは絶対にあり得ない。

とは言うものの、どんな危険があるかも分からぬ森の探索など正直勘弁願いたい。

だが状況が状況だ。背に腹は代えられない。


「……やっぱ行かなきゃ駄目だよな」

行きたくない気持ちをがんばって抑え込み、ユイトは森の探索を決意する。


が、その時ユイトは思った。

森の探索に行くにしても可能な限りリスクは減らしたい。

当然と言えば当然だ。

これだけ広い森。安全な場所がすぐに見つかるとも思えない。

途中で食べ物や飲み物を確保できるとも限らない。

むしろ、この不気味な森に安全な食べ物や飲み水がある可能性の方が低いだろう。


「うーん、どうするか……」

頭を悩ますユイトがふと横を見る。


「……おぉ、心の友よ!!」

そこには転移仲間のコンビニが。


早速ユイトは自ら施錠したコンビニのドアを再び開け、店内へと入っていく。

当然、電灯は消え、店内は薄暗い。

だがユイトにとってそんなことは関係ない。

このコンビニで働いて早2年。どこに何があるかはばっちりだ。

迷わず飲食物コーナーへとユイトが向かう。

そして、少しの食料とペットボトル数本を手に取ると、愛用するリュックに詰めこんだ。


本当はもっとたくさん持っていきたい。

だが、身動きがとりづらくなることを懸念し泣く泣くそれは諦める。

その後、他にも何か探索に役に立つものはないか、暗い店内を見て回る。


(しかしこうやって見てみると、本当に色んな物が置いてあるんだな)

普段は特に意識していなかったその品数にユイトは感心。

そして…


「おぉ!これはっ!」


叫び声とともにユイトが手に取ったのは軍手とカラービニールテープ。

軍手は言わずもがな。カラービニールテープは目印用だ。

こんな森では、少し歩けばすぐに迷子になるだろう。

だが、道沿いの樹にカラービニールテープで目印を付けながら進めば、道に迷わなくて済むはずだ。


「我ながら、良いものを発見したな」

ユイトは、うんうんと首を振り自画自賛。


(けど今日ほど、コンビニがコンビニエンスと感じたことはないな)

(名付けた人はまじで天才だな)


その後も、くまなく店内を確認。

一通り店内を確認し終えたユイトはコンビニの外に出た。

そしてポケットからドアのカギを取り出すと、再びコンビニのドアを施錠した。


「ふぅぅー、それじゃあ行きますか」


セーフティーポイントを確保するべく、覚悟を決めたユイトが不気味な森へと足を踏み出した。

新規連載です。

できるだけ毎日投稿しようと思いますので、今後もお付き合いただけますと

嬉しいです。

それでは、どうぞよろしくお願いします!


※本日はもう1話、投稿予定です。(20:30頃を予定しています)

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