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奈々子と健介 vol.004. 俺の方も…悪かった。
「な~にやってんだよ奈々ちゃ~ん。」
と、全く自分は関係ないよと言う風な態度のメタボの田沢。
「…あんたがいきなり入ってきたから、私、避けたんじゃないよ、…んもう…。そのお蔭で…、ったく…。」
と、頭の中に、一瞬そういう風に思っても口には出せず…。
相手がベテランの先輩店員と言う事もあり、
照れ笑いで舌を出しながらも、
「ハハ…やっちゃった…。」
健介も立ち上がり、奈々子も立ち上がって、
「ごめんなさい、お釣り…これ…私、10円…だけど…。ちゃんとありました???」
「…ん…、あぁ…、大丈夫、大丈夫、300…80円と…。あるよ。」
もう既に奈々子は黒縁のメガネを掛けて、
「ごめんなさいね、迷惑掛けちゃって…。」
「あ…いや…、俺の方こそ…、ハハ…、頭…大丈夫…???」
「…えぇ…、まだ…チョット…痛いかな…ハハ…。ごめんなさい。」
と、健介に頭を下げ、健介も、
「ごめんね。俺の方も…悪かった。ごめん…。…ん…じゃ…。」
そう言って、ドアの方へ向かう健介。
その後ろ姿に、
「ありがとうございました。」