奈々子と健介 vol.195. 「俺の彼女は…。」
「私…もう…健介と…。」
「…ん…???もう…俺と…???」
両手をテーブルの上に、そして今度は引っ込めて、
わずかに前屈みに、
「もう…これ以上…健介と…。」
「奈々子。」
「……。」
「奈々子、奈~々~子~。」
「…ん…???」
「俺と…奈々子は…、このまんまだ。俺の彼女は…、お前、奈々子だけだ。」
「…えっ…???」
「大丈夫だ、俺たちは…このまんまだ。俺は…奈々子が好きなんだよ。」
「…けん…すけ…。えっ…???」
優しい顔のままでそう言う健介。
どういう事なのか、さっぱりと分からない様子の奈々子。
「奈々子は~紗友莉の事で悩む、辛い思いをする事は、何~にもないんだ。いつもの奈々子のままで良いんだ。」
「どう…言う…???」
またコーヒーのカップを持って、口に運ぶ健介。
今度は健介が窓の外を見て、今度はテーブルを見て、
引っ込めた後に、またテーブルの上に出した奈々子の右手を握って…、
「奈々子は…俺の大事な女性だ。」
そう言って、
「紗友莉がな…、俺に…、もう…バイバイしなきゃ…って…。」
「えっ…???」
「紗友莉が…俺に…バイバイしてきた。」
「えっ…、どうして…???」
もう一度窓の外を見る健介。
「実はな。」
「うん。」
「紗友莉…。あいつ…、俺の知らない間に、別の男性と、付き合ってたんだ。」
「えっ…うそ…???」
そう言いながら口に手を当てる奈々子。
「多分…、俺と奈々子が出会う、その前…から…だと思う。…いや…その後かな…。」
「そんな…。」
「少し…微妙か…な…。」