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第6話 最高の場所

「はぁ…酷い目にあった」


 ゴミ箱から少し離れた裏路地、僕は座り込んでいた。


 演奏中、警備隊が騒ぎに駆けつけ、多くの人が捕まって行くのが見えた僕は、すぐさまそこから逃げ出した。


「これからどうしよう…」


 ボソッと呟く。


 大通りでも、増してやスラム街であるゴミ箱でさえも問題を起こしてしまった。また問題を起こすとなれば、今度こそ酷い目になりかねない。


「どうしたもんか…ぶっ!?」


 空を仰ぐと、何処からか来たチラシが僕の顔に張り付く。


「な、何だ…?」


【娯楽を与えられる者なら誰でもOK 手品・特技・演奏、目を引くものなら何でもOK 日給1000ゴールド!!】


 何処かのチラシ。しかし、ジョコは文字が読めない為、途切れ途切れとしか読めなかったが、なんとなくバイトの求人が書かれている事が分かった。


「……誰でもOK……演奏!?」


 この前商会で貼っていたチラシの誰でもOKの文字、そして自分が大好きな演奏の文字を覚えて僕は、それに思わず声を上げる。


「…こ、こんなのが所があるのか? でも行ってみるしかないか…」


 僕は少しでも演奏出来る可能性に賭け、チラシに書かれた地図を頼りに、その場所へと向かった。




「ここ…だよな?」


 チラシと辺りの情報を照らし合わせる。


「うん…やっぱり此処だ」


 目の前には、潰れるのではないかと疑われる建物があった。所々建物には穴が空いていて、今にも幽霊でも出るのではないかと言うほどの雰囲気を放っている。


「……でも此処で演奏が出来るなら」


 僕は唾を飲み込みながら、その建物の扉を開ける。


 扉はギギッと音を立てながら、開かれる。


「す、すみませ〜ん…」


 中の様子は古びたバーの様で、テーブルに椅子、カウンターがあり、その後ろには何本かの酒瓶があった。


「此処で演奏が出来るのか…」


 中へと少しずつ足を進めると、ギシギシと床から音が鳴る。


 そんな中、カウンターの後ろ。暖簾が掛かっており、奥へと繋がっているであろう通路を見つける。


「ん…?」


 恐る恐る暖簾を潜るとーー


「…」

「ぐこぉぉぉぉぉ…ぐごぉぉぉぉぉ…」


 大きなイビキをかいている、鼻下も顎も何もかも毛むくじゃらのオジサンが仰向けに寝転がっていた。




「んごっ!?」

「あ…」


 俺がその部屋に足を踏み入れると、毛むくじゃらのオジサンが目を覚ます。


「あ? 何だテメェ?」


 低い、腹の底まで響く様な声が、オジサンから発せられる。


「あ、あの、これを見て来たんですけど…」

「あぁ? こりゃあウチのチラシ…」


 毛むくじゃらのオジサンは、僕の持ってるチラシを目を細めて見る。それと同時にムワァっとアルコールの臭いが漂う。


 うっ…酒臭い…。


 それに顔を顰めていると、50代ぐらいの毛むくじゃらのオジサンが大きく溜息を吐いて頭をガシガシと豪快に掻いた。


「これ見て来たのか…だが残念だったな。もうこれは募集してねぇんだ」

「え! な、何でですか!? 僕、演奏したいんです!」


 折角、好きに演奏が出来る所を見つけたと思ったのに…!


 僕は思わず、毛むくじゃらのオジサンにこれでもかと迫った。

 すると毛むくじゃらのオジサンは、少し身体を引くと言った。


「もう俺はお前みたいな孤児に払う金もねぇ、もうこの店は潰れたんだ。残ったのは酒とただの飲んだくれだけ…。此処でお前が演奏するとしても客は来ねぇし、俺は金を払わねぇ、それでも良ければ演奏しても良いぜ?」


 フンッとそっぽを向くと、毛むくじゃらのオジサンは手をひらひらと払い横になった。


 まるで僕が帰るだろと言わんばかりに。


 でもーー。


 今の話を見た限りでは、此処で演奏してたらお金が貰えてたんだ…! 今は貰えないみたいだけど…それなら僕は…


「やります!!」

「っ!!?」


 僕は部屋に大きく響く様な大きな声で、毛むくじゃらのオジサンに言った。


 ここなら雨風の心配は…多分しなくて良いし、スラム街近くにあるこのお店ならルミナス教の人達が来る事はないだろうし、此処がお店なら、騎士団の人にも迷惑が掛からない! 僕がどうにかして人を集めれば何も問題なし!!


 最高だ!!


 僕が迫る様にして毛むくじゃらのオジサンに言うと、オジサンは大きく溜息を吐く。


 するとーー


「…勝手にしろ」


 寝っ転がったままそう言うと、背中を向ける。


「僕はジョコって言います!」

「…ちっ。ガンドルだ」

「これからよろしくお願いしますね!!」


 俺はそう言うと、踵を返す。


 まずはお客さんを呼ばないといけないよね…それだったら、此処はどんな人が来てたのか聞かないと。


 そう思って部屋から出る瞬間、ガンドルさんに聞く。


「あ、因みにここって酒場? で良いんですよね? どんな人達が来てたんですか?」


 そう聞くと数秒静寂が訪れた後。


「ーーだ」

「え?」

「筋肉バー "バーベルマッスル"だって言ってんだろ!! 来るのはマッチョ好きな女か、トレーニング終わりの男だ!! 恥ずかしいから言わせんじゃねぇ!!」

「は、はぁい!!」


 僕は怒鳴られて直ぐ様お店の方へと出て行った。

明日もお昼に更新します!


次回

あの少女との出会い…


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