表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/23

第4話 逃げた先は

「えっと…」

「ひぃ、ふぅ、みぃ…おっほう!! これぐらい有ればあの伝説の名酒、紅の熱血(レッドブラッド)が飲めるな!」


 僕の視線の先には、小汚いオジサンが硬貨を数え、ほくそ笑んでいる姿があった。


 オジサンは誰? とか、それは僕のお金だ! とかは言うつもりはない。


「神官は…?」


 僕がそう呟くと、オジサンの首が180度回ったかの様に此方を向く。


 白髪の短髪で、いかにも何処にも居そうな容姿をしており、顔には幾つもの皺が刻まれ、無精髭が生やされている。


「アイツなら追っ払った。俺の家の前でピーチクパーチクうるさかったからな。俺が一言二言言ってやったら尻尾を巻いて逃げて行きやがった!」


 オジサンが腰に手を置いて豪快に笑う。


 それとは見合わない筋肉の盛り上がりが、凄い重圧を感じる。


 僕は神官が居ない事に安堵し、腰を抜かす。


「ん? どうした?」

「あ、ありがとうございます。実は僕あの人に追われてて、逃げる為にこの家に入って……すみません」

「何を謝る? お前が入って来てくれて俺も得をしたし、お前も得をした。それだけだ」


 良い笑顔で此方を見るオジサンは、硬貨を持ちながら親指を立てた。


 ま、まぁ、命に変わるなら安い物だよね。


「そ、そうですか。ありがとうございました」

「おうおう、良いってことよ! …ん? 何処に行くんだ?」

「何処って……分かりませんけど…」

「あ? 何だよ! お前スラム街に住んでんのか!! なら、此処で寝泊まりすれば良いじゃねぇか!!」

「え…」


 オジサンが僕の肩を強く叩く。


 僕にとってこの提案はありがたい。此処に泊まれば、寝ている時に変に警戒しなくて良いし、雨風も凌げる。


 だけど…また裏切られる可能性もあるんだよな…。


 僕は昨日の商会の事を思い出し、その結論に至った。


「あの…大丈夫です」

「? そうか? 無理にとは言わねぇぜ。気が向いたらいつでも来て良いぞ!!」


 良い人……なのか?

 でも、今日会って信用なんてしちゃダメなんだ。


 僕は歯を食いしばり、その小屋から出る。


「じゃあな〜」

「っ!」


 オジサンが大きく手を振って僕を見送る中、僕はそれに何も返す事なく走り去って行った。



 ◇


 今日は何て幸運なんだ。

 闘技場の賭けに負け、やけ酒飲んで財布の中身をすっからかんにして、帰ってきたらこれだ。


 俺は隅にある椅子に腰掛けるながら、机の上に置いた大量の硬貨から、一枚を指で弾き回す。


 あの変な神官を追っ払っただけで、こんな金が手に入るなんて俺の運もまだ捨てたもんじゃねぇ。


 自然と口角が上がる。


 トントントン


 そんな時、出入り口の方から戸を叩く音が聞こえ、さっきの坊主が帰ってきたのかと、勢いよく戸を開いた。


「何だよ坊主! やっぱり…って、お前らか…」


 戸を開け居たのは、前の職場の部下共だった。

 ここ連日、コイツらは押しかけて来ている、そろそろ嫌になってくる。


「シヴァさん…戻ってきて下さいよ…」


 さっそく本題だ…来るなら茶菓子でも持ってこいってんだ。


 俺は不機嫌を隠す事なく大きく溜息を吐く。


「だから言ってんだろ? 俺はあんな狭い所で縛られて働きたくねぇ」

「此処と変わらないじゃないですか!」

「馬鹿野郎! そう言う話をしてんじゃねぇ!! 俺が話してんのは()()の話だ」


 俺はそう言いながら、胸を親指で指す。


「言われた事やって、終わったらまた言われた事をやる…そういうのは俺には合ってねぇんだよ」

「シヴァさん…」

「さっさと帰れ。此処に居ても俺はお前らをもてなすつもりはねぇぞ」


 そう言うと、アイツらはすごすごと帰って行った。


 はぁ…嫌だ嫌だ。いつまでも粘着質に絡んで来るってのはよ。うざったくて堪んねぇわ。


 ゴキゴキと首を鳴らすと、坊主から貰った硬貨に手を伸ばす。


 さてと…あの坊主から貰った金でさっそく紅の熱血でも買いに行くかね。


 俺はルンルンと、懐いっぱいに硬貨を抱いて、小屋から出た。

次は19時頃です!!٩(๑❛ᴗ❛๑)۶


次回

ジョコ、小さな勇者に…


「面白い!」

「続きが気になる!」

という方は、ブックマーク・評価していただけると嬉しいです!


評価は広告下にある☆☆☆☆☆から宜しくお願い致します!


してくれたら私のやる気がupしますᕦ(ò_óˇ)ᕤ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] いいね [気になる点] 私が知っている限りでは音楽をして才能のあるやつはみんな付き合いにくいが,この主役は少しおとなしい性格だ [一言] 新しい作品を読んでインスピレーションを探している間…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ