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第3話 処分

「〜…♪」


 パチパチパチパチッ ピュッピュッ 


 ピューイッ


 な、何が起こっているんだろ?


 早朝。金貨を貰った後から僕は、そこで演奏を続けていた。


 今日は調子が良いぞ! もしかしたら最高記録の硬貨5枚以上なんて行くんじゃないか?


 そう思っていたのだがーー。


 ジャラッ


「お、おっふ」


 足下のシルクハットを見ると、その中にはシルクハットの半分を占める程の色々な硬貨が入っていた。


 斬新かつ、革新的な作戦だとは思っていたが、まさかこんなにも上手くハマるとは思いもしなかった。


 陽はまだ高い所にある。でも、もう手持ちでは持ちきれない…。


「す、すみません! ありがとうございました!! 今日はこれで終了したいと思います!!」


 周囲にいる何十人もの人に呼びかける。


「えー!」

「何だよ、もっと聞きなかったぜ…」

「まだ俺少ししか聞いてねぇよ!」

「そうだ! もっとやれよ! こっちは金払ってやってんだぞ!!」


 前面にいる人々から不満が吐き出される。


 嬉しい限りだ。だけどこれ以上やってもお金は貰えないし…何よりこれ以上騒ぎを起こしたら警備している騎士に捕まるかもしれない。


 今や僕の周りに居る人々は大通りの半分を占めている。遠目から見ても、一目で人が集まっては事が分かる。


 その中心に居るのがスラムの少年だと知られれば、僕はすぐにでも処分されてしまうだろう。


「すみません!! また明日! 大通りの何処かでやります!! どうかその時に見て下さい!!」


 僕が大声で叫ぶと、周囲の人々からまた不満の声が聞こえて来る。


 僕の演奏をそんなに聴きたいのは嬉しいけど…ここまでなるとは思ってなかったな。

 周りの様子から、僕は思わず苦笑いを浮かべてしまう。


「此処で何をしている!! 先程の声は聞いた事があるぞ!!」


 そんな中、1つ不安な声が聞こえて来る。


 今の声! 昨日のルミナス教の!!


 それを聞いた僕は、急いでそちらの方向に目を向ける。

 その人々の隙間からは、此方に進んできている前に殴られた下級神官の姿が見えた。


「っ!」


 僕はそれを見て、急いでギターとパンパンに硬貨が入ったシルクハットを持ち、踵を返し、裏路地へと入る。


 あんなに目立ったんだ。今あの人達に捕まったら、今度こそボコボコにされかねない!


「やはり! 待て!!」


 背後から制止の声が聞こえ、硬貨を何枚も落とすが、僕は拾う事なく走り続ける。


「はっ! はっ!」


 硬貨の重さがいつもより足を重くする。しかし、僕は足を止める事無く、急いでスラム街へと向かう。


 ルミナス教会は基本的に汚れた場所には訪れない。汚れた者と同じ空気を吸うのも嫌う程。訪れるとしてもそれなりの装備を整えてから来る。


 昨日の僕の血が足に付いた時の反応を見れば、それは顕著だろう。


「ーーて!!」

「まだ追ってきてる!」


 いつまでも走ってても仕方ないと、そう考えた僕は、近くにある木造の建物の扉を開けると、そこに飛び込んだ。


「っ…っ…」


 僕は下級神官にバレない様に息を殺す。


 タッタッタッタ…タ…タ…タ…


「硬貨は此処で止まっている…近くにはいるな」


 外から、それも凄く近くからのその言葉に心臓が飛び跳ねる。


 そうか、このシルクハットから落ちた硬貨がそこまで落ちているのか…!!


「なら、ここを探せば居るな…」


 ま、マズイ!

 そう思った僕は、シルクハットに入った硬貨が落ちない様に静かに奥へと進んだ。


 右へ、左へと一直線になっている通路を進む。


 しかし、建物の奥に行けば行くほど自分の首を絞めているのが分かった。


 何をやってるんだ…これじゃあ僕の逃げ道が無くなるだけじゃないか。


 僕は1番奥で見つけた部屋の隅で、小さく縮こまった。


 僕はただの12歳の痩せ細ったスラムの子供。対して相手は、成人したルミナス教会の下級とは言え神官だ。


 ルミナス教会では5つの階級が存在する。

 下級神官はその中でも1番下だが、一般人よりも何かしら優れている点が有れば入る事が出来る階級だ。


 つまり、今追って来ている下級神官は一般人よりも優れた所があるという事。


 そんな人から僕は逃げ切れるのか…?


 その数秒後、僕はその考えを払拭するかの様に静かに息を吐いた。


「いや……僕の手足はまだ動く…僕がアイツを倒せば良いんだ…!!」


 拳を握り、自分に喝を入れるかの様にその拳をコツンっと、少し強めに額に当てる。


 そんな時、ギシッという音が聞こえ、此方に誰かが近づいて来ている音が聞こえた。


 来たっ!!


 自分の力じゃ相手を倒す事なんて無理…それなら…


「ん? 何だ? 何処の子供だ?」

「うおりゃあー!!」


 僕は人影が見えた瞬間、シルクハットに入っている硬貨をその人目掛けてばら撒く。


 こうすれば相手の隙を一瞬でも作れるだろう。


「な、何だぁ!?」


 僕はすぐさま隣を抜けて、出口へと向かった。


 案の定、相手は老人の様なしゃがれた声で驚いて…え?


 後ろを振り返る。


「お! これ全部硬貨か!! いや〜、儲けもん、儲けもん!!」


 そこには床に這いつくばって硬貨を拾う、白のタンクトップ、小汚いズボンを履いた、これまた汚い無精髭を生やしたオジサンがいた。

次は18時です(*´ω`*)


次回

おじさん、ありがとう(*´∀`*)


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