7話「接見」
「門を開けよ、火貴人のお通りだ」
皇帝付きの侍衛の1人、李考公の声に合わせて養心殿の門が少し軋みながら開いた。
「どうぞお入りを」
門の中を指し示す彼の手に従い養心殿の前庭に入りそれを抜け、母屋へと入る。入り口の簾を抜け、廊下の途中で李考公は立ち止まるように指示し、部屋に入り春翔の来訪を告げた。
「皇上のお心は良くわかりました、ですが母の言葉も少しは覚えておいていただきたい、それから過度な期待があの子の重荷とならないように」
そんな声が聞こえた数秒後、皇帝生母である烏雅氏が部屋から出てきた。
春翔はおやと思いながら軽く膝を折り彼女を見送った、皇帝である永醒とその母・西太后の意見が衝突する事などほとんど無いからだ。
西太后が彼の視界から消えた直後、部屋から出てきた李考公が「お入り下さい」と言った。
「李考公、ありがとう」
「いえ、これが私の仕事ですから」
そう言う彼に少し微笑みかけてから彼は皇帝の居る部屋へと入った。
「臣给皇上请安」
「免礼」
跪いて挨拶をし、皇帝の言葉に従い立ち上がる。
「皇上の即位の儀式が無事に終わりましたことお慶び申し上げます」
「ありがとう」
そう言って皇帝は春翔に座るよう指示した。
「それで、私を呼ばれたのはどのような意図が有っての事でしょうか?」
「我が清とガーディアンズの協力体制を再確認したくてね」
その答えを春翔は少しおやおやと思いながら聞いていた。
(ガーディアンズが後清を裏切るとでも思われているのか、それとも逆に後清がガーディアンズを裏切るつもりなのかな?)
その疑念に気付いたのか皇帝が慌てて言葉を繋げた。
「いや、そんなに難しい話ではなくてね、ほら代が代わったわけだし、その、、、」
「皇上のお気持ちはよくわかります、要はあなたの代になったことでガーディアンズが清から離れていくのではないかと、そう思われているのでしょう?」
「まぁ、そうだね、、、」
「それならご安心下さい、我々ガーディアンズは皇帝の代替わり位で国から離れていくような事は致しません。特に清は戦略、戦術的に非常に重要な国です、こちらとしてもこれからも強い協力体制を維持していきたい所存です」
「なら良いんだけど、、、」
皇帝はなおも不安そうな顔をする。
(やはり弱すぎる、、、この方には皇帝としての覚悟を持って貰わなくては、、、一丁煽ってみるか)
そう考えた春翔はさらに口を開き皇帝に話しかけた。
「皇上、あなたは一国を統べる皇帝です、もし裏切るのであれば全軍を以てお前たちを殺すと私に言う位の覚悟は持って頂きたいものです」
「それはそうだが、、、」
「それから皇上、矛盾するようではありますが敢えて申し上げます。国を守るため人を疑うのは無理が有ることでは有りませんが、それが疑心暗鬼まで行ってはどうしようもありません。円滑な統治は民からの、臣からの信頼なくして成りませんし、それを得るためには民を、臣を信じなければ話になりません。どうか明の太祖のような前例に従うことが無いようにお願い致します」
「わかった、気をつけるよ」
その答えに春翔は一礼してその場を辞そうとした。
「あぁ、火貴人」
「はい?」
「軍事的な事なら私ではなく皇后に相談してくれ、彼女の方がよっぽどその辺りには通じてるからね」
「承知致しました、この後ご挨拶申し上げてから紫禁城を出るつもりです」
「うん、是非そうしてくれ」
「臣告退」
そう言って、彼は今度こそその場を辞し、その足で皇后・烏喇那拉氏の元へと向かった。