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4話「上官との関係」

ガブリエーレ・パッドリノが元帥・火神春翔付の副官としてガーディアンズ総合本部に配属されてから1週間が経過した。

学生時代や部隊実習時代に事務作業には慣れていたため業務が滞るような事は無かったが、いかんせん世界規模の組織のトップだけありスケジュールの過密さや取り扱う機密の重要性は人事局の比では無い。

例えば午前9時に業務を開始したとして、そこから10時30分まで事務作業、10時35分から定例会議、11時から技術局長からの報告、11時25分から40分まで司令部要員とのミーティング、そこから昼休みの始まる正午までさらに少しの事務作業をこなしようやく昼休み、それが明けるとすぐに工廠区に向かい新技術の視察、15時から全世界方面軍とのオンライン会議、16時から北米共和国大使との会談、16時30分から後清特使との打ち合わせ、17時20分から18時まで2回目の定例会議、18時から20時まで事務作業を行い退勤。これが内容こそ日に変われど基本的な、あくまで()()()()()()()勤務形態である。

では彼の上官である春翔はどうなのかと言うと、正直な所ガブリエーレにもよくわかっていない。わかっているのは毎日彼よりも早く出勤し、ガブリエーレには休憩を促すくせに自分は一切休憩を取らず、そして彼よりも遅く退勤していると言うことだけである。

(あてにされて無いのかなぁ、、、)

その日もまた、彼は自分の上官に昼休みに休憩を取るように促したが「僕は良いから」とはぐらかされ、彼一人執務室から外に出されたばかりだった。

(やっぱり成績だけじゃダメって事なのかなぁ、、、)

難しい顔をしてプレートの上のソーセージを突っつく。考えに没頭する余り、背後に近づく影にも気づかなかった。

「おーい、中尉?おーい、おい?中尉ー?」

後ろを向くといつぞやの青年将官が心配そうな顔をして彼を覗き込んでいた。

「失礼しました!また気がつかなくって、、、」

敬礼をしながら言う。

「どうも、俺が君を見かける時はいつも考え事をしているねぇ」

「はは、、、確かに、、、」

「、、、というよりも悩んでいたのかな?」

バッと青年の方を向く。

「図星かな?」

ガブリエーレは相談すべきかすまいか、一瞬逡巡したか、何かヒントを得られるかも知れぬと相談してみる事にした。

静かに彼の話を聞いていた青年だったが、少し笑うと「考え過ぎだよ」と言った。

「そうでしょうか?」

「あぁ間違いない、この俺が言うんだからね」

「あのそう言えば閣下のお名前は、、、」

「あー、俺も名乗ってなかったか、ガーディアンズ欧州方面軍司令官のイニーゴ・カンピオーニだよ」

「カンピオーニ大将!?」

驚愕して叫ぶ、幸い周りに人は居なかったので注目を集めるような事は無かったが、カンピオーニは慌てて静かにするよう合図した。

「君は一々オーバーだね」

「当たり前です、方面軍司令官なんてガーディアンズ最高位の一角じゃありませんか」

「最高司令官に毎日あっている君が言うかね、、、」

あきれながらも「まあいいや」とカンピオーニは話を元に戻した。

「火神元帥は人に負担を強いたがらない人だ、自分一人がそれを引き受ければ良いとね。確かに彼は死なないかもしれないが、それでも人間だ、どういうことかわかるね?」

「我々と思考回路や感情の起伏は同じように有ると」

「そう、そしてそれ以上に疲労だって我々と同じように溜まる。だからこそパッドリノ中尉、富永中将は君を彼の元によこしたんじゃないかな?」

「え?」

「君の成績や評判を調べさせてもらった、誰がどうみても優秀、そして人を思いやれる、完璧じゃないか」

「ありがとうございます、、、」

「君は人を思いやれる、なら火神元帥の仕事を少し引き受けて、誰かに頼るという事を覚えさせられると富永中将はそう考えたんじゃないかな?」

「そう、、、だと良いんですけど、、、」

ため息をつくガブリエーレの肩をカンピオーニが叩く。

「ま、少なくとも頼りがいが無いとか、そういう風に思われている訳ではないから安心しな?俺からも火神元帥に言っておく、ちゃんと部下を頼ってやれってね」 

「ありがとうございます!」

立ち去るカンピオーニを敬礼で見送る、彼はそこで昼休みが終わりかけていることに気がついた。

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