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二話目


 一人くらいなら隠れられそうな、深いシンクと長細い蛇口。

 ガラス戸の付いたキャビネットが、理科準備室の三分の一を占領している。

 使い古されたデカい作業机が中央に、よく分からない書類棚が並んでいて手狭だ。

「テスト期間中くらい、勉強したほうがいいよ」

 水が入ったビーカーを手元近くに置かれた。

「してるよ……それなりに」

 作業机に突っ伏していた頭を持ち上げて、一気に飲み干す。

 久しぶりの全力疾走はしんどい。

 よっちゃんすげえな。

 これが愛の力?

 まだ探して走ってるかなぁ、元々スタミナあるんだよな、あいつ。

 あれっ、これ飲んでもいい水か?

 大丈夫か、お腹は強い方だし。

 俺よりそういうの気にするタイプだから。

 息を深く吐いて整える。


 さて。

 隣でキャスター付きの椅子に座って、ゆらゆらしているクラスメイトに、

「きゃなめこそ、ここで何してるんだ?」

 一息つけたので質問した。

 匿ってくれたのは有り難いが、特別教室しかない2号館に一人きり。

 無視は出来ないぞ。

「……その呼び方も、もうやめろ」

 質問とまったく違う答えが返ってきた。

「えっいいじゃん。俺しか呼んでないし」

「恥ずかしいから、呼ばないんだろ」

 渋い顔で言う。

「小学校から呼んでんのに、誰かに何か言われたのか?」

「幼稚園から呼んでるよ。誰にも言われてない、俺が嫌なだけ」

 幼稚園の時は、上手く発音出来なくて、そう聞こえたんだよ。

「ふーん。そういう年頃なのか……」

 意味有り気に言うと、

「……どう思ってもいいけど、やめろよ、もう」

 これ以上は話すなという威圧感を出してきた。



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