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第117話「導く声」

ぽっかり空いた空間、ゴブリンどもの死体の中に立っていたのは、

剣を大きく打ち振る、ディーノ・ジェラルディであった。

 

どうして!?

ディーノがおびただしい敵の囲みを破れたのか!?

……という疑問はある。


何故!?

敵のど真ん中に現れたのか!?

……という疑問もある。


しかし『絶体絶命』の今、ステファニーはそんな事を考えてはいられない。


「ディーノおおおおおっ! ここよおっ!」


ステファニーは呼びかけに応えるよう、

物見やぐらから、大きく手を打ち振った。

 

その姿を見たディーノは安堵した。


伝わって来る波動で分かる。

仲間は何とか『無事』なのだと!


だが、その時!


きゃああああああっ!


北門付近を、セザール達村民と共に守っていたオレリアが、

つんざくような大きな悲鳴をあげたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


オレリアの悲鳴は、物見やぐらに居たステファニーの耳にも入った。

状況を知る為、ステファニーは眼下のロクサーヌへ叫ぶ。


「ロクサ~ヌぅぅ!! どうしたのおおっ!!!」


「た、大変ですっ!! ステファニー様あ!! き、北門が破られましたあっ!!」


「な、なに~っ!」


ステファニーが安堵したのも、束の間。

ゴブリンの攻勢は衰えていなかった。


北門は村民だけで守っている。


個々の守備力では劣るが、南門を守る少数のステファニー達より、

遥かに数が多い。


だからステファニーは何とか守り切れると判断し、戦力を配分したのだ。


しかしステファニーは計算違いをしていた。


戦闘の不慣れさはともかく、

敵の大群を見た村民達の『戦意喪失』を軽視していたのだ。


そしてステファニーにはあずかり知らぬ事であったが……

北門が破られたのは、南門よりも組し易しと見て、北門攻撃に重きを置いた、

敵軍のリーダー、ゴブリンシャーマンの優れた判断力が起因していた。


「しまったあ!!」


自分の判断ミスを一瞬にして悟り、

一気に物見やぐらを飛び降りたステファニー。


「ステファニー様!」


駆け寄ったロクサーヌへ、ステファニーは厳しい表情で言い放つ。


「ロクサーヌ! 南門は任せた! 私は北門へ行き、侵入した敵を掃討するっ!」


「は、はいっ!」


単身向かう(あるじ)の身がひどく心配ではあったが……

有無を言わさぬ雰囲気のステファニーに、ロクサーヌは了解するしかない。


ステファニーは、なおも叫んだ、


「聞いて! ディーノが戻った! あいつが来れば必ず形勢は逆転する! それまで何とか守り切るのよっ!」


言い切れる根拠は全くない。

だが、勝利への確信は間違いなくあった。


ステファニーは言い捨てると、脱兎の如く駆けだしていた。


一方、こちらは北門のオレリアである。


ロクサーヌが言った通り、

ゴブリンどもは持っていた得物で北門へダメージを与え続け、

遂に破壊に至ったのだ。


破られた北門からは「どっと」という言葉がぴったりするくらい、

数多のゴブリンどもがなだれ込んで来た。


奴らに呑み込まれたら……

人間も家畜も、生きとし生ける者は、

骨まで喰らいつくされる。


「こ、これまでかっ!」


悔しそうに村長のセザールが叫んだ瞬間。

死を覚悟したオレリアの心に、聞き慣れた声が響いた。


『オレリアさん!』


声はゴブリンの巣穴へダメージを加える為、出撃したはずのディーノであった。

 

な、何故!?

不思議!!


村内に居るはずのない彼の声が、それも自分の心に聞こえるのか、

オレリアには分からない!


「えええっ!? デ、ディーノさん!? ど、どこっ!?  どこに居るの~っ!!!」


『話している暇はないっ! 俺を信じて、皆と一緒にクロヴィス様の石像まで走ってくれ!』


「な!?」


『早くっ!!!』


物言わぬ、動かぬクロヴィス様の石像へ行ってどうなるのだろう?

状況が変わるとは思えない。

オレリアは戸惑い、迷った。


しかし!

ここまで来たら、もうディーノを信じるしかない!


「みんな~っ! 撤退よ~っ!! クロヴィス様の像まで走って~っ」


オレリアは必死に防戦する村民達へ向かって、

あらん限りの声で叫んだ。

 

そして、ディーノの言葉に従い、思い切り駆け出していた。


……ポミエ村は狭い村だ。

 

同じ方向に、全速力で走った女子ふたりは……

すぐに遭遇した。

丁度、クロヴィスの石像の前である。


「ああっ!? オ、オレリアっ!!!」


「うわっ!? ス、ステファニー様っ!!!」


お互いの名を呼び合った後、

更に同じ言葉が重なった。


「「どうしてっ!」」


ディーノを信じる!

信じてここまで撤退して来た!

その強き思いから、オレリアは相手より先んじて大声で叫ぶ。


「ディーノさんにっ!!! 導かれましたっ!!!」


気合のこもった、オレリアの揺るがぬ声を、

ステファニーは真っ向から浴びた。


「ええっ!? ディーノに!? み、導かれたっ!?」


意味が分からない!

わけも分からない!


先ほど、ディーノからの声を心で聞き、

戸惑ったオレリアと同じ思いをステファニーは覚えていた。


だがステファニーは異常に勘が鋭い。


先ほどディーノがいきなり現れ、謎めいた風の力で、

数多のゴブリンを殲滅したのを目にしていた。


改めて見やれば、100メートル先に数百のゴブリンどもが迫っていた。


もう逃げ場はない!

ディーノを信じ、オレリアと村民達を守りながら戦うしかないのだ。 


「「ディーノおおおおおっ!!!」」

「「ディーノさあああんん!!!」」


ふたりの女子はあらん限りの声で、同じ『想い人』の名を絶叫した。


その瞬間!

またも奇跡が起こった!


苔むし、古びたクロヴィスの石像が再び、眩く眩く発光したのである。

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