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第113話「合流」

ポミエ村で借りた古ぼけた荷車へ、冒険者ギルドで購入した荷物を積み込み、

車輪をわずかにきしませながら引っ張り、ディーノは軽やかに歩いて行く。


ステファニー達やオレリアから放たれる、ポミエ村からの視線が、

森の木々によって閉ざされると……どこからともなくオルトロスが現れた。


さすがに、神妙な顔つきをしている。


『ディーノ、その荷車の牽引(けんいん)を代わろう』


『いや、大丈夫さ。これも鍛錬(たんれん)の一環だよ』


『いや! やらせてくれよ! 頼むから!』


『分かった、じゃあ運んでくれるかな』


『おうよ!』 


ディーノはロープを取り出すと、オルトロスと荷車をつないだ。

しっかりつながれたのを確認してから、オルトロスはゆっくりと歩きだした。


そのままふたりは黙って森の中を歩いた。


しばしの沈黙。


聞こえて来るのは鳥のさえずりだけだ。


ここで突如オルトロスが、ぽつり。


『俺を……全く責めないんだな、ディーノ』


『昨日の失策』を言っているのだろう。

だいぶショックだったらしく、オルトロスの言葉にいつもの『張り』がない。


ディーノはオルトロスへ視線を向けず、


『おう、俺だって、しくじる事は良くある。だから他者の事は偉そうに言えんよ』


『な、成る程……そうか』


『オルトロス、お前は手を抜いたわけじゃない。一生懸命やった結果だ。反省と謝罪は必要だが、後は堂々と、穏やかであれば良い』


『そう……だな、すまぬ』


『うす! 次だ、次。それに俺達はチームだぞ。全員で助け合い、補い合い、事にあたる。それで最後に勝てばOKなのさ』


『そうだな! 最後には必ず勝とう!』


ディーノの(いたわ)りとさりげない励ましにより、

オルトロスの言葉に力が戻って来た。


もう……大丈夫だろう。


『ディーノ、お前の作戦は聞いたぞ。今度は……本気で戦って良いのだな?』


『ああ、オルトロス。俺も戦うぞ。彼女達の手前、おおっぴらに出来ず、今迄セーブしていたが、もてる力の全てを、本気を出してやる』


『ああ、ぜひ見たいぞ、お前の本気』


オルトロスは、「本当に楽しみだ!」という期待の波動を送って来た。


応えて、ディーノは「にやり」と笑う。


『うん、それに新たな力も得たよ』


『え? お前に新たな力が? そ、そうなのか?』


『おう、昔、あの村を救った英雄から託されたんだ』


『そうか、託されたか……あの屋敷の爺さんの時と同じだな』


オルトロスの言う爺さんとは……

ディーノへ地の究極魔法を託して天へ還った、

今は亡きグラシアン・ブルダリアス侯爵の事である。


『これで力を受け継いだのは3人目だ……俺もいずれ、誰かに後を託す時が必ず来る、そう思ったよ』


『ふむ、達観してるな』


『ああ、お前達、永遠の命を持つ魔族と比べれば、人間など、ほんの一瞬の命でしかない。いつかは力尽きる』


『まあ、……そうだな』


『だからこそ、俺は今を生きる事に全力を尽くす。絶対、手を抜きたくない』


『今を生きる事に全力を尽くす。絶対、手を抜きたくないか……うむ! 俺も今の言葉を肝に銘じよう』


『ああ、……期待しているぞ、オルトロス』


『任せとけ』


まもなく、ゴブリンどもの本拠地『巣穴』だ。

ふたりは辺りを警戒しながら、出来るだけ音を立てぬよう、静かに歩いて行った。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


ディーノとオルトロスは荷車を繁みに隠し、自身も身をかがめ、

巣穴の様子をうかがった。


ジャンの報告通り……

誰が造ったのかも不明な旧い迷宮が、

半ば崩れ落ちた石造りの入り口を、不気味にさらしていた。

 

堕ちた妖精ゴブリンは地下に穴を掘り、巣穴とし、群れで生活する。


夜行性であり、陽が落ちると、行動が活発となる。

昼間も活動するが、運動能力が夜間に比べ、著しく落ちる。


ゴブリンも人間のように充分な睡眠をとらないと、身体がしっかり機能しないのだ。

人外の魔族なのに、何とも皮肉な事である。


ディーノとオルトロスの気配を察知し、どこかで見ていたのだろう。

黒い小さな身体が、軽業師のように、近くの木から降下。

猫特有の動きで反転し、地面に降り立った。


現れたのは妖精猫のジャンである。


ジャンは素早く走り、ディーノ達が潜む繁みへ入って来た。


『おう、ジャン、お疲れ。どうだい、首尾は』


『当然、ばっちりにゃ!』


『おお、というと?』


『俺様が、奴らの仲間の一体に変身し、巣穴の中へ潜入した。バレたらヤバイから、奥までは行かなかったが、いろいろな事が分かったぜ』


ディーノとオルトロスは、念話により、

ゴブリンに関する様々な報告を受けた。


中でも、重要だったのが、

ゴブリンの群れには『リーダー』が存在するらしい……という事である。


『奴らから聞いた話によれば、ゴブリンシャーマンという、ゴブリンの魔法使いが存在するそうだ。こいつが奴らのリーダーで、専用の魔法杖を使い、死霊術を行使するらしいぜ』


『死霊術って? 死者を操ったりするアレか?』


『ああ、そうだ。死者や霊魂を操るアレだにゃ』


『洞窟の底で、不気味な事してるんだな』


『ああ、ゴブリンシャーマンは、蜂に例えれば女王蜂だ。居なくなれば群れの統制が乱れるし、数もこれ以上増えなくなるらしい。絶対に倒さないといけにゃいぞ!』


ジャンの言う通りである。

最重要ターゲットは奴らのリーダー、ゴブリンシャーマン。


元を断てば、統制は乱れ、数も増えない。

後は殲滅するだけだ。


『じゃあ、ディーノの作戦開始にゃ。変身するから、しばし待つんにゃ』


そう告げたジャンの姿が見る見るうちに変わって行った。

……人間の姿となる。


現れたのは法衣(ローブ)姿で頭衣(ドミノ)(かぶ)った、

180㎝を超えていそうな長身痩躯の男である。


以前ロシュフォール伯爵を陥れた際、ジャンが変身した謎の男、オーラムであった。

1回変身して、気に入ったらしい。


今回の作戦遂行の序盤には、

人型と化したジャンの協力が必要不可欠なのだ。


『よっし、お待たせにゃ!』


『おう、じゃあ、作戦開始だ。準備は良いな?』


『『OK!』』


念話により、相互の確認が行われ、

いよいよ、ディーノ、オルトロス、そしてジャンの3人による、

ゴブリンの殲滅作戦(せんめつさくせん)が開始されたのである。

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