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第107話「はい、了解しました」

クロヴィスから最後の……別れの言葉が響いた瞬間。

ずっと閉じられていたディーノの双眼が、ゆっくりと開かれた

 

と、同時に心配そうなオレリアの声が、ディーノの耳へ飛び込んで来る。


「ディ、ディーノさんっ!!! だだだ、大丈夫ぅ!?」


クロヴィスの記憶が創った、夢とも幻とも分からない、時空を超えた不可思議な世界。


……その不可思議な世界から『現世』へ戻ったディーノには、オレリアの声がはっきりと届いた。


「…………」


ディーノは無言で手を挙げ、「問題ないよ」と言うように、

左右へ軽く振った。

 

そして、


「うん、大丈夫だよ……」


と、答えた。


オレリアはまだ不安そうに、ディーノの顔を見る。


「ディーノさん……」


「ごめんな。オレリアさんには、だいぶ心配かけたな」


「う、うんっ! 心配だったよ! い、い、いきなり! ディ、ディーノさんの身体が凄く光ったんだもん!」


「そうか……俺の身体が光っていたのか……」


「ね、ねえ! ディーノさん! ホントに何ともないの? 身体は、大丈夫ぅ!?」


「ああ、オレリアさん。ホントに大丈夫だ……」


ディーノは微笑み、オレリアを安心させると、

傍らに立つクロヴィスの石像を見た。

 

先ほどディーノが触れた石像は……

まだ淡く光っている。


クロヴィスが天へ還る前に残した言葉――『遺言』が次々にリフレインする。


『ひとつめは私の子孫……オレリアを宜しく頼む。結婚するのか、恋仲になるのか、任せるが……どうか、優しくし、慈しんでやって欲しい』


『もうひとつは私をかたどったこの石像だ。私が天へ還った後、君が行使する地の究極魔法で有効に使ってくれ』


『ディーノ、君の心と身体へ剣技と体術、そして魔法の極意を刻んだ』


『最高の極意を得るために、更なる修練は必要だが、君は既に火と風の力を使いこなす魔法剣士となっている』


『私が極めた至高の魔法剣だ。心にイメージするだけ、無詠唱で使えるぞ。世の為に役立ててくれ……では、さらばだっ!』


ディーノの心に、(こころざし)を託した者達、その姿と言葉がはっきりと甦る……


ロラン、グラシアン・ブルダリアスも、そしてクロヴィスも……

(おのれ)の命を懸け修練し、苦労の末、会得し極めた……

血と汗の結晶ともいえる技能、または知識を、ディーノへ託して()ったのだ。

 

そしていずれ……自分も……そうなると、ディーノは確信する。

『次の世代』へこころざしと自分の力を託す日が、必ず来るであろうと……


「はい、了解しました」


思わず肉声で呟いたディーノの言葉を、オレリアが耳にし、

訝し気な表情となる。


「ええええ? ディ、ディーノさん!」


「ん?」


「はい、了解しましたって? いきなり、何?」


オレリアから尋ねられたディーノは、曖昧(あいまい)に微笑む。


「いや、何でもないよ……それよりオレリアさん、そろそろ行こうか、ステファニー様達の(もと)へ戻ろう」


「う、うん……」


まだ戸惑うオレリアへ、ディーノは再び手を差し出した。


ディーノが穏やかに微笑むのを見たオレリア。

安堵した、彼女の表情も徐々に明るくなって行く。


「オレリアさん、大丈夫。俺達は絶対に勝てるよ。ポミエ村は救われる!」


きっぱりと言い切ったディーノ。


対して、オレリアは同意し、頷くしかない。


そう……

勝つと信じ、懸命に戦うしかないからだ。

勝たなければ、待つのは……『死』しかない。


「う、うん!」


「俺達は勝つ! クロヴィス様とエマさんが命を()け、(のこ) したこのポミエ村を、あんなくされ外道どもに踏みにじられてたまるものかよ!」


「え? ディーノさん!? エ、エ、エマさんって!? 貴方っ!?」


な、何故、その名を知ってるの!?

 

と、続く言葉を呑み込み……

オレリアは驚き、思わず叫んだ。

 

……違和感を覚える。


確かにディーノには、村の開祖クロヴィス・アシャールの名は教えた。

だが……

彼の伴侶となった『村の少女の名』を告げてはいないのだ。


しかしディーノは間違いなく、

オレリアの先祖となる村の少女の名を、はっきりと口にした。


今、ディーノの身体が光っていた時、とんでもない何かがあったのだ……

間違いない。


……でも今は、目の前の戦いに勝つ事が重要である。

ゴブリン達を撃退しなければ明日は来ない。


だから今の時点で、根掘り葉掘り突っ込み、

ディーノのモチベーションを下げるのは得策ではない。


はっきり言えるのは……

ディーノがポミエ村の為、そしてオレリアの為、

一切の損得勘定を抜きにし、

命を懸けて戦ってくれるのは間違いないという事なのだから。


再び頷いたオレリアは、告げられた言葉を確かめるように、

「ぎゅっ」とディーノの手を握り直したのである。

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