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逃亡記  作者: 海星
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ビジネスパートナー

 緊縛プレイはあまりやらない。

 その上、憎悪の感情を込めて強く縛り過ぎた。

 解く時少し時間がかかった。

 俺が四苦八苦している時、オーズが俺の足をペロリと舐めた。

 この程度ですんで僥倖だと思わなきゃいけない。

 もしかしたら、身体を捧げなきゃいけない・・・なんて思っていたんだから。

 理屈ではわかっている。

 だが、身体が全力で拒否反応を示すのだ。

 これからオーズの紹介で商人に会う。

 オーズの紹介状があるから国境の関所がほぼフリーパスになるだろう。

 馬車の中を調べられたら、お姫様はすぐに捕まってしまう。

 だからオーズの紹介する商人に会うのが得策だ。

 しかしどんな変態なのだろうか?。

 そう思うと足も重くなる。


 せっせとケイン達はマジックポーションの材料を集めている。

 フェニアはその材料でマジックポーションを作り続けている。

 マリーはフェニアの作業補助と、全体の食事作りなどをしている。

 俺が商人と幌付きの馬車を入手してくると誰もが信じて作業にいそしんでいる。

 信じられても困る。

 そんな確実な橋は渡ってない。

 全く計画通りになんて、話は進んでない。


 商人はどうせ男色のオーズのような怪人なのだろう。

 待ち合わせの酒場に行く。

 未成年で下戸の俺は酒場に用はない。


 「こんばんは」女性に声をかけられる。

 酒場の給仕だろうか?。

 「酒、ダメなんでお茶と適当につまめる物を」俺は女性に伝える。

 「つまめる物っていうと?」と女性。

 「出来ればここで食事を済ませちゃいたい。

 腹に貯まる物があれば」と俺。

 「わかりました。

 すいませーん。

 注文お願いしまーす。」

 「アレ?。

 酒場の人じゃなかったの?。」

 「違いますよ。

 貴方と今晩、ここで待ち合わせた商人です。」

 「これは失礼しました。

 女性の方とは思いませんでした。」

 「『変態オーズ』の紹介で来た商人とかどんな変態男が来るんだろう?。・・・と思ったんでしょう?。」

 「・・・それはノーコメントでお願いします。」

 「やっぱり・・・。

 でも、あの男の商才は確かですよ?。

 それに見た目の醜さと性癖と娼館通いに対する悪評はありますが、贈賄・収賄に関する悪評は聞いた事はありません。

 だから私はあの男の紹介で来た貴方をある程度信用しています。

 貴方も、あの男の紹介で来た私をある程度信用しても大丈夫だと思います。

 少し話は脱線しました。

 では要件を聞きましょうか?。

 あ、申し遅れました。

 私、商人のヘズンと申します。

 オーズさんからはこれから会う方の名前だけしか聞かなかったんですよ。

 確か『ロキ』さんですよね?。」

 俺は色んな名前を名乗っている。

 嘘をついている訳じゃない。

 本当は名前がないので便宜上名乗っている名前がいくつかあるだけだ。

 『ロキ』は男娼をする時の滅多に名乗らない名前だ。

 今更「その名前は違う」とは言えない。

 しょうがない。

 『ロキ』って名前で通そう。

 お姫様一行には『ヘルメス』と名乗ってはいるが「アンタらも一つくらい偽名を名乗った方が良い」とか言ってやりすごそう。


 「初めまして。

 ロキと申します。

 オーズ様から聞いているなら、誤魔化しても無駄ですね。

 私は私生児です。

 生きるために色々な事をしてきました。

 男娼の真似事もしています。

 本当の仕事は逃がし屋です。

 今回は商人の積み荷の中に逃がしたい人を隠すのです。

 商人の方は『荷物の中に人が隠れているなんて知らなかった』と言っていただければ良いんです。

 全責任は逃がし屋である俺が負います。

 商人の方は普段通り商いをしていただければ良いんです。

 荷馬車の中に人を隠して、目的地まで逃がすのです。

 なので、オーズ様に腕利きの商人を紹介を頼みました。」と俺。

 「イマイチ見えない話です。

 要は『人を逃がすのに荷馬車を貸して欲しい』という話じゃないんですか?。

 お尋ね者を馬車に潜ませて、私には何のメリットがあるのですか?。

 私にあるのはリスクだけのように感じるのですが。」とヘズンさん。

 「俺は貴女に『ビジネスパートナーになって欲しい』と頼んでいます。」

 「パートナーとは『五分五分の関係』の事を言うと思います。

 『馬車の軒先を貸す』

 『逃亡の手伝いをする』

 ・・・つまり、こちらが一方的に損害を被る関係ではないと思いますが。」

 「もちろんそちらにもメリットがあると信じています。」

 「ほう。

 具体的には?。」

 「『ヘイムダル』が亡国になって、とにかく魔法関連のアイテムが高騰し、手に入らなくなったはずだ。

 『ないよりはマシ』って事で質の悪いマジックアイテムを誰もが買ったり売ったりしていますよね。

 しかしこちらの依頼を受けてもらえたらあなたの荷馬車を最高品質のマジックポーションで一杯にします。

 ここまで話せば察しはついてると思いますが、俺が

逃がすのは『ヘイムダル』の高貴な魔術師です。

 貴女の荷馬車を満たすマジックポーションの売値は8億ダーツ。

 商人が三回生まれ変わり、必死で働いた金です。

 そのマジックポーションを無料で差し上げます。

 そして、馬車を護衛する冒険者、それもこちらで手配します。

 一切ヘズンさんは費用を負担しなくて良いんです。」

 「・・・で、逃がすんだから目的地はあるんでしょう?。

 私はどこを目指せば良いんですか?。

 そもそも誰から逃げているんですか?。」

 やはりこのヘズンという女は頭が悪くない。

 俺があまり話したくなかった

 「逃げる距離が長い。」

 「国を相手に戦わなくてはならないかも知れない。」

 「匿ってくれる味方が全くいない。」

 という三つを話させられそうだ。

 「それはこんな人の多い場所で話す事ではありません。」俺はのらりくらりと話をはぐらかした。


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