作戦会議
「完全な嘘はバレやすいんだ。
だから『本当の中に嘘を隠す』。
馬車も馬も商人も商品も本物。
護衛する冒険者を何人か雇ってケインとレナをその中に紛れ込ませる。
当然、ケインとレナにはこの街で冒険者登録してもらう。
そして俺とフェニアさんはエルグルの豪商夫婦だ。
で、新しい商談のためにモーズグスに行こうとしている。
そこに一人、身の回りの世話をするメイドを連れて行ってるんだ。
それがマリー。」と俺。
「ちょっと待ってよ!。
どんな商品を『モーズグス』に売るのよ?。
で、商談ってどんな商品を『モーズグス』に新しく売り付けるつもりなのよ?。
そんな商品仕入れる金もないし、『モーズグス』に売り付ける商品のアイデアなんてないわよ?。」とフェニア。
俺と夫婦という部分はどうでも良いらしい。
「俺と夫婦ってイヤじゃないのかな?。」なんて少しときめいたりもした。
だが、王族は政略結婚が当たり前で、結婚に恋愛感情を持ち込む方が間違っている、と考えているようだ。
「アンタには一週間、死ぬ気で商品を作って欲しい。
モーズグスが欲しくて手に入らないもの。
手に入れるために遠くから他国の王女を嫁入りさせようとしたアレ。
ヘイムダルじゃありふれていて、王女なら鼻をほじりながらでも作れるアレ。」
「鼻なんてほじりません!。
って、ヘイムダルならありふれている物・・・魔法・・・あ、マジックポーション!?。」
「ご名答。
俺らが売れる価値があるものはそれだけだ。」
「マジックポーションは偽物も多くて、入れ物がその地域ごとに決まっているのよ。
その容器の専売業者が決まっているのよ。」
「掛けで仕入れて商人に売るんだ。
前もって金は必要ない。
いや、金なんてないんだけどな。」
「そうじゃないわ!。
貴方は専売業者じゃなくて、違う商人にマジックポーションを売るって言ってる。
そして、容器だけは専売業者から掛けで仕入れる。
そんな都合の良い話、専売業者が許す訳ないじゃないの!。」
「専売なんざ、国内で売るためのルールだ。
国外で売る業者は専売業者じゃなくても良い。
それにエルグルでマジックポーションの専売業者をしている男にちょっとツテがあるんだよ。
ソイツにマジックポーションの容器を売ってくれって頼んでみる。
そうと決まったら早速各自行動!。
ケインとレナは冒険者登録と、その後マジックポーションの材料集めね。」と俺。
俺も動き出さなきゃいけない。
マジックポーション専売の権利を持っている貴族、ソイツは男娼の真似事をしている俺をしつこく指名してくる変態マゾ男爵『オーズ』だ。
この男を動かさない事にはフェニアを国境付近まで逃がす事は出来ない。
そして、商談の内容はギリギリまで秘密だ。