第3話 新入生クエスト開始
月曜日、4人が待ち合わせの場所で待っていると、10分程遅れてマグナ・ゼロ・モノがやってきた。マグナとゼロは、はち切れそうなリュックサックを背負い、逆にモノは手ぶらで眠たそうに眼をこすっている。
「遅いのはいつものことだもんね…で、その荷物は?」
「食べ物と食べ物と食べ物だ。」
「あ!あと快眠グッズにぬいぐるみな!」
マグナとゼロがそろって親指を立てるが3人は苦笑するしかなかった。
「そういえばヨハネまでゼロ先輩が転移で飛ばしてくれるの?」
カレンの言葉にゼロは頷くと印を結ぶ。
「領域展開:夜半の嵐」
ゼロの足元に半径1m程度の碧に澄んだ領域が展開される。
ゼロが領域の中に魔法の術式を書き込み始めると、マグナは木の棒を手に取り地面に図を描き始めた。
「転移の準備に少し時間がかかるから少し転移についてとこれからの話をするな。
魔法が使えるのは知っての通り、基本的に自分の領域の中。つまり、転移が使えるのも自分の領域の中ってわけ。
転移の魔法自体難易度がぶっ飛んでて、使えるのは国に数人しかいない。それも短距離のみだ。
転移を使うためには、転移目的までの何キロもの領域を展開するか、もしくは転移のスピードに合わせて領域を保ちつつ、移動させないといけないからな。
ちなみに、ゼロは後者で、長距離転移が出来るのは俺が知る中ではゼロだけだ。よかったな、パーティにゼロがいて」
そんな話をしていると、ゼロは術式を書き終えたらしく、溜息をついた。
「そんなことはどうでもいいだろう。早く領域の中に入れ。術式を消すなよ。変な所へ飛んでしまうからな」
「そういえば目的地より北にふた街ズレてしまって、馬車に轢かれそうになったこととか、転移先が池の上でいきなり溺れそうになったこととかあったな」
「「迅速に入らせていただきます!!」」
ユキハとトウヤは足元の記号に注意しながら領域に入る。
全員がゼロの領域内に入ると、7人はふわっと浮かび、その場から姿を消した。
転移先であるヨハネでゼロの領域が消失すると、初めての転移にトウヤだけは尻もちをついてしまう。
そして、地面を撫でると無事転移できたことにホッと胸を撫でおろすのだった。
「そもそも術式にはオレの魔力が流れているんだ。踏んだくらいで術式が消えるわけがないだろう」
「え、じゃあ転移に失敗したっていうのは…」
「「ジョークだ」」
「笑えんわ!!!」
「たく、ださいなぁ。もう」
「大丈夫ですか?どうぞ手を取ってください」
フンッとそっぽを向くモノと、トウヤにそっと手を差し出すアリス。
トウヤはポッと顔を赤らめながら立ち上がった。
「はいはい、ユキハくんに、トウヤくん!これから魔法を教えていくわけなのだが、どの先生をお望みかね!」
マグナ・ゼロ・モノは伊達メガネを取り出し、クイクイっと眼鏡を弄る。
「えと…じゃあゼロ先輩で…」
「俺はアリス先輩たちで…」
その言葉を聞き、マグナとモノは眼鏡をしまう。
「じゃあ、俺たちはピザの食べ放題でも行くか」
「うん!マグナはいい店知っているの?」
そう言いつつ2人は街に向かって去って行った。