1‐2
今一度少年の服装を見てみると、学生服の面影はあまりないが、パーカーのネック部に特待生バッチをつけている。
「ねぇ、僕…学生服じゃないみたいだけど、学院生?」
「うん、そうだよ。ボクはモノ。格闘科の特待2年!
特待生は自由多いし、服装も自由だからね」
「げ…同じ科か…え?2年!?お前10歳そこらだよな?」
「そう10歳。僕、特待生の中でも特例だから」
モノはパタパタと土埃を払うと、ハッとしたようにユキハの袖をクイクイと引っ張った。
「おねぇちゃんのにおい、なんか懐かしい気がする…っとそうじゃなくて、短い赤髪と長めの銀髪のお兄ちゃん見なかった?特待生バッチつけてるからわかると思うんだけど…。3年の特待生なんだ」
ユキハとトウヤは顔を見合わせて首を振り否定すると、そっか…と、モノは生徒証をふたりに手渡した。
『魔法学院マトリア校 格闘科2年 特待生 モノ=ステラント』
「これに魔力通したら、ボクと連絡が取れるから!もし2人を見つけたら連絡して!教官たちに会っちゃったらボクらのことは知らないって言ってね」
そう言い放つと、いつの間にかインラインスケートで商店街の合間を走り抜けていった。
「何だったんだろうね…でも悪い子じゃなかったし、見かけたら連絡してあげよう?」
「口は悪かったけどな…」
ユキハの言葉にトウヤは苦笑いしながらふたりは学院に向かっていった。
たこ焼き、焼きそば、フランクフルトに焼き鳥…ひと通りそろっている屋台からの誘惑に負けそうなトウヤが何か食べていかないか…?と提案すると、アッハッハと腹を抱えて笑う、赤毛を空に尖らせた少年と、飾り気のない刀を帯刀する銀髪をウルフカット風に整えた少年が商店街の向かいから現れた。
「マグナ…笑いすぎだ」
銀髪の少年が刀の柄で相方の腹を軽く突き、ハァとため息をついた。
「そうだなゼロ。お前らもすまんすまん。商店街を見回っていたら、買い食いを考えている奴と出会うとはな…お前らの未来を考えるとついな」
マグナは笑いをこらえると、ポリポリと頭をかき、ふたりに軽く頭を下げる。
「私たちがどうなるかわかるんですか…?」
「俺たちの代でな、バレないように特殊領域展開したうえで、入学式をさぼって出店を楽しんでいたんだよ。それが後にばれて、3か月間毎日補修受けさせられたんだよな。そいつら特待生だったってのもあってバツが大きかったんだよ」
「はぁ…普通に地獄だからやめておけ。それにな…
領域展開:夜半の嵐 【疾風の大鎌】」
ゼロが上空に放った鎌鼬はの元に小柄な鵺が集まり、術式ごと鎌鼬を貪り食っている。
「覚悟があるならいいが、商店街に入った時点で今はもう学院の領域下にあること忘れるなよ」
「「はい!!決してさぼりません!!」」
思わず敬礼する二人に、マグナは笑いながら頷く。
「おい、そろそろ行くぞ。チビを探さないと話にならん」
その言葉に2人の様子を見てみると、それぞれ胸元に特待生バッチをつけている。
「ま、待ってください!!えっと3年の特待生の方ですか?モノって子が探していたんですけど…」
そういいモノからもらった学院証を見ると、ゼロは深くため息をついた。
「巻き込んですまないな、ありがとう。諸事情でオレ等から連絡ができない。申し訳ないが待ち合わせ場所まで来るように連絡してくれないか。あと、オレたちの学院証も渡しておく。何かあったら気軽に連絡してこい」
ジンとマグナはそういい、2人に学院証を手渡した。
『魔法学院マトリア校 刀剣科 3年 特待生 ゼロ=ストラトス』
『魔法学院マトリア校 銃火器科 3年 特待生 マグナ=グレスト』
「入学式後にいろんな催しあるから楽しんでいってな!」
マグナはニッと笑い2人の背中をバシバシと叩くと、ゼロと共に人ごみに消えていった。
「そういえば先輩たち、入学式さぼったの特待生って言ってなかったか…?」
「あはは…」
2人は苦笑するしかなく、学院へと向かって行った。