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第1話始まりは突然に…

「ほ、本当にいいのかな…」


真新しいワンピースとボレロ、そして学院指定のマントを着込み、鏡の前に立つ少女がひとり。


その手には金色に輝くスペードのエンブレムと、トキハと少女の名が彫られたバッチが握られていた。


今日は全国に3校ある王立魔法学院のうちの1校である、王立魔法学院マトリア校の入学式なのだが、先日制服と共に学院の金バッチがトキハの元に届いたのだ。


これは毎年各学年2名ずつ、入学試験の結果をもとに選ばれた特待生に贈られる伝統のバッチといわれている。


特待生に選ばれれば、無償で魔法学院に通えるようになったり、商業街であるマトリアでの物品購入が割引されるようになるから、お金のない私たちには助かるけど…


トキハが気が引ける理由はひとつあった。

魔法学院生となるとみんなある程度、領域展開を使い、魔法を使いこなすものだ。

それに対して、トキハは幼い頃から「師匠に」武術は使っていたものの、魔法はからきしで、領域展開ができないどころか自分にあう属性すらわからないからだ。


こんな落ちこぼれが、魔法学院の生徒……しかも特待生でいいのだろうか…


そんなことを考えながら身繕いをしていると、ドンドンと古びた扉が叩かれる音が響いた。


「ユキハー!準備できたか?そろそろ出ないと遅れるぞー」

「あ、うん!すぐに行くね!」


5歳の頃から一緒に暮らしている幼馴染、トウヤの声に急いで胸元にバッチをつけ、一緒に施設を後にした。


「なんだ、ユキハ?まーだ気にしてるのか?」


一緒に暮らしてきた時間が長いからか、トウヤは時折鋭いことを言ってくる。

自分の気持ちを的確に読まれたことにドキリと胸を鳴らすとユキハは顔を赤らめ俯く。


「だって…私トウヤみたいに才能があるわけじゃないし…」

「そんなことねーって!学院もさ、ちゃんと見てるって思うよ。魔法がなくてもユキハには武術があるわけじゃん?それだけ素質があるって見てるってわけ。なら一緒に頑張ろうぜ?」


ニカッと笑い、頭を撫でてきたその優しさに、ユキハが抱えていたマイナスの気持ちは収まっていった。


ふたりが入学式に向かっていると、学校までの道筋に屋台がズラッと並んでいた。


屋台の店主たちは新入生を見かけるたびに自分の店を宣伝していたが、ユキハとトウヤの金バッチを見かけると、頭を下げ、それぞれに簡単にではあるが祝辞を述べていた。


「嬢ちゃん、坊ちゃん、入学本当におめでとう。これ、毎年特待の子に渡すように手作りしてんだ。国の宝だからな。

そういえば、ふたりは他の特待の奴らに会ったかい?」


お守りを渡しながら訪ねる店主の言葉にふたりが顔を合わせ首を傾げていると、店主はニヤニヤと笑った。


「あいつら変わってっけど、すげぇ面白いし、いい奴らだぜ。ぜひあいつ等とまた遊びに来てくれよな」


店を離れ学院に向かっていると、人とすれ違うたびに声を掛けられ、頭を下げられていることにふたりは目を丸くしていると、トウヤに勢いづいてぶつかる小さな影があった。


「いってぇ!!何突っ立ってんだよ!!」


ふたりが振り返ると学院のボトムズ、ブレザーの代わりに私服のパーカーを着込み、頭に白い狗面をかけた10歳ほどの金髪の少年が立ち止まっていたトウヤにぶつかり、その衝撃で転んでしまったらしく悪態をついていた。


「僕、大丈夫…?」

「うっさ…ん?おねぇちゃん、なんかいいにおいがするね」


少年が空中をクンクンと嗅ぐ仕草をしているところに、トウヤはそっと手を差し伸べる。


「あ、ごめんな」


少年は、差し伸べられた手を払い立ち上がった。


「うっせぇ!こんなんで怪我しねぇし!」

「態度も口も悪いな!?まぁ無事ならいいけどさ」

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