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魔女狩り  作者: 沙波
9/10

8

キューザックは取り憑かれた様に、自身の審問席へ歩いて行く。

エリアーナも、彼女のためだけに作られた席へ、騎士に連れられた。

まるで、死刑宣告を待つだけのために、ある様な椅子に浅く座ると、そのまま俯いている。


その後ろに、傍聴のための席があり、何人かローカ村の人の姿が見えた。

ホリーも傍聴席の一番後ろの空いている席に向かう。


「ホリー」

後ろから名前を呼ばれ、振り返ると、エリックの姿があった。

「エリック」

「エリアーナは、うちのお得意さんだった。理由はどうあれ、彼女を最後まで、見守りたいんだ」

エリックは真剣な顔でそう言うと、ホリーの隣の傍聴席に腰を下ろした。

(もしかして、エリアーナのことが好きだったの?)

と、言葉には出さなかった。

今更、そんなことを言っても、無味乾燥すぎる。

そう思った。


真っ白な、ローブ服を纏ったリンゼイが、エリアーナのちょうど真正面の席に着いたとこで、

異端審問は始まった。


「これより、エリアーナ・フレミングの異端審問を執り行う」

そう、高らかに宣言し、リンゼイは木槌を何度か打ちつけた。



「エリアーナは、アーシラという姓ではないの?」

ホリーはエリックに耳打ちした。

「彼女は、実家と色々あったようで、絶縁している。

おそらく、今名乗っているのは、母方の旧姓だと思う」

エリックは小さい声で、ホリーにそう告げた。

昨日、村長から聞いた話の信憑性が増した。エリアーナの過去。

ホリーはエリアーナの家名すら知らなかった。

エリア―ナの実家である、アーシラ商会の人々はどんな人なのだろうか。

エリア―ナが今、危機的状況にあることを知っているのだろうか。

そう思い、傍聴席を見回す。

ローカ村の見知った顔以外の人は見えない。

エリア―ナの家族もここには来ていないようだった。



「エリアーナ・フレミングの罪状について。

聖教で禁忌とされている、血の摂取を行っていた。

その現場を、聖教騎士である、アルフィー・パンチが目撃。

彼は私の従順なる騎士であり、あるがままの報告を私にして来た。

アルフィー・パンチその時の様子を」


リンゼイの言葉に、ホリーから見て、リンゼイの左隣に設けられた席に座っていた、

一人の騎士が立ち上がった。

(ちなみに、陪審員の席はリンゼイの右隣に設けられている)


「聖教騎士である。アルフィー・パンチです。

私がこれから異端審問において行う証言は、聖教の神の名にかけて真実であることを誓います」

騎士は胸に右手をあて、左手を自身の腰に差している、剣の柄に。

ポーズを決めながら粛々と述べた。

「よろしい。では証言を」

リンゼイはアルフィーの様子に満足した声で木槌を叩いた。

「はい。異端審問官であるリンゼイ様は、聖教の教えを正しく広めるため、

ルロリア王国の南から北の端、また西から東の果てまで、旅をされています。

今回、ローカ村を訪れた際、聖教の教えを信仰する、

我々の友人が温かく迎え入れてくれました。

しかし、この女、いえ、エリア―ナ・フレミングは、私達の信仰を踏みにじるように、

血がしたたる、食事を提供しようとしたのです」

「もう少し、具体的にお話しいただけますか、今の発言は少し抽象的すぎます」

陪審員席につく、中年の女性が、手を挙げそう告げた。

リンゼイは頷き、「アルフィー・パンチ、事実だけを述べよ」と、注意した。

「失礼いたしました。このローカ村を訪れた、その日。

この村の皆さんは急な客人であるのも拘わらず、私達のために、

腕によりをかけ豪華な食事を用意するための準備を行ってくれていました。

メイン料理として《アホアホ鳥》を用意すると言ってくれまして、私は驚きました。

アホアホ鳥はこの国には生息しない他国の高級品です。

それだけの品が出てくる事が、本音を言うと信じられなくて。

まさか、この辺境地にそれだけの品があるのかどうか、疑問に思い……すみません、これも、私の個人的な意見でした。

しかし、もし出てこなかったとしても、私達を最大限もてなそうとしてくれるこの村の人々のその気持ちに感謝をしました。

私は、だまって座っているだけでは申し訳ないと思い、何か手伝うことは無いかと、キッチンを訪れました。

そうすると、エリア―ナ・フレミングがキッチンに一人。

テーブルには、まだオーブンに入る前のアホアホ鳥があり、その皿には血が滴っておりました。

その血をすくってちょうど彼女が舐めているところ、目が合いました。

彼女は、自身が血を摂取するだけにとどまらず、

聖職者と知って、私達しいては異端審問官であるリンゼイ様にもその皿を振る舞おうとしたのです」

アルフィー・パンチはそう言って、一呼吸つくと、自身の席に座った。


リンゼイが木槌を何度か打ち付ける。

「アルフィー・パンチの証言に何か反論は?」

リンゼイは、エリア―ナを見た。

エリア―ナはうつむくだけで、何も言わない。


「そっ……」

そんなはずない。と叫ぼうとしたところで、隣にいるエリックに口を押さえられた。

ホリーを睨みつけると、首を左右に振る仕草を見せた。


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