花壇
「今日はよ、ここの花壇の話があるんだよ」
今日は裕太が好きなよく見に来る校舎裏の花壇に来ていた。
そこで賢太と裕太が、夕暮れ時の赤い日差しを浴びながら雑談に興じていた。
「ふうん、どんなのだ?」
裕太が興味なさそうだったが一応友達の話に乗ってやる事にして聞いてみる。
「ここの花はよ、同じ時期に植えてあるのに不思議な事にお前の立ってる前の一部の花だけが成長が早いんだよ……、なんでかって言うのはこの場所に飛び降り自殺をした生徒が居たんだって、でもその生徒が飛び降りたのはこの上からじゃないんだぜ」
賢太が変な事を言ってきて裕太が嫌な顔をした。
「あそこだよ」
賢太が指差したのは裕太がいる所より五メートルはずれた場所だった。
「なんでこんなに位置がずれたのかってのはな、昔窓に古い柵が付いてたんだけどそこに飛び降りた生徒がぶつかってここに落ちたんだよ、で、ぶつかった際に古くなってボロボロの柵は錆び付いて尖ってた所にぶつかった生徒の右手がちぎれたんだよ、その右手がいまだに見つかってないそうだ、分かるかそれがお前の花壇に埋まってるんじゃないかって、だから成長が早いのはその所為だって」
裕太が身震いを覚えた。
「や、やめろよ、しょんべんしたくなるだろ」
「はははっ悪い悪い、じゃあ帰ろうか」
賢太が鞄を持って校門に向かった。
直ぐに賢太が後ろを振り返ると裕太が付いてきていないことに気づく。
裕太は花壇の前で立ちすくんでいて、賢太が呼びかけた。
体を震わせた裕太がそそくさと鞄を拾って走ってやって来た。
「何してたんだ、怖くて動けなかったのか、はははっ」
「……違えよ」
二人は夕陽を眺めながら帰宅していった。
花壇は夕陽に照らされ裕太が居た場所の花だけがキラキラと濡れていた。