体育館
体育館で水曜日になると時折奇怪な現象が起こる、との噂が囁かれ始めた。
水曜日の晩、宿直員が見回りをしていて体育館の扉を開けたときだった。
ピチャピチャと水の落ちる音が体育館に響いていた、勿論体育館は真っ暗で窓は全て黒いカーテンで閉じられている。
ライトで音のする方へと明かりを向けると、床に大きな水溜まりが出来ていてゆらゆらと水面が揺れていた。
「ああ……、な、なんだこれは……」
恐ろしくなった宿直員が天井にライトを照らした。
天井には何もない、穴が空いていてそこから雨水が漏れているわけでもない、そんなわけはなかった。
だって、ここ数日ずっと快晴だったからだ。
「ひいいぃ、うわああ」
慌てて宿直員が宿直室に帰ってからは、水曜日だけは見回りをしなくなったという。
「……どうだった? 怖いだろ」
賢太が何処からか貰ってきた話を裕太に教えていた。
「あぁあ……まただ、ん? 何だよ、いまそれどころじゃねえよ、この前照明に引っかけちまったぞうきんを落とそうとしたらまた引っ掛かったぜ……」
裕太はやれやれといった感じでため息をする。
「お前何枚目だよ、しかも床濡れてるし……拭いとけよ」
「いいって、今日はもう誰も使わねえし、ほっときゃ乾くって、やべえもう五時だ門が閉まる帰ろうぜ」
二人は急いで掃除用具を片付けると体育館から飛び出して学校を出ていった。
「賢太、お前何部だった?」
「技術部だ」
「そうか、じゃあ全国大会頑張れよ」
そう言うと裕太は賢太と別れて走り去っていった。
「全国大会か…………どんな競技やねん」
賢太は一人寂しく空を眺めていた。