階段
伝統あるR中学で最近不可思議な事件が頻繁に起こっていた。
この一年で校舎の非常階段から足を滑らせて大怪我をする生徒が五人もいた。
学校側も階段の使用を禁止していたが、それにも関わらず帰宅する際に非常階段を使用したほうが早く帰れると利用する生徒が後を絶たなかった。
昼休み、二人の男子生徒が階段に座って昼食を取りながら雑談をしていた。
「この前もまたここから誰か落ちたららしいな」
弁当を貪り食う賢太が言った。
「よく落ちるよな、足腰弱い奴多すぎだろ」
そう言った裕太はコンビニに売っている唐揚げを二パックも買ってきていて、それを口に放り投げながら答えた。
「ここだけの話、多分この学校呪われてると思うんだ、部活の先輩から聞いたんだけどよ、昔この階段で首つりがあったらしいんだ、そいつの霊がここを使う奴の足を引っ張ってるんじゃないかって話だぜ」
賢太が怖がらせるかのように小声で話す。
「ぷぷぅ、今時そんなことで怖がる奴なんていねえし」
裕太が笑いながら唐揚げを頬張っていた。
「だよな、それにしてもお前唐揚げ好きだな、入学してから一年間、毎日それ食ってねえ?」
「好きなものは飽きるまで食うのが俺の主義だ」
「体悪くしても知らねえぞ、さてともうすぐチャイムが鳴るし部屋入るか」
賢太が食べ終えた弁当を片づけて立ち上がった。
「待てよ」
裕太が急いで残りの唐揚げを手に取って口に詰め込んで、べたべたになった手を地面で擦って拭くと賢太の後を走って後者に入って行った。