大正乙女浪慢譚
時は大正明治を跨ぐ。
散切り頭を叩いて見れば、文明開化の音がする。
ハイカラさんや、ハイカラさんや、桜舞い散る喫茶の前で、待ち人思いて何を言わんや。
「今日もあの方はいらっしゃるのかしら」
袴姿に身を包み、髪を結んだハイカラさん、勉学忘れて想い人待つ。
桜の花弁頭に乗せて、ハイカラさんやハイカラさん。
「あ‥‥‥」
桜の木の下待ち続け、遂にいらした想い人。
一陣の風が優しく頬を撫で、春の匂いが鼻を擽る。
学生服に襟を詰め、学帽を被った青年が、本を片手に歩いてきます。
「‥‥‥」
声を掛けれず青年は、あわれハイカラさんを通りすぎます。
その時、春の風が青年の学帽をハイカラさんへと運んできました。
「あっ、いけない」
慌てて飛び付くハイカラさん、それを見た青年がハイカラさんへと急いで来ます。
「ありがとう、助かりました」
「はい、どういたしまして」
桜の木の下ハイカラさん、想い人との時間は果たして春の薫りを漂わせました。
ハイカラさんや、ハイカラさん、甘く酸っぱい青春に、桜の花弁祝えや祝えや。