完全無欠の俺。
「相川くんって、ほんとかっこいいよね!なんでもできるし!」
「あんな超人見ちゃったら、自分の彼氏が惨めに見えてくる笑」
「それな」
他人を褒めつつ自分に彼氏がいることをアピールするというリア充女子たちの会話を聞き流し、俺は学校から家へ向かった。
完全無欠超絶イケメン中学生、相川 渚とは俺のことだ。
容姿端麗、頭脳明晰。言うまでもなく老若男女にモテモテな日々を送っている。
しかもその事を鼻にかけないという(表面は)素晴らしい人格者ときた。
俺に惚れない奴はいない。………1人を除いて。
この俺に見向きもしない奴ってのは、高田 南のことだ。
別に頭がいいわけじゃないし、大してかっこよくもない。ただの根暗野郎だ。
何がムカつくかって、そんな奴にこの俺が無視されることだよ。
今日の昼休みだって………
『高田くん。一緒にサッカーしない?』
『………』
思い出しただけでムカつく。せめて返事しろや。
そんなことを思いつつも、やはり一番ムカつくのは「誰にでも同じように接するいい奴」を演じる俺自身だ。
………どうして俺はいい奴のフリをしているのだろう。ありのままの自分でいたかったのに。
友達ならいくらでもいる。ただ、ありのままの自分を晒け出せる友達は1人もいない。
学校では優しくて、頭が良くて、かっこよくて、人気者の俺。その反面、家ではゲーム漬けで、休日なんて一歩も外に出やしない。勉強なんてほぼほぼしてないも同然。定期試験はどうにかこうにかカンニングすることで頭脳明晰の名を保ってきた。
人間として最低だな。俺。