表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

01 入学

 私、田中桃子……じゃなかった”天上院櫻子てんじょういんさくらこ”は今世紀最大ともいえるピンチに陥っています。

美しいお母様に連れられてやってきた、”私立 宝玉学園(ほうぎょくがくえん)”。いわゆるエリート家系の方たちだけが入学する事が出来ると言われている超名門校。目玉が飛ぶような学費の高さに加えて、学費に比例するように難易度の高いと言われている入学試験、その会場に今、私はいます。


「櫻子ちゃん、頑張ってね。」

「はい、お母様。」


 モデル級の美しさを持つお母様の期待のまなざしを受けて思わず即答してしまいましたが、私、実は櫻子になったのは昨日の事なんです。


……この世界に来る前、私は大好きな少女漫画『宝玉の愛』を読んでいました。庶民出身の主人公”高橋薫(たかはしかおる)”と、エリート家系の長男”三宮龍馬(さんのみやりょうま)”が結ばれるまでが描かれた大ヒット作品。アニメ化やドラマ化も来年放送されるという情報が出回っていたこの漫画を自室のベットに横になりながら読んでいた私は、なんやかんやあって気が付いたらこっちの世界に来ちゃってました。転生してすぐに気が付いたのは、自分が主人公カップルの恋愛を邪魔しようとする悪役令嬢”天上院櫻子”になっていたという事。そして、今は原作でいう所のプロローグ手前だという事。

 原作だとこの後に頭のいい櫻子は入試で2位になって、入試1位で特待生の薫に嫉妬する予定でした。でも今の私は櫻子じゃなくて、中身はごく一般的な庶民の出の田中桃子。しかも勉強は大の苦手。

 このままじゃ作中で偏差値75と言われている宝玉学園に受かる事すら危うい! 私は重い足取りで入試会場に入りました。


……結論から言います。天上院櫻子は当然の事ながら入試がまったく出来なかったにも関わらず、なぜか宝玉学園に合格いたしました。それも、入試成績3位で。個人的に完全に諦めていた宝玉学園入学ですが、恐らくお父様が裏で天上院家の謎の圧力を学園にかけたのでしょう。入試が解けなきゃ、お金で入ればいいじゃない! そんな訳で、世の中の金の力と怖さを痛感しながら私は今、入学式に主席しています。

 きらびやかなホールで行われる入学式。右も左も賢そうなお坊ちゃんにお嬢様がいっぱい。ごめんなさい、マネープレイで入学してしまって。会場にいる皆さま一人ひとりに土下座して回りたい気持ちを抑えて、私は最前列に座りながら入学式を終えました。

 会場から帰る時に、後ろから長身の男の人が話しかけてきました。


「君、天上院さんだよね。入試3位の。」

「はい、あなたは三宮龍馬の弟の大吾さn……」

「あれ?自己紹介したっけ?」

「あ、えーと、原作……いえ、先ほどお兄様とお話しているところを見かけたので……」


 いけないいけない、つい原作知識が出てしまいました。彼は龍馬様の2歳下の弟の”三宮大吾(さんのみやだいご)”様。ポジションは主人公カップルの恋愛を応援するいわゆるお助けキャラ。どうやら原作では入試3位だった彼は、私がおバカだったために2位に繰り上がったみたいです。大吾は原作でも龍馬・薫に次いで私の好きなキャラ。こんな所でリアル大吾にお会いできるとは……。私が興奮を隠せないでニヤニヤしていると、大吾はそっと右手を私に差し出しました。手にはシルクのハンカチが。


「これ、座席の上に置き忘れてたみたいだったから。」

「あ、ありがとうございます。」

「それじゃ、同じクラスになれるといいね。」


 彼は私の手にハンカチを握らせると、颯爽と手を振って去っていきました。あまりのイケメンオーラに私はハンカチを握ったまま、しばらくそこから動けませんでした。

 決めたわ、私は大吾様と結ばれます。私は原作カップルである薫・龍馬を応援しつつ、大吾様にこれから3年間アピールしていく事にしました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ