夜
夜。
騒がしい一日も終わり、僕はパジャマでベッドの上にごろ寝していた。
今日はなんだか疲れたし、さっきからずっと軽いめまいに襲われてる。
早く寝たいな。
……けど、真陽奈が部屋に居座ってた。
ベッドの横の床の上に寝そべって、ずっと携帯ゲームで遊んでる。もう十一時になるのに。
「お兄ちゃん、もう寝たいんだけど」
「寝ればー(棒」
僕と色違いのパジャマを着てる真陽奈は、こっちに視線もよこさない。
「真陽奈ももう寝ないと、目の下のクマがもっと酷くなっちゃうぞ?」
「真陽奈のチャームポイントだからー。気にしないでー(棒」
どうしたものか。
ちょっと怪しげだけど、このまま寝ちゃってもいいかな?
そう思ったとき、開けっ放しのドアからリサが顔を出してきた。
「真陽奈ちゃん、まだやってたの?」
リサは髪をおろし、寝間着かわりのTシャツとスパッツ姿だ。
「真陽奈ちゃん、ちゃんと寝ないと成長ホルモンの分泌が狂っちゃうよ」
そう言いながら部屋に入ってきて、リサは僕の椅子に腰かける。
「よく食べて、よく運動して、よく寝て、あたしみたいな……」
「小さい乳になってれば世話ないわー(棒」
「くっ、明人! アンタ、妹の躾はどうなってるわけっ?!」
ん? んん? あれあれ、リサも居座っちゃったぞ?
さらに部屋の窓がガラガラと開けられる。もちろん伊緒しかいない。
「起きてるよね……よっこらせと……」
Tシャツとホットパンツの伊緒が入ってきた。
僕はめまいと戦いつつ、途惑って言った。
「伊緒まで……。こんな夜更けに四人揃っちゃって、いったい何があるっての?」
伊緒が固い表情をして、低い声で言う。
「わたし……なんだか……不安っていうのかな? 何か、何か良くない感じがするの……」
部屋の中から朗らかさが消え、真陽奈のゲーム機はゲームオーバーを告げた。
リサが目を伏せて静かに言う。
「夜になってはっきりしたけど、明人、アンタ、何かが薄くなってる……」
僕には意味が分からない。
めまいが酷くなってきた。
くらくらする。
「お兄ちゃん!」
真陽奈が飛び起きて僕にしがみついてくる。泣いていた。
「どこにも行かないで!」
「う……?!」
僕は返事をしたかったけど、できなかった。
力が抜け、視界は黒く閉ざされる。
絞られ、溶かされ、引き伸ばされて……。
まるで自分の存在が虚無に吸い込まれていくような感覚だ。
「明人っ!」
「明人くんっ!」
「お兄ちゃんっ!」
僕は……。