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スリップリー  作者: 進常わんぷ
3/7

 夜。

 

 騒がしい一日も終わり、僕はパジャマでベッドの上にごろ寝していた。

 今日はなんだか疲れたし、さっきからずっと軽いめまいに襲われてる。

 早く寝たいな。


 ……けど、真陽奈が部屋に居座ってた。


 ベッドの横の床の上に寝そべって、ずっと携帯ゲームで遊んでる。もう十一時になるのに。


「お兄ちゃん、もう寝たいんだけど」

「寝ればー(棒」

 僕と色違いのパジャマを着てる真陽奈は、こっちに視線もよこさない。

「真陽奈ももう寝ないと、目の下のクマがもっと酷くなっちゃうぞ?」

「真陽奈のチャームポイントだからー。気にしないでー(棒」

 どうしたものか。

 ちょっと怪しげだけど、このまま寝ちゃってもいいかな?

 そう思ったとき、開けっ放しのドアからリサが顔を出してきた。

「真陽奈ちゃん、まだやってたの?」

 リサは髪をおろし、寝間着かわりのTシャツとスパッツ姿だ。

「真陽奈ちゃん、ちゃんと寝ないと成長ホルモンの分泌が狂っちゃうよ」

 そう言いながら部屋に入ってきて、リサは僕の椅子に腰かける。

「よく食べて、よく運動して、よく寝て、あたしみたいな……」

「小さい乳になってれば世話ないわー(棒」

「くっ、明人! アンタ、妹の躾はどうなってるわけっ?!」


 ん? んん? あれあれ、リサも居座っちゃったぞ?


 さらに部屋の窓がガラガラと開けられる。もちろん伊緒しかいない。

「起きてるよね……よっこらせと……」

 Tシャツとホットパンツの伊緒が入ってきた。


 僕はめまいと戦いつつ、途惑って言った。

「伊緒まで……。こんな夜更けに四人揃っちゃって、いったい何があるっての?」

 伊緒が固い表情をして、低い声で言う。

「わたし……なんだか……不安っていうのかな? 何か、何か良くない感じがするの……」


 部屋の中から朗らかさが消え、真陽奈のゲーム機はゲームオーバーを告げた。


 リサが目を伏せて静かに言う。

「夜になってはっきりしたけど、明人、アンタ、何かが薄くなってる……」


 僕には意味が分からない。

 めまいが酷くなってきた。

 くらくらする。


「お兄ちゃん!」

 真陽奈が飛び起きて僕にしがみついてくる。泣いていた。

「どこにも行かないで!」

「う……?!」

 僕は返事をしたかったけど、できなかった。


 力が抜け、視界は黒く閉ざされる。


 絞られ、溶かされ、引き伸ばされて……。


 まるで自分の存在が虚無に吸い込まれていくような感覚だ。


「明人っ!」

「明人くんっ!」

「お兄ちゃんっ!」


 僕は……。

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