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おにー!

「さあ、ひかる。これ引いて」


 ひかりが手に持っているのは、何の変哲も無い割り箸なのだが、ひかりが手に持っている時点で既に理不尽さというか、不審というか、怪しい匂いがする。


 しかも、何故に僕から引かなければなら無いのだろうかという疑問が根底にあるから簡単には手を出せない。

「男じゃないなー。じゃあ、つばさから引いて」というが早いか、つばさに割り箸の束を突き出した。


 躊躇いもなく引いてしまうつばさを見ると、何も細工は無いのだろうと思うのだが、ここで油断は禁物だ。


 母者がその次を引いて、決心が付いた僕が引こうとすると、ひかりは自分のを引いてから一本だけが残ってしまった。


 まだ誰も王様だとはカミングアウトしていないのが唯一の救いだろう。


 最後の一本を引いてから、こそっと見ると、そこには見慣れぬ文字が並んでいた。


『王様』ってね!


 へへへっ、何して貰おうかな?

 いや、待てよ。

 つばさがいるから、変なことはしてはいけない。


 ……涙を飲んで我慢するしか無いか。


 しかし、スリーサイズ位は王様なんだから大丈夫かな?いや、危険だ、ひかりに化けた時にこっそり確認する手段を考えよう。


 でも、一緒に着替えだけはしたくない。

 だって、当然だけど、ばれちゃうもんね。

 ひかりに頼んで、教えてもらうか?


 いやいやいや、それは見返りが高くつく。

 お昼を一週間分では済まないだろう。

 じゃあ、どうする?


「ひかるちゃん。何をごちゃごちゃ考えてるの?

 大方、王様になった時のエロい事でも考えてるんだろうけど、そんなことしたら、つばさから嫌われるよ。

 じゃあ、せーので王様になった人は手をあげてね。

 さあ、いくよ!

 せーの!」


 僕は勢い良く手を挙げる。

 しかし、予想外にひかりも母者もつばささんまで手を挙げた。


「んっ、おい、おねーたま。なんだよこれは?」


「あら、公平にと思って全員が王様になる様にしただけだわ。私って優しいでしょう?

 じゃあ、説明するね。王様の下に数字とアルファベットがあるでしょう。

 1番は私だから、まずは命令するわね!

 Bの人は王様の頬っぺたにキスをする!」


 ほっ、僕じゃない。

 知らん振りをしていると目の前のつばさが、ひかりの頬に軽くキスをした。


 ……う、羨ましい。


 僕も今のしたいが、Bはつばさに確定だから予防線を張られたようだ。

 これでこのゲームは面白く無くなってしまった。


 そう落胆していたら、次に衝撃的な事が起きた。


「AがBとキスをする!」


 母者がボソッと言った一言で、騒がしい場が一瞬で静まり返る。

 ひかりも予想外だったみたいで、目を丸くしている。


『…………マジっすか?』


 Aは僕だよおかあたま。

 もしや、2人で図ったのか?

 いや、あの驚きは、やっぱり違うか。


 Bが確定しているし、自分のは分かるから、ひかりか僕がつばさとキスすることになるのは決まったも同然だ!


 ……ああ、そうか母の趣味全開なのか?

 こいつは、実はGL趣味だったっけ……。

 僕が男だということを今でも悔いている奴だもんな。

 産んでおいて、失礼だぞ!



 しかし、考えたな。

 僕が当たれば、女装させると事足りる。

 実母ながらに鬼畜だ!

 未だ青春真っ只中という迷惑な奴だ。


 おずおずと僕は自分の割り箸をみんなに見せた。

 つばさの顔がいきなり引き攣る。

 ひかりは、楽しそうにビデオに撮影するんじゃない!


 今にも泣き出しそうなつばさを見ると、別のにして貰おうと思ってしまう。


「ねえ、おかあたま。

 それは、まずいっしょ!

 つばささんが困ってるし、僕も恥ずかしい」


 母はニンマリと笑いながら一言だった。


「あたしはね。GLが見たいだけ」


 ……やっぱり。


 2人とも困ってしまい、ひかりを見ると、珍しくもひかりが助け船を出してくれるみたいだ。


「お母さま。それはダメよ。

 つばさは未経験なんだから、ひかる相手なんて可哀想だし、ひかるには勿体無い。

 し、仕方無いから、私が代わりになるしか無いわね」


 ……って、相手が代わっただけなのか?


 しかも、姉弟じゃあヤバくね?


「まあ、仕方無いわね。他所のお嬢さんにすることじゃないか……。勿体無いけどね」



「仕方無いわね」って、おかあたま。

 あんたは納得するのか?


「はい、ひかるは私の服を貸すから、それに着替えてちょうだい」


 そこで、自室に向かおうとしたひかりの腕をおかあたまが掴んだ。


「ダメ、絶対にダメよ。

 ひかるちゃんは、アレ着てよ」


 ……アレって、紙袋に入っているのは、今日持って帰って来たものじゃあないですか?


 そそくさと、紙袋を抱えてて僕の横にやって来て、僕に渡した。

 そっと中を覗くと、あらら…………卒倒しそうだよ。

 学園の合服じゃないか!

 しかも、女子用。


 これはひかりのヤツか?


「あっ、それはひかるちゃんの分だから、遠慮しないで貰ってね」


 ニコニコと笑いながら言う母の顔だけ見たら天使なのだが、言ってる事は魔王クラスの言葉だよ。


 ……早く勇者に倒されろっ!


 呆然としていると、『バサッ』と音がした。


「わあ、ひかる君、是非着てみてよ」とつばさのリクエスト。


 マジっすか?


 好きな女子の前で、女装とは真っ黒歴史を今作れという意味に聞こえるぞ!


「はいはい、王様は私なんだから、それに着替えてからひかるとひかりはキスしなさい」


 ……親が姉弟の境界を突き崩そうとしているぞ!


 ひかりも『はーい』なんて言うな!



 約五分後、女装した僕がひかりの横に並んでいた。

 ひかりは夏服で、同じ女の子が並んで制服を着た状態だ。


 全力で抵抗したから、キスは頬っぺたになったのだが、その後のつばさの番のリクエストがこれまた苦痛だった。


 女装のまま、ひかりと絡んでくれというもの。


「つばさ、あんたお小遣いが少なくなったんでしょう?」


「あはっ、バレたか。

 一枚だけ撮らせてよ。後でひかりにもあげるから」という商談で、やはり僕の意思は反映されずに撮影会となった。


「ひかるちゃん、可愛い」というつばさの声も逆の意味にしか思えない。

 これでは、告白なんて出来無いわけね。


 一枚千円はする二人のツーショット、しかも僕の女装編なわけだから、一枚の相場も上がるらしい。



 母はビデオで撮っているし、これはヤバイかもしれない。


 撮影会が終わると、既に夜中の一時過ぎ、やっと僕の出番ですね。


 さて、何をして貰おうか?

 色々な事を考えてる最中の一言。


「じゃあ、今日は解散ね。おやすみ」



 ……おーい、ひかり。

 僕の王様の出番は?

 やっぱ、無いわけね……。ばかー!


 今日も鬼畜な母と姉に弄ばれた日なのでした。

 ちくしょー!

お待たせです。


やっぱり、この話は作者的に楽しいな!



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