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昼食を一緒しよ!

 学ランに着替えて、自分のクラスのニノニに入ると隣の席のブン太から声が掛けられた。


「あらっ、お前ニ限まで何してた?」


「いやっ、学校には来てたけど……。

 ちょっと、野暮用……言えないけど。

 あっそうだ。ブン太、お願いがあんだけど?」


 ブン太がニヤリと笑みを浮かべた。

 どうせ、ふっかけようとしているんだろう。


「お昼一食かひかりちゃんとの握手かデート」


 ひかりの依頼だから、ひかりの握手が財布に優しい。

 しかし、ひかりに頼んだ途端にひかりから別の要求があるだろうから、ここはブン太の方が理不尽じゃないだろう。


 くっ、お小遣い前に貴重な五百円玉が消えてしまう。


「お昼一食でよろしく」


 断腸の思いでお願いすると二つ返事だった。


「で、お願いって、なんなの?」


「昨日、僕がお前の家に泊まったことにしてくれ」


「ああん。じゃあ、そん時お前はどこにいたんだ?

 まさか、如何わしいことなんてしていたのか?」


「いや、家にいたよ」


「じゃあ、素直にそう言えばいいじゃん」


「いや、それがまずいから、お願いだけど」


「じゃあ、お昼一食にひかりちゃんと握手ということで」


 こいつ足元をみやがった。


「ブン太君。ひかるを虐めないでね。あたしの可愛い弟なんだから」


 澄んだ声がブン太の背後から聞こえた。

 そちらに目を向けると、ひかりとその後ろにつばさが付いて来ている。


 まさか、ここで(こく)る訳じゃ無いだろうが……。


 ブン太が僕にあわせてくれないと、ヤバイことになりそうだ。


 俺は小声でブン太に言った。


「ブン太、お昼一食にひかりと握手で、お願い。

 ただし、ひかりとの握手は、本人の了解がいるから、後日ということで」


「了解した」


 ブン太も合わせてくれた。

 幼稚園から高校までずっと一緒だったから、『あ、うんの呼吸』にのように察してくれる。

 これで、財布も察してくれたら最高なんだが。


「んで、ひかりは何の用?」


「またまたまた〜!

 この私がここに来るなんて理由は一つしか無いわ。

 この学園No. 1のあたくしが」


 ……ひかりさん。

 ドヤ顔すると、その美少女度が半減するんですけど。


「ひかる、お金貸して、お財布忘れたの!」



「いや、今月は僕もかなりピンチなんだけど、しかも貸しがあったと思うのですけど、お姉さま」


「へえーっ、じゃあ昨日は何してたのよ?

 お金があるから、遊んでたんでしょう。

 また、色々なお店で、綺麗なお姉さま方に洋服を着せられてファッションショーでもしてたんじゃないの?

 それから、何時ぞやと同じくお持ち帰りコースかな」


 って、ひでぇなコイツは、弟とはいえ、容赦無い。


「ひかるは家に泊まったよ。

 昨日はゲームして、夜中まで接戦だったからそのまま泊めたんだけど」


「まあ、ブン太君。私の大事な弟を保護してくれてありがとう」


「いや、そんな。勿体無いです。ひかりさん。

 でも、ひかるはお持ち帰りされたことがあるのか?」


 って、そこにこだわるな。

 ほら、つばさもひかりの前に出て来てまで聞くことじゃないの!


「いや、お持ち帰りされたって……ひかり!

 お母ちゃんのことだろうが。

 お前が居なかったから、僕が代わりにお前の服を着せられたんだからな。

 しかも、お母ちゃんも二人お揃いなんて買いやがったし。頭にくるのはコッチだよ」


「えーっ、ひかる君。女性モノを着たの?」


 引いているよ。

 正に引き攣りながら引いている!

 愛しのつばささんが……。


「あっ、つばさ。うちのお母ちゃんがデザイナーって知ってるよね。あたしもモデルしているから忙しいし。私に似合いそうな服を見つけて買いたかったらしいけど、私が仕事でいなくて着せられなかったから、嫌がるひかるにお願いしただけなのよ。

 だから、あたしに免じて、そんなに引かないでくれる?」


「いやがって……。

 じゃあ、仕方ないんだね。

 引くなんてひかる君にも可哀想だよね。

 お手伝いしてるなんて、偉いと思うわ」


 一気に誤解が解けたら、いい子扱いになっているが、僕はこの間一言も話していないのに、納得ですかい?


「いや、ひかるなら絶対に似合うと思うよ」


 はい、ブン太君。セーラー服を着たら、ひかりの親友も分からないのだから、そのレベルを遥かに超えてますね。


「んで、幾ら?」


「ふむ。ひかるは今日は学食かな?」


「うん」


「じゃあ、お金はいらない。

 その代わり、お昼を一緒しよ。学食で奢ってちょうだい。それでOK?」


 まあ、昼飯の方が安いだろうね。

 ひかりはうどん系しか食べないし……。

 しかし、注目されるだろうなぁ。

 コイツは人気あるし、なるべく一緒に居たくないのに。


「じゃあ、つばさもいいわね」


「うん」


 ん?


 つばささんも一緒なのか?

 なら、全然オッケー!

 しかし、横から羨ましそうな奴がいるから、誘ってやるか。


「ブン太もいいだろ?」


「もち。ひかるの相棒だかんね! じゃあ、また来るね」


 ひかりはつばさの手を握ると、教室から出て行ったのだが、その時にやっと注目度合いに気づいてしまう。


 ヒソヒソと聞こえる声。

「今日は学食に決まり」、「えーっ、なんで俺は弁当

 なんだよ」、「ひかる君も一緒だって」、「つばぴょんも一緒だってさ」


 …………これは混むな。嫌だな。パンにしよっかな。


 ひかりにメールしたら一蹴された。

『目立つなら、その方がいいわ。

 もっと、私はひかると一緒に居たいのに、学校の中じゃあ、ひかるは私を避けるんだもん。

 二人で居ても当然みたいに目立たなくなることが私の目的の一つだからね! だから、諦めなさい』


 ……まあ、悪い気はしない。


 つばさと会えることを含めて、いいかもしれない。

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