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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

白色壊光

掲載日:2026/04/14

これは、とある人から聞いた物語。


その語り部と内容に関する、記録の一篇。


あなたも共にこの場へ居合わせて、耳を傾けているかのように読んでくださったら、幸いである。

 やっほー、つぶつぶ。今日も景気悪そうな顔してんね。

 まったく、歳食ってからのあんたはたいていその表情なんだから。そのうち、眉間にしわが刻まれちゃうわよ? なにか楽しいことでもやったら?


 ――赤い子が出たらしいから、警戒を厳にしている?


 え~、まじで出たの? 赤い子? なつかし~いとかいえばいいかしら。

 うちらの間じゃ評判だったわね。被害に遭ったって話す子が、ぽつぽつ出続けていたから。

 ふ~ん、話の出どころはあいつの友達の娘さんね……まあ、その話はあとであんたの方から話してもらうとして。

 赤といったら、対するは白色。ちょうどよく、といってはなんだけど白色にまつわる話、仕入れてきたわよ。赤い子ほどじゃないけど、あたしらの中じゃちょくちょく聞いていたもの。あんたも知っているかもね。


 白色壊光。

 おっと、顔つきがさっきよりもマジになったわね。そ、例のあれよ。

 あたしらが学生だったときに、河川敷の野球グラウンドとして使われた部分が、ひどく壊されたときがあったでしょう?

 ピッチャーの投げるマウンドを中心に、砂も、まわりを遠巻きに囲う草たちも、すっかり焼け焦げてしまっていた。

 火の玉が落ちてきたみたいだって思ったけれど、ホームベースの後ろにある何メートルもあるはずのバックネットがわりのフェンス4分の3が消え去っているのは奇妙。本当に火だったら黒く焦げて終わりそうなものなのに。

 そこへ例の白色壊光の話が広まったのよね。こうなる前の晩に、河川敷で白く発光する光を近所に住まう人たちが目撃したって。あれが白色壊光じゃないかってね。


 文字通りに、ものを破壊してしまう白い光のこと。

 単なる爆発とも言い難いのが、その壊光は動くことができる点。発生したその場にとどまるとは限らず、多くは球体の形をとって宙を移動するのだといわれている。ボール・ライトニングと似通った話よね。

 破壊が及ぶ面積は、そのときのケースによって異なる。広いときには一帯を荒野にすると伝わるけれど、狭いときには毛穴ひとつほどで済むときもあるとか。

 でもこれが生き物の身体であったなら、たとえ毛穴でも十分。急所であったならば、すみやかに命を刈り取ることだってできる。毒や凶器なども出てこない、暗殺者のごとき振る舞いね。


 だから、あたしたちも外を出歩くときには、それとなく気を配った。

 白色壊光は時と場所を問わない。気が付いたら、目の前に現れて吹き飛ばされるかもしれない。

 いや~、話を聞いたばかりのときのあたしたちはビビりっぱなしだったわね。ことあるたびにキョドキョドするものだから、猫もかくやといったとこでしょ。

 ま、大人になってからは、いちいちビビってもいられないけどね。それ以外に気にするべきことは多いし、手を下してくれるならそれはそれで構わないわ。消えたいほどにしんどいときが増えすぎてるもの。自殺とか誰かに殺されるとかよりは、ましでしょうね。

 もっとも、それは個人レベルでの話。社会全体で見たら、急に残される側になって困るだろう人も増えてるから、それはそれで大迷惑でしょうけど。


 ま、はじめて話を聞いてからはるか時間が過ぎたわけだけど、忘れてしまったわけじゃない。まさか、会社の後輩君から飲みの席で白色壊光が出てくるとは思わなかったわ。

 彼が出会ったのは、数日前の休みの日。久しぶりに友達に誘われて、お昼ご飯を食べた帰りだったらしいの。

 互いに明日のことがあるから、長々と夜までだべるのもどうかと……と、早めに切り上げたから陽が高い時間帯だったみたい。

 彼の家は最寄駅から徒歩15分の小高い丘のうえ。家賃を考えるとこのあたりが妥協点だったらしくて、えっちらおっちら坂道を上り始めたのだけど。


 ふと、前方数メートル先の街灯が、一瞬点滅した気がした。

 決められた時刻から点灯し始めるタイプだったから、まだ光るには早いはず。けれども彼の眼は、設置された灯り近くにとどまる光を認めていたわ。

 次の瞬間、灯りを覆っていたガラスがいっぺんに砕け散ったところも。その直後に、光そのものが球形を保ちながら、すうっと電灯から離れて漂い始めたところも。

 ぽかんとしてしまった彼だけど、浮かんでいた灯りはそのまま自分のほうへ向かってくる。途中に立つ一軒家の軒先にはおもちゃのバスケットゴールがあったのだけど、その灯りがボードに触れるや、そなえていたカゴごと粉々になって、ようやく自分が対しているのが白色壊光だと実感が湧いたみたいね。

 取れる対策はシンプル。逃げるしかない。

 彼は踵を返して、上ってきた坂を駆け下りていく。白色壊光は気まぐれにその力を発揮する。間合いを離したからといって安全性が増すとは言い難く、次の瞬間にはこのあたり近辺を吹き飛ばす爆発を引き起こすかもしれない。そうなれば助からない。


 結局、彼は逃げ切ったけれど、そこの坂道に面した家はバスケットゴール以外にも、家やガレージや車の一部などが、不自然にえぐられてしまったようで。

 しばらくは通ることがはばかられたみたいね。

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