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ガラン王国の現状



「三番テーブル、料理運びます。」


 あれから一ヶ月があっという間に過ぎ、クラスメイトと開いた店は順調に売上を伸ばしていていた。モラル兄妹の店を借りた時の繋がりのお陰で、仕入れや呼び込みには苦労しなかった。


 そんなある日、閉店している店を二人の兵士が訪れた。

「ここが転移者たちが経営している店で間違いないな!」


「そうですけど、どうかしましたか?」


「小鳥遊 光輝!王命により貴様を城へ連行する!」


 光輝は言われるがまま従い、またしても両腕を捕まれ城に着くまで空の旅をすることになった。

「二度目でも怖いものは怖いな……」


 光輝は前回と違う部屋の前へと案内された。

「レイナルド様!光輝殿を連れてまいりました!」


「入れ。」


 部屋の中に入ると一つの大きなテーブルを囲むように王様、側近のノエル、姫様、小学生くらいの男の子、ガタイのいいおっさんがいた。

「ご苦労だった。下がってよいぞ。」


 光輝を連れてきた兵士がないなくなり、部屋にはしばらく沈黙が流れた。

「光輝殿、貴殿が何故この場に呼ばれたかお分かりか?」


 明らかに機嫌が悪そうにノエルが光輝に質問をした。

「いえ、全く検討もつきません。」


「検討もつかない……だと。貴殿が転移者を何人も連れて城を出たせいで私の作戦がどうなったかわかっているのか?」


 (……なんだそんなことか)


「待ってくださいノエル様!光輝様には私からお願いしたのです!光輝様は悪くありません!」


「姫様は黙っていなさい!私たちがしているのは、あなたや姫様のような子供の遊びではないのです。あなたたちは、私たち大人に従っていればいいのです!」


 (自分の娘があんな言われ方してもだんまりか……それにしてもこのおっさんムカつくな……)


「国王様。私は卑しい平民の生まれで正しい言葉遣いが分からないのですが、私の意見を述べさせてはいただけないでしょうか。」


「よかろう、申してみよ。」


「ありがとうございます。では、ノエル様。先程あなたは私や姫様のしていることが子供の遊びと申しましたね。」


「それがどうした。おままごととでも言い換えた方が分かりやすかったか?」


「どちらでも構いませんが、そんな子供に頼りっきりの作戦を実行しようとしているあなたは子供の遊び以下なのではないでしょうか?」


「貴様ァ!」


 ノエルは腰の剣を抜き光輝に構えた。

「分かりませんか?誰かに任せて、自分は美味しい汁を吸う。まるで幼子のような作戦だと言っているんでずよ。」


 ノエルは光輝の自身を侮辱する言葉に腹を立て、剣を振りかぶり、光輝の首目掛けて振り切った。だが、剣は光輝の首に届くことなく地面に音を立て落ちた。

「黙って聞いていれば何もしなかったものを。王の客人の命に手をかけようとしたお前を許す訳にはいかない。」


 姫様の隣に立っていたガタイのいい男が片手で剣を扱いノエルの剣を弾いてくれていた。

「私は大人への口の利き方というものを教えてやろうとしただけです。邪魔をしないで頂きたい。」


 二人が一触即発の空気の中、レイナルド王がようやく口を開いた。

「衛兵、客人に無礼を働いたノエルを牢屋に閉じ込めておけ!」


 レイナルド王の言葉で部屋の扉が開き、外で待機していた兵士がノエルの腕を掴んだ。

「レイナルド王!私に逆らう気か!今までどれだけこの国に支援してきたと思っている!離せ!離せぇぇぇぇ!」


 兵士がノエルを連れ部屋を出るとレイナルド王のため息が部屋中に響いた。

「はぁ……これからどうすれば……。」


「何言ってんだレイナルド。ノエルなしでもやりようはいくらでもある。」


「兄さんはわかってないんだ……うちの国がどれだけノエルのような貴族に支えられていたか。きっと今回の件で貴族は国への支援を辞めるだろうな……。」


「それは、そうかもしれんが。放っておく訳にはいかんだろ。なんならこうするのが遅かったくらいだ。悪いな光輝殿、面倒に巻き込んでしまって。俺の名前はラモン・ガラン。そこにいるレイナルドの兄で、この国の騎士団長を務めている。」


「小鳥遊 光輝です。先程は助けていただきありがとうございました。」


「あぁ!さっきのはスッキリしたぞ!だがな俺の剣が間に合ったからいいものの、本当に危なかったんだからな。」


「そう……ですね。正直ラモン様が姫様サイドかどうかは賭けだったので、当たっていてよかったです。」


「ん?俺がノエルの部下じゃないって確証がないのにあんな危険なことしたのか!?」


「いや、こういうのは立ち位置で陣営がわかるのが定番かなと……はい、今思うと無謀でした……。」


「今は、そんなことより国のことだ!この国と魔術都市ヴイッセン、エルマン王国は仲がいいとは言い難い。魔物の進行を防ぐ協力をしなかった、この国を許すはずがない。気乗りはしないがノエルの作戦を実行するしか……」


「それはダメですお父様!再三申しましたが、それをしてしまえば人類は先の四カ国と同じ結末を迎えます!」


「メラニー……しかしな……。」


「今からでも協力することはできないのでしょうか?」


「残念だが、魔術都市ヴィッセンのように魔術道具や豊富な魔力がある訳でもなく。エルマン王国のように純粋な戦闘力がある訳でもない。まぁ、早い話この国の兵士は弱いのだ。」


「……だったら勇者に頼めば!」


「できなくはない……できなくはないが……な。」


 レイナルド王は隣に立つ男の子の背中を押し光輝の前に立たせた。

「はじめまして!僕の名前は浪岡 新助です!ガラン王国の勇者をしています!よろしくお願いします!」


「っと、まぁそういうわけだ。先代の勇者は一昨年に亡くなってね……今はこの子が勇者をしているんだ。」


 (レイナルド王の子供とばかり思っていたが、まさか勇者とは……そりゃ、ノエルって人が戦いの素人を戦場に向かわせようとしていたのはこういうことか……)


「……つまり、ガラン王国が他の国のような武器を手に入れられれば、大丈夫なんですよね?」


 


 

 

 


 

 

 

 

 

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