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仕入れとダンジョン



 翌日、店を経営するための食材の仕入れへとカルロスさんと共に向かった。

「おう、カルロスじゃねえか。お前が酒を買いに来るなんて珍しいな。」


「いや、俺じゃなくてこっちだ。」


「あん?まだガキじゃねぇか!まさかガキに酒飲ます気じゃねえだろうな?」


「違う!違う!」


 俺とカルロスさんは酒屋の大将に経緯を説明した。

「なるほどな……坊主はどんな酒が欲しいんだ?」


「ダンジョン攻略者が好む酒と、一般の人が飲みやすいような手頃なお酒はありますか?」


「それなら小鬼殺しと雨水って酒がオススメだな。小鬼ころし一升で小銀貨五枚、雨水は一升で小銀貨一枚でどうだ?」


「大将、いくらなんでも流石にそれは高すぎなんじゃ……」


「てめぇは黙ってろ!俺は坊主と取引してるんだ。っで坊主、買うか買わないかどっちだ?」


「わかりました、その値段で一升を五本づつ買います。ただ、もしも他の店でこの値段よりも安い値段で売っていることを知ったら、大将さんは未来のお得意様を逃すことになりますね。」


「言うじゃねぇか……気に入ったぞ坊主!小鬼ころしは銅貨五枚、雨水は銅貨一枚で取引成立だ!」


「って!大将十倍以上ふっかけてたのかよ!」


「うるせぇ!商売ってのはな、相手がその値段で納得して買えばそれでいいんだよ!お前は親父さんと違って商売の才能がてんでねぇな。」


 十倍以上ふっかけられたことには驚いたが、酒屋の大将の言葉には同感だ。商売は相手にそれだけの価値を見出させなくてはいけない。そのためにも酒は大量に必要だ。

「大将さん。酒代を少し多めに払うので、明日、店を開いたら食べに来てくれませんか?」


「俺はいいが、本当にいいのか?タダで飯を食いに来いって言ってるようなもんだぞ?」


「その代わりと言ってはなんですが、よかったら大量の酒を持ってきてくれると助かります。」


 酒屋の大将との会話を終え、八百屋や肉屋などの店主にも同様に少し多めにお金を払い、店に戻り次の日の仕込みをした。

___________________________________________


 あれから一週間が経ち、店はモラル兄妹の協力のお陰で順調に周り、大繁盛でレンタル期間最後の日を迎えた。

「おい光輝!お前ここで何してるんだ!」


 俺とモラル兄妹がメニューや店の経営について話しているとクラスメイトABCが店のドアを勢いよく開けて入店した。

「俺たちがダンジョンで命懸けで金を稼いでるのに。お前は飯を売って楽しく生活しやがって……どうやって言葉を覚えた!」


 何を怒っているのかと思えばそういう事か……。虐めていた相手が上手くいっているのが気に入らないのかと思ったが。服装や表情を見る限り言語の壁で相当苦労しているようだ。


 一週間の経営で相当な額を稼いだが、クラスメイト全員と生活をするなんて馬鹿げた真似はしたくない。ここは何とか誤魔化そう。

「お前に教えてやる義理はない。」


 わざと、この世界の言葉を使い、俺の気持ちを伝えた。

「光輝!お前調子に乗るなよ!」


 クラスメイトABCが店内で武器を抜き、異変を感じていた店内のお客さんがそれを取り囲むように武器を構えた。

「光輝くん、こいつらが何を言っているかわかるのか?俺たちには何を言っているのかさっぱりなんだが」


「クソが!」


 クラスメイトABCは武器を納め逃げるように店を去った。

「皆さん、ありがとうございました。お礼といってはなんですが、皆さんに唐揚げを五個づつ提供させていただきます!」


 こうしてレンタル期間最後の日は大盛況で幕を閉じた。


 翌日、俺はモラル兄妹に店の繁盛の理由を伝えた。一つ目はモラルさんたちの元パーティーメンバーに提供予定の料理をお弁当として持たせ周りの冒険者に布教してもらったこと。友人が多かったのか、効果がとても大きく半分は彼らのおかげだろう。


 二つ目はメニューをきらさなかったこと。食材などを置けるスペースは限られているため、大量に仕入れることができなかったのを、食べに来てもらうという口実で、在庫がなくなる頃に酒屋の大将を筆頭に運んできてもらったお陰で在庫切れを起こさずに最終日を迎えることができた。


 三つ目酒は高くツマミは安く、ツマミを安く手に取りやすい値段にすることで酒を売り込む。


「なるほどな……けど、なんで他の店のやつらに別々のレシピを教えてやる必要があったんだ?」


「一週間とはいえ、この店に客が集中しすぎたので、客が上手く分散するように、それぞれの店に別のレシピを教える必要があったんですよ。恨みを買って嫌がらせを受けたり、レシピのために誘拐される可能性だって考えられるから念の為ですよ。」


「まぁ稼いだ額が稼いだ額だからな……それで、光輝くんはこれからどうするんだ?」


「うーん……ゲーマーとしてはダンジョンと聞いて黙ってはいられないんだけど……ダンジョンってやっぱり素人には危険ですか?」


「一層なら弱い魔物しかいないから安心して大丈夫だよ。当然下へ行けば行くほど魔物は強くなり報酬は豪華になるよ。」


 ふむ、やはり一度ダンジョンには行ってみたい。さっそく俺はカルロスさんに必要なもののアドバイスをもらい装備を整えてダンジョンギルドへと向かった。


 ダンジョンに入るためには、まずギルドへの登録が必要なようで、ギルドへ登録するとギルド内の専用のダンジョンへの入口へと案内される。この際パーティーメンバーと入ることもできるようだが、当然俺は一人で入る。


 ダンジョンの中では、どういう訳か他の入口から入った人と会うことはないらしい。どういう仕組みか気になりはするが……今はそんなことより魔物だ。


 目の前に一匹のスケルトンが現れた。ダンジョンの魔物は外の魔物と違い、体のどこかにコアが存在していて、コアを破壊しない限り復活するらしい。カルロスさんが言うには破壊したコアを持ち帰ると小遣い程度のお金と取り替えてくれるとの事。


 俺はこの話を聞いて、どうしても気になることが一つあった。

「やった!」


 魔物のコアを破壊せずに相手を倒し続けたら、いつまで復活を繰り返すのか。結果は十五回を超えた辺りで魔物のコアだけを残し塵となり消えた。


 この世界の魔力のような不思議なエネルギーが魔物を復活させているなら回数制限があると思っていた。それから俺は食料がきれるまで、ダンジョンの入口近くで無傷の魔物のコアを集め続け、カバンがいっぱいになりダンジョンを後にした。


 お金には余裕がある。俺は魔物のコアを売却せず宿へと持ち帰り、何か使い道はないか確かめた。だが結局、図書館やギルドなどに行き調べても無傷のコアの情報はなく、あるのは欠けた魔物のコアの情報のみだった。


 あまり人に貸しを作りたくはないのだが、仕方がなくモラル兄妹の営む飯屋へと足を運んだ。モラル兄妹の飯屋は、昼時と言うのもあるが、俺が去った後も継続してお客さんが足を運んでいる様子で安心した。


「いらっしゃいま……って光輝くんか!注文取りに行くから少し待っててくれ!」


 お客さんに運ばれている料理を見る限り俺が教えた仕込みや調理方法で上手くやれているようだ。

「光輝くん、いらっしゃい!光輝くんのお陰で連日大賑わいだよ!それで今日は何にする?」


 食事をしに来たわけではないのだが……この様子ではしばらく質問は無理そうだ。

「肉野菜炒めを一つお願いします。」


 注文をしてしばらくすると彩りが鮮やかな肉野菜炒めがテーブルに置かれた。以前とは違い噛めばシャキシャキと音を立て固くなく。何より味も美味しい!


 肉野菜炒めをゆっくり楽しみ、客がいなくなるのを待ち。カルロスさんに無傷の魔物コアを見せた。

「それは……もう復活はしないんだよな?」


「手に入れてから丸一日は経つので大丈夫だと思います。」


「だったらいいんだが、それにしてもこんな綺麗な状態のコアなんて見たことねぇな……少し触ってみてもいいか?」


「どうぞ。」


「……!?」


 カルロスさんの手に魔物のコアが触れると、カルロスさんは力なく膝から崩れ落ち、魔物のコアは赤く輝いている。

「大丈夫ですか!?」


「あぁ……大丈夫だ。急に力が抜けて驚いただけだ。それと光輝くん、この魔物のコアに着いて一つわかったことがある。この魔物のコアは魔力を吸い上げる性質を持っている。」


「魔力を吸い上げる?」


「あぁ。光輝くんは何故か平気なようだが、俺が魔物のコアに触れた瞬間、脱力感と体の中の魔力が吸い上げられる感覚があった。恐らく、俺の体を流れる炎の魔力の一部が魔物のコアの中に閉じ込められているんだろう。」


 恐らく、別の世界から来た俺には魔力が流れていないのだろう。それにしても大量の魔力コアを持ち帰ったがなにか使い道がないだろうか……。


「光輝くん、この魔物のコアのことはダンジョンギルドに報告するべきだ。今は使い道が分からないが、新たな発見であることには違いない。それなりの報酬がギルドから貰えるはずだ。」


 ギルドか……ギルドは信用できないんだよなぁ。魔物住むダンジョンを管理しているのもそうだが、異空間に繋がっているのか、専用の入口から入ると他の人間と鉢合わせないのも気になる。

「カルロスさん、ありがとうございました。ギルドには時間ができたら行って報告したいと思います。」


 俺は赤く光る魔物のコアを拾い、カルロスさんにお礼を言い、モラル兄妹の店を後にした。


 

 

 


 

 

 

 

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