食事
シャワー室から出ると、服とタオルが置いてあった。
簡単に髪と体を拭き、おいてあった服に腕を通す。
はたと、浄化すればいいだけだったのに気がつき、しかし浄化は珍しいのでつかわない方が良いと考え直した。浄化を持つ人は大抵神殿へと招かれ、所属させられる。ここで使ったらどうなるかわからない。きっと僕がいたところは神殿で、もし僕が連れ戻されたら……。僕が生きているとわかったら魔王がいるのだと思われるかもしれない。
「シャワー、ありがとう」
「いや、気にしないで。僕が連れてきたんだし」
そういいながら彼は食事を用意しているはようだった。
未だに空腹感を覚えたことはない。
胃はあるからものは食べられるのかもしれない。
しかし、初めてご飯の匂いをちゃんと嗅いだ気がする。良い匂いだと思った。
「簡単なもので悪いんだけど」
「……食べていいのか?」
「え?食べないの?」
食べたことがないから食べれるのかわからない、とは流石に言えなかった。
「なら、お言葉に甘えて」
それって神へ祈りを捧げたあと、料理に手を伸ばした。塩と酒とハーブが使われた鳥肉と、野菜多めのスープと、少し硬めのパンがあった。
少し緊張しながらそっと口に運ぶ。幸い、食べ方はわかっていた。
「どう?」
びっくりした。食事ってこんなにも幸せになるものなのか。
きっとこれが、美味しいということなのだろう。
「幸せの味がする」
「大げさだな」
でもわかる、とリドは呟いた。




