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001 仮初の家族が集う

「うーむ、この世界が嫌になった。もう田舎にでも引きこもろうか?」


愚痴るじじいは、三枝気功道場の主である湊川由紀夫である。三枝とは妻の旧姓、妻の父親の道場をついだのだ。

そして今日は、道場での気功の呼吸法訓練で喘息になった!というクレーマーと決着をつけてきたところである。

「父母は屑だが、あそこの祖父がまともな人だったので助かった」

喘息の子の祖父と相手方の弁護士との事前打ち合わせ後に、全員でクレーマーの家に訪れてみれば、そこはゴミ屋敷。絶対これが原因だろう!と、祖父が怒り狂い、弁護士も呆れていた。


「しかし、誹謗中傷をがっつり拡散されて、生徒は皆辞めてしまったし。もう道場もおしまいかな」

慰謝料100万とSNSで謝罪文を流す事にはなっているが・・再度、生徒を集めることは難しいだろう。

既に妻は亡く、子供無し、身寄りもなし。ここは23区の江神区、道場の敷地ならマンションが立つ。土地は良い値で売れるだろう。

「まあ、貯金はたんまりあるので、趣味として維持するもよし、か」

薄暗い河川敷を歩いていると、ドガシャーーーン!!!と物凄い衝撃音が鳴り響いた。

「なんだ!?・・ここから近いな」

即座に丹田のチャクラを練り気を生成、足に巡らせて足の強化を行い、走り出す。


7つあると言われているチャクラであるが、人の短い人生で7つすべてを解放することは難しい。

せめて丹田のチャクラだけでも開放して、元気に人生を過ごそう!

というのが、三枝気功道場の教えである。丹田のチャクラだけでもちょっとした身体強化は可能なのである。格闘家にでもなるのなら別だが、普通の人生を歩む分には十分だろう。

68歳とは思えない脚力で、音のした現場を訪れると・・・鎧装備のゴツい親父と小学生位の少女が転がっていた。

その二人を見た瞬間に怖気を感じた。ゴツい親父も中々の手練れと見たが、怖気は・・少女の方に感じた。

周囲に確認するが、誰も状況が分からずフリーズしている。

ちっ!使えねえな!慌てて救急車を呼ぶ。何故か?同行を求められたので、一緒に救急車に乗り病院に向かう。

先に気がついたのはゴツい巌の如き男性だった。剣を所持していたので警察に事情聴取をされたようだけど、こいつは意味不明な事を言っている。


「勇者または英雄を探して異世界より来た」

だとよ。笑えるだろ?きっと外国から来たアニメかぶれだろう。

次に気付いた少女に至っては言葉が通じなかった。ちょいちょいと来いとジェスチャーされたので近づくと、頭に手を乗せられた。何なんだ?

「ほー?うんうん、よし!言語は理解した。おいじじい、助かったぜ!」

私の頭の中の言語情報を吸い取った?らしい。馬鹿げた話で鼻で笑ったら、妻との交際時期の甘々エピソードを話しだしたので信じることにした。てか、信じるから・・初体験!?やめろー!!!


まあ、その後はもっと大変だったが。

フル装備の自衛隊みたいのがワラワラと現れ、秘密の施設に連れて行かれて3週間ほどそこで生活することになった。

なんでも、異世界からの来訪者は多いらしく、各所にそういう秘密の施設があるらしい。今回は牙公園の地下だった。てか、こいつら本当に異世界人なの!?

大男の名前はアーレル、異世界から勇者を求めて派遣された教会の騎士団長らしい。

そして少女の名は桜花。なんでも最高神界では「神殺し」と呼ばれていたが、最高神に敗れて力を失ったらしい。厨二病展開に思考が追いつかん。


「いやー、私もこの業界に30年勤務していますが、神殺しですよ!こんな大物は初めてです」

って、ここの所長Sに言われたよ。一般人が迷い込んで来ることが殆どらしく、物語のような強者が来ることは稀らしい。

「突発的な戦闘や、世界大戦が起こっている時は、相当やばい稀人が来てますよ。参考までに」

って言われてもな〜

「で、ここからは強制になりますが、貴方には二人の保護者になってもらいます。既に二人にも許可を取ってます。身寄りもなく、孤独老人の貴方は最適なのですよ・・部屋も広いですし」

極秘情報をペラペラと話したと思ったら・・これだよ。まあ、何かの縁だし、暇だしな。と了解した。

大男のほうは10年で帰るそうなので、特に神殺しの少女の教育を頼まれた。が、教えられることしか教えられんぞ。

うちは1階が道場で2階は生活スペース。なんと都内で学校の体育館レベルの広さがあるのだ。部屋も余りまくりだ。

妻の祖父が金持ちだったらしくてな、遺産もがっぽりだったぞ。まあ、使い道はないんだが。


「よーし、今日からここがお前達の家だ。1階の道場で修業、2階は生活スペースな」

「ありがたく使わせて頂く」「じじい、親父、よろしくな!」

大男は妻側の親戚、三枝アーレル、少女がアーレルの娘、三枝桜花となった。

アーレル達はある外国の要人で亡命者という体で、安全のため詳細は不問ということになっており、身分証も貰っている。

アーレルが茶髪に碧眼、桜花が金髪で真紅の瞳、こんなのうまく説明出来ないから助かったぜ。


「よし、早速修行だ!最高神ぶっ殺す!」

「うむ、私も少し体を鍛えよう」


おうおう、なんか楽しい毎日がやって来そうだな。これは田舎に籠もる暇も無さそうだ。



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