066 サラとワタルは今、魔石川邸の前にいた
サラとワタルは今、魔石川邸の前にいた。
「ねえ、なんでここに来ないといけないのよ」
「嫌なの?」
「………当たり前でしょう」
ワタルはサラの表情から悔しさを読み取った。
「だったら付いてこなければいいのに」
何気にそう言うとサラが腕を掴んで睨んでくる。
「文句ある?」
「ありません」
喧嘩をしても仕方が無い。それに言うとますます怒りそうだから黙っているけどサラはとても機嫌が悪そうだった。本来無表情を装っているサラの顔が今は口元が僅かにゆがんでいて、いらついている事が丸わかりだった。
遥香と薫は一週間の間で3カ所の魔石発掘場を襲ったことをワタルは聞かされている。花蓮も警戒しているが睡蓮が負傷しているからどうしても手が回らないでいるらしい。
その隙を狙って遥香達は魔石発掘場を次々と襲っている。
ワタルは呼び出しボタンを押した。
「どうぞ」
玄関の扉が開き、中に入ろうとして、違和感を感じた。
もう一度呼び出しボタンを押した。
「どうしました?」
「おれの知っている限り、魔石川邸に男性は働いていないはずだが、あんた誰?」
「………新しく雇われたボディーガードです。このところ物騒な事が続いているので臨時で雇われたのですが、それが何か?」
ワタルはその言葉に違和感が何か嫌な予感に変わった。
「いや、なんでもない」
そう言ってサラの方を見た。
「何?」
サラは何も気付いていない。
ワタルは監視カメラに一度視線を向けてから中に入っていった。その少し後ろにサラがついてくる。
「どこにいくの?」
邸の入り口に向かわずに道を外れたワタルにサラが声をかけてきた。
「ちょっと気になることがあるから、確かめてくる」
そして建物に沿ってゆっくりと歩き始めた。
そこは以前に花蓮に魔石を譲り受けた部屋だった。ワタルは立ち止まり窓を見上げる。
「さっきのインターフォンの男性は、たぶん桜ヶ丘薫だと思う」
「えっ、ウソ?」
確信はなかった。
だからワタルは誘ったのだ。
「サラ、すぐに家にもどって木広に薫と会ったことを伝えてくれ」
ザッ。
砂利を踏む音がして、そっちをサラが振り向く。
「桜ヶ丘薫」
「どうも、はじめまして」
ブレザーの学生服を着ている薫があらわれた。
手に一握りの魔石を持っている。
「これをお返しに来たのですが、あいにく花蓮さんも睡蓮さんも不在でして、どうしたものかと思っていたところに丁度良くあなたたちがきてくれて助かりました」
魔石を放り投げてくる。
もとから脆くなっていたからだろう、ワタルが左手で掴むとその衝撃で魔石が砕けてしまった。欠片が足元にサラサラとこぼれ落ちる。
「これは、睡蓮の使い魔の魔石………」
「ええそうです。先日私に投げつけられたモノです。せっかくお返ししたのに壊れてしまうとは残念です。
サラさん、すみませんが睡蓮さんに私が『お返しできなくて残念でした』と言っていたと伝えて下さい」
そして薫は笑顔を浮かべて、
「伝えられれば良いですが。さきほど遥香さんにふたりが不在だと連絡しておきましたのでもしかしたら何かトラブルが起きないかと私は心配ですよ」
「おまえ………」
サラが突っかかりそうになるのをワタルは止めた。
「おい、早く行け。嫌な予感がする」
「でも」
「いいから。まず木広と連絡をとって花蓮と睡蓮を捜してくれ」
「分かったわ。気を付けてね」
そういってサラがその場から去っていった。
その間、薫はその場から一歩も動かずにいた。ワタルは少し近づいていった。
「サラには聞かれたくないはないでもあるのか?」
「ええ。ワタルさんにだけ折り入って話しがあるんで。でも遥香さんに連絡したのは本当のことですよ。
いまの遥香さんは余裕を失っていますから本当に心配です」
ワタルは薫のすぐ近くまでいくと、シャツを掴んで引き寄せた。
「おまえは何を心配しているんだ?」
ワタルは睨み付けた。
「こんな近くで見つめ合うと照れます」
ワタルは薫を突き飛ばした。
数歩後退するも倒れなかった薫は微笑を浮かべている。
「なぜここにいる?」
「分かっているでしょう?」
今度は薫が自分から近づいてきた。
「ここにある魔石が目当てか」
「安心してください。ここにある魔石は全て処分おきましたから」
薫はポケットから透明な珠を取りだしてワタルに差しだす。
投稿に時間がかかってしまい、申し訳ありません。
そろそろ終焉に向かっていくことになります。
(感想くれると、きっとがんばれます)
ではでは