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060 ワタルの隣でタマが丸くなっていた

★登場人物紹介★

天野ワタル:サラの下僕。世界征服がまったく進んでいない、

双葉サラ:魔族との契約をワタルに邪魔をされ、ワタルを下僕にする

双葉木広:サラの姉。百合で花蓮ラブ。双葉重工の代表取締役

タマ:サラに召喚された猫鬼。ワタルの妹として生活中。猫化(?)

魔石川花蓮:魔石川商事の代表取締役。ワタルが好き(?)

魔石川睡蓮:花蓮の妹。ワタルとサラのクラスに転入

ヤドリギ:?

大藪遥香:シスター。貧乏。直情的な性格。教会から破門されている

大藪四方:遥香の妹。入院中

板倉満里子:ワタル達の担任。遥香の元上司

鬼姫:魔石発掘場のゲートの魔族。今は空の彼方で引きこもり中


 ワタルの隣でタマが丸くなっていた。


 ベットに寝ているワタルの体の隙間にすっぽりはまっている。器用なのか体が柔らかいのか、もともと小さいからかも知れない。大きな猫のようだった。


 タマは意識がないワタルの顔を指で突っついて遊んでいる。それに飽きるとワタルの顔をペロっとなめる。


 タマの行動をなるべく無視してサラはワタルの手を握っては離しを先ほどから繰り返していた。


 だいぶ慣れた。


 ワタルが屋敷に着いてばかりの時は手を触れた瞬間に体が分解するようなしびれに耐えられなかった。激しすぎる痛みにもう一度触ることをしばらく躊躇ってしまうほどだった。


 それが今では数秒耐えられるようになった。


「あまりくっつくな」


 ワタルの顔をしつこくめ続けているタマについ文句を言う。無駄とは知りつつ「ワタルから離れなさい」と言う。


「一応、回復してるんだけどね


 そう言いってタマはワタルの顔を舐めるのを止めて、隣で丸くなった。目を細める。


 今にもゴロゴロ喉をならしそうだ。


 サラはそっとワタルの手を掴んだ。


「顔色悪いよ。平気?」


 タマは片目を開けて見つめてくる。ワタルの腕に頬ずりしながらクンクン匂いを嗅いでいるタマに心配されてもうれしくない。かなり複雑な気分だ。


 タマはワタルに触れても何の問題もない。まったく平気。それどころかタマ曰くワタルの近くにいると日なたぼっこしている感じで、とても気持いいらしい。


 サラはワタルを触ることができないのに。


 やはりむかつく。


 ちなみに木広は一度だけ触れた後は二度と触れようとはしなかった。


 一言、「いらない子になった」とつぶやくから、さらはさすがに抗議した。それはあまりにかわいそうだ。


「冗談よ」


 それが一昨日の事だった。


 その時に、木広から双葉重工は倒産する事になる、と伝えられている。


 いかんともしがたい。


 それはサラも理解している。木広やサラを含めて主だった役員は責任を取って総退陣、後は銀行主体で再建計画が組まれることになる。そしてコストカットの名の下に大規模なリストラが始まることになる。


 木広は最後まで普段と変わらない口調で事実だけを告げた。


 最後に、


「この屋敷は自主的に会社に譲渡する事にしたわ」


 と最後まで気丈に告げて部屋をでていった。それから一度も姿を見せていない。


 木広の無念を思ってその場で泣きそうになった。


 木広は双葉重工をとても大切にしていた。その気持を知っているサラはかける言葉を見つけられなかった。


 心では泣き叫んでいるはずなのにそれを表に表さないのは、自分に気をつかっているせいだと思った。


 自分という存在が木広を気丈にさせているのだ。


 自分は木広の支えになるのはまだまだだった。


 いまは余計な心配ばかりかけている。


 委任状の件や狭山湖の魔石発掘権のことも離しをしたら、


「そう、仕方ないわね」


 と一言だけで、後はまったくその事に追求する事はなかった。


 木広はサラの事は一言も責めない。


 サラは自分が木広に愛されているのを知っている。だけれど役に立つどころか、トドメを刺すような事をしたのに、責められないのは逆にきつかった。役に立てなかった失意の感情とともに心が沈んでいく。


 守られるのは嫌いだ。怒られても良いから木広を支えたかった。少しでもいいから役立ちたかった。


 そして褒めてもらいたかった。


 ギュッとワタルの手を握った。


 慣れないけど慣れた。


「あたしのこと、助けてくれるんでしょう。ねえ早く起きてよ」


 力を込めてワタルの手を両手で握りしめた。


「ワタル、助けてよ」。



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