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006 サラぁ、なんでこのエロガキのこと止めなかったのよ

「サラぁ、なんでこのエロガキのこと、止めなかったのよ」


 気絶から覚めた木広にサラが顛末を話すと、サラが木広に叱られた。


 ベットの上に上半身を起こした木広はほぼ回復しているようだ。


「あ、あたしが怒られるの……?」


 理不尽な木広の責め句に体を僅かに強張らせながら、ワタルの方に半目を向けてきた。


 ワタルはパイプ椅子には座らずに、白い壁に軽く背をもたせ掛けて、サラの方にやや不満そうな顔を向けている。


「おれは約束は守ったじゃないか。文句を言われる筋合いはないぞ」


 責めるようなニュアンスの口調に、サラがカチンときたらしく、


「ふつう、あんなやらしことするなんて思わないわよ」


 ワタルは詰め寄られる。


「エロいことは禁止されて無かったじゃん」


「………」


 サラが無言で椅子から立ち上がり、胸の前で腕を組んでいたワタルの両手を上から押さえてから、思い切り、足を払ってきた。


 手をサラに押さえられていたから、ワタルは滑る体を途中で支える事ができずに、そのまま床にお尻から激突した。


「痛っ。なにすんのさ」


 涙目になって抗議する。お尻が痛い。


「なんか、むかつく。あんたは、しばらく喋るな」


「何で怒られないといけないのさ。木広の事を助ける為に、仕方なく女の子を傷付けてしまったんだぞ。きっと夜眠れなくなるに違いないのに、そこまでしたのに、なんで責められるのさ」


「私の事を助けてくれたのは本当に感謝しているけれど、ああいう事は、今後、いっさい、しないでほしいの」


 木広がすこし遠慮したような口調で頼んできた。ワタルはベットに両手をついて上半身を傾けて、木広に顔を近づける。


「なんでエロいことをしてはいけないんだ? 木広はエロいこと嫌いなのか?」


 木広の顔が照れて赤くなる。


 すると、隣にいるサラの顔が怒って赤くなった。


 つい木広をからかいたくなってしまった。


「それとも自分がされなかったから、面白くないのか?」


 ワタルの言葉に、木広は三日月のような笑みを浮かべる。


「馬鹿な事を」


 サラが思わず呟いて、椅子と共に後退ったと思った瞬間。。


 あっという間に木広が両手をワタルの後頭部に伸ばして、万力のようにワタルの頭を挟み込み自分の方に引っ張った。


 そしてそのまま唇を押しつけて、ワタルの口の中に舌を入れる。


 僅かに目を見開いたワタルは、それでも木広の舌の動きに答えようとして、すぐに悲鳴を上げた。


「逃げたほうがいいわよ」


 明らかに遅すぎるサラの警告を聞きながら、ワタルは木広から離れた。


 口の中に血が溢れる。


 木広がワタルの舌を咬んだのだ。


 鉄さびの味がした。


 ベットから遠ざかったワタルは、口を押さえてその場で、のたうちまわる。


「生意気ね」


 自分の唇についたワタルの血を舐め取りながら、木広がそろりとベットから立ち上がる。


 本気で怒っているようだった。


「お、お姉様?」


 サラは腰が引けそうになりながら、木広に声を掛けるのをワタルは涙目で、痛みを我慢しながら見た。


 木広の顔がすうっとサラに近づいて行った。


「まさかサラちゃんも何かされたりした?」


 やさしい口調だが、顔が無表情で怖かった。木広の怒りはサラに向かっていないにもかかわらず、サラが冷や汗を浮かべながら震えている。


「い、いえ。されてません」


 ブンブン首を横に振る。


「そう。………よかった」


 軽くサラにキスする。


「お姉様………」


 木広が前を通り過ぎて、床に転がっていたワタルの腹に片足を乗せる。


 白い下着が見えたと思った瞬間、腹が半分くらい押しつぶされた。


 ワタルが口から血を吐いた。


「ねえ、ワタルさん、あなたサラの下僕なんでしょう? だったら私の言う事も、これからは全て従いなさい。分かった?」


 ワタルは苦しみもだえながら頷いた。


 木広という女の子を完全に見誤った自分が悪いとはいえ、いきなり酷すぎる。内蔵がいくつか潰れたかも知れない。


「お姉様!」


「ん? おや? 何か痙攣している様だけど、ワタル君、どうしたの?」


 木広がそう呟いて、顔を近づけてくる。


「おい、しっかりしろ」


 サラに頬を叩かれたが、ワタルは反応する事ができない。


 ワタルは、死ぬ時はこんな感じでだんだん周りが霞んでいくんだと思った。






◇◇◇






「なんか気絶しているようだ。サラ、誰か呼んできてくれないか?」


 なんだか微妙そうな表情を浮かべた木広にそう言われて、あわてて部屋から出て人を呼びにいく。


「なあ、こいつが花蓮とヴェルンドを倒したんだよな」


 背中から木広の声が聞こえた。


「ワタルさん、あなたってホントに強いの?」


 床に血まみれで気絶しているワタルを見ていると、とても花蓮の使い魔を一撃で倒したとは想像する事ができなかった。


 ワタルは足を軽くピクピク痙攣させている。


「私はそんなに本気をだしていないのに………」


 信じられないほどのやられっぷりだった。


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