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044 その魔石について花蓮が話し始めた。


 その魔石について花蓮が話し始めた。


「この魔石は私の両親が死ぬ直前に採掘したものだ。この大きさで、ここまで完全な球体の魔石はめずらしいらしい。とは言っても、大きさや形に関係なくこの魔石はとても大切なのだ」


 花蓮がその魔石をワタルに手渡した。


「この魔石を持つと、何故か心が穏やかになる。きみはこれを持って何か感じないか?」


 ワタルは自分が魔力を感じられない事を素直に話した。


 自分で魔石を見つけられないし、その魔力を推し量ることができない。だから睡蓮に代わりをしてもらおうとしたのだった。


「そうか、まあよい。とにかくこの魔石は両親の形見みたいなものだ」


 花蓮が箱を元の場所に戻す。


「花蓮?」


 ワタルは手に持った魔石を花蓮に渡そうとする。


「ん? それがこの中にある魔石の中で一番魔力があるぞ」


 中身が入っていない箱を置き終わった花蓮をワタルはじっと見つめた。何を言うわけでもなく花蓮もこちらを見つめてくる。


「花蓮、」


 ワタルは花蓮がほんの少しだけ微笑んだような気がした。


「必要なのだろう? 少々惜しいがきみが困っているなら使ってくれ」


 こういう時、何を考えているのか読めない無表情なのは困る。


「きみの何気ない態度、私を見る時の顔付き、話している時の口調、そしていままで興味どころか存在自体器にしていなかった魔石に急に興味を見せたことを見ていれば分かる」


「まいったな。そんなにおれって分かりやすいのかな」


 ワタルは溜息をついた。


「きみは、私の事を少し考え直した方がいいのではないか?


 私はきみの事が好きなのだ。先ほど会った時から、きみがいつもと様子が違うから、少し注意してきみの事を見ていたら、きみが魔石を欲しがっていることなど、簡単に分かる」


 ワタルは花蓮の洞察力に軽く驚いた。ただ言われて納得するところもある。花蓮は鈍重や愚図では決して無く、逆にそういったのとは正反対の人間なのだ。


「それに、睡蓮に何かしたであろう?」


「うっ、やはりそれも分かってたの?」


「きみは魔族との契約には何かを差しださないといけない事は知っているだろう? 妹の言葉使いのおかしさはきみも気付いてると思うが、あれが魔族と契約した際に妹が失った代償なのだ。


 でも、さっきの妹は普通の話し方だった。何をしたのか分からないが、魔術を使えないきみができる一番可能性の高いのは無理やり言う事をきかえるような薬でも使ったのではないか?」


 全て花蓮にばれている。こんな事ならはじめから花蓮に相談していれば良かった。


「………でも、そこまで分かっているのに、なんで魔石が必要なのか訊かないの?」


 花蓮は理由も聞かずにワタルに一番大事な魔石を好きにしていいと渡してくれたのだ。その理湯が知りたかった。


「理由はきみが話したいと思った時に話をしてくれればよいと思っている。


 確かにきみが魔石を欲しがる理由は知りたいけれど、私はただ端にきみが魔石を欲しがっていると気づいたから魔石をあげようと思っただけで、きみが魔石を欲しがっている理由はあまりかまわない事だ。


 きみが困って途方に暮れた顔付きをしているのに、理由を教えてくれないと助けてやらないような自分勝手な事を私はしない」


 あっ!


 ワタルは本気で惚れそうになった。


「私はきみの事が好きだ。だから今後もきみが困っていたら出来る限りのことをする。しかしそれは私がしたいからするのだ」


 もしかしたら花蓮はいいやつなのかもと思ったが、そうじゃないことが分かった。


 花蓮はものすごくいいやつなのだ。


 ふと木広の腹黒そうな顔が思い浮かんできた。


 会社のトップとしては花蓮の方がふさわしい。花蓮の元でなら社員は一所懸命働くような気がした。魔石川商事が成長している理由の一端が分かった気がした。


「睡蓮の事はごめんなさい。後で本人に謝ります。それと、魔石が必要な理由を睡蓮に話したいから、聞いてくれないか」


「ここにはもう用は無いであろう。きみは平気かもしれないがここにいると魔力に酔ってしまう。私の部屋に行って話そう」




「………というわけで魔石がどうしても必要なんだ」 


 花蓮の部屋で、ワタルは四方の事を花蓮に全て話した。


 花蓮は黙ったまま最後まで話を聞いていた。


「少し面白くない。結局、きみは他の女の子を助ける為に悩んでいただけなのか」


「ごめん。でも放っとけないんだ。もしイヤならこれは返す」


「ばかもの。一度手放したモノを返せと言うと思うのか? それはもうキミのモノなのだからスキに使いたまえ」


「ありがとう」


「しかし、きみが他の女の子の為に困っている時だけは、さすがに助けてなんか、やりたくない。だから困っている内容次第なところがあるから、今後はきちんとその辺りを問い詰めるから、そのつもりでいてくれ」


「えっ、それって」


「よく考えたら、私ときみの間で秘密がある事が気に入らない。きみは私に全てを話し義務がある。だからこれからは何でも聞く事にする」


 あれ?


 ワタルは何だか分からないが納得いかない気持ちになった。



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