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041 サラは意識を失いながら、痙攣していた

 サラは意識を失いながら、痙攣していた


 あばれないように、タマはサラを抱きしめている。拘束具がないので、タマはその代わりをしているのだ。ロープがあったが、サラを縛るのは躊躇った。


「しっかり抱きついてて」


 本来、ワタルはサラを抱き締めたかったが、そうすると後でサラはサバイバルナイフを使ってワタルの事をさしてきそうなので、タマにサラを大人しくさせるように頼んだのだ。


 それにワタル、これからやることがある。


 その前に、睡蓮に会って裏をとる必要がある。やった後に間違っていたら話にならない。


「タマ、あと三十分くらいで落ち着くから、そのまま抱きしめていて」


 おれは言った。


「ワタルお兄ちゃん、その後はどうすればいいの?」


「その後は、落ち着いたら、放っといて構わない。ただ念のため、近くにいて。何かあったら知らせてほしい。


 それとサラは目覚めたらオレを捜すと思うけど、オレはどこに言ったのか秘密にしておいてくれ」


「どこに、行くんです?」


「四方を助けるために必要なことをしにいくのさ。」


 ワタルはそのまま部屋から出た。そして外にでる。






◇◇◇






 ワタルをあのまま遥香のところに残してきたのは間違いではないが、気になった。まさか死神に手を出すことはないと思うが、その想いとは逆で死神だからと理由でワタルは手をださないなんて事はあり得ないとも思ってしまう。


 死神は魔石を肯定する我々を卑下しているから、遥香はワタルを相手にしないと思うが、思うだけでワタルならそのくらいは何とか、してしまいそうだった。


「私はなぜ、そんなことを気にするの」


 そう言えば木広を助けてくれたら、睡蓮は自分の事を好きにしていいと、ワタルに言ったことを思い出した。


 睡蓮は湯船に顔を半分没した。


 いまになって恥ずかしくなった。


 ふと、甘ったるい臭いを感じた。いままで嗅いだことがない匂いで、あえて言うならオレンジの匂いに似ていた。


 すぐにその匂いはしなくなった。


 気のせいだったのかも知れない。


 長湯をしたのか、体が熱い。火照っていた。睡蓮は湯船から出て、冷たいシャワーを浴びた。


 始めは冷たいと感じた冷水も、しばらくすると慣れて冷たさをあまり感じなくなった。その分、心地良い。


 なんだか、さっきからワタルの事ばかり考えてしまう。


「バカみたいなの」


 そう呟いて睡蓮は体の汚れを丁寧に落としはじめた。


 しばらくして、睡蓮は下着を着け、バスタオルを巻いて風呂場から上がった。すると部屋にはワタルがいた。


 別に一緒に住んでいるんだし、黙って部屋に入ってくるくらいで怒る程、大人げなくはないが、睡蓮は自分のベットにワタルが腰を掛けているのは、気にいらなかった。


 ワタルはこちらに気づいた。


「睡蓮、ごめん、どうしても訊きたいことがあったから来ちゃった」


 笑顔でそう言われると、鼓動が早くなる。


 ………来ちゃったじゃないでしょう、こんな姿でワタル君と一緒にいる事を花蓮に知られたら、殺されるよ。


 そう思って睡蓮はワタルに、


「ど、ど、どうしてワタル様がここにいるの?」


 と言った。ワタルが自分の部屋に居ることに頭が追いついていない。だからバスタオルを体に巻き付けただけの状態で対峙していることは殆ど気づかなかった。


「とても大切な事なんだ。だから、ごめんね」


 ワタルはベットから立ち上がり、近づいてくる。


 じっと見詰められると、何故か顔が真っ赤になる。本当であれば怒らないといけない、と思うのだが怒りは、なかった。


 信じられないがちょっとした嬉しさを感じてしまっていた。瞬間、全身が熱くなり両掌に汗をかく。


 いつの間にかワタルが急接近していた。もう少しで睡蓮は体が触れ合いそうになったから、慌てて飛びずさった。


 ブワッと顔と体から汗が吹き出てくる。これではもう一度、風呂に入らないと汗臭くなる。


「睡蓮、オレの事を嫌いなのかもしれないけど、オレはスキだよ」


「えっ? い、いきなり変なこと言わないでなの。


 そんな事を言うために、私の部屋に忍び込んだの?


 別に私だって、ワタル様の事は嫌いではないの。私だってワタル様と喧嘩するつもりは元々はないの。


 別に睡蓮はワタル自信を嫌っているわけではない。


 また甘い香りがどこからかしてくる。


 何の香りだろうと思って周りを見渡そうとすると、頭がクラッとしてよろめく。


 ワタルに支えられた。


 肩をつかまれる。


 そのまま抱きしめてほしいなぁ、と思ったら、ホントに抱きしめられた。自分の手が無意識にワタルの背中に伸ばされる。


 するりとバスタオルが体から落ちる。不思議と恥ずかしくなかった。抱きしめられながらワタルの顔を見上げた。


「大切な事ってなに?」


 目を潤ませながら甘ったるい声でそう言った。


 睡蓮は抱きしめられたままベットに押し倒されてしまう。


「あんっ!」


 自分の上げた声だとは信じられない喘ぎ声だった。近くにあるワタルの顔は天井の証明で逆光になり、よく分からなかった。口元は少し笑っている気がした。


 心臓がドキドキする。


 もう何が何だか分からなくなってきた。


 ワタルが強く力を込めて抱きしめてくる。そうされると自分の体に力がはいらなくなる。


「キスしてもいい?」


 耳元でそう囁かれると全身から完全に力が抜ける。無意識に小さく頷いた。


「ワタル様、わたし・・・」


 最後まで言うことができずに何かで口をふさがれた。


 キスされた。


 そう意識した途端、浮遊感に襲われる。


 心が躍る。


 まるで魔術にかかったようだ。


 魔術!?


 そのキーワードが心に浮かんだ瞬間、ハッとする。何か、どこかがおかしい。


 しかし、再びキスをされると睡蓮は何も考えられなくなった。だから、考えるのをやめて、今のこの至福の瞬間を満喫する事に集中する」。


 またキスされた。


 ワタルの舌が入ってくると、自分の舌の向かって絡みついてくる。それに自分からも積極的に答える。


「ワタルくん・・・」


 呟いた声は悲しげだった。


 また甘い香りがした。


 三度目のキス。


 再び舌が入ってくる。舌を伝って流れてくるワタルの唾液はものすごく甘美だった。僅かばかりの量が溜まる度に飲み込んでいく、飲み込む度に体が火照る。何も考えられなくなる。


 だから口の中に何かカプセルが入ってきてもそれをはき出す事はできずにワタルの唾と一緒に飲み込んだ。


 そして意識が途切れた。


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