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024 お姉様、さっき花蓮さんがタマに言っていた事はホントなの?

「お姉様、さっき花蓮さんがタマに言っていた事はホントなの?」


 すると木広が意地悪く笑って肯定した。


「なんでそんなことを? ワタルがいれば新しい魔石発掘場のゲートの魔族を封印する事が出来るに違いないのに」


「あれを見て」


 木広はワタルと睡蓮の方を見た。


 睡蓮はかなりの使い手だった。アクアスネイクと呼ばれる使い魔を完璧に使いこなしている。ワタルが攻撃をするスキがなかった。


 ただし、妙な安心感がある。目の前ではワタルがやられ歯していないが、攻撃できずにいるにもかかわらず、ワタルが負けるとは思えなかった。防戦一方のワタルに妙な違和感があった。


「まさかワタルは手を抜いているのか」


 違和感の正体を木広に告げる。


「そうみたいね。でも凄いわよね。見ていれば分かると思うけど睡蓮は相当強いわ。それなのに手加減している余裕があるなんて」


 目の前で睡蓮の攻撃をことごとく防いでいるワタル。そしてだんだん焦って、どんどん自分の手の内を見せ続ける睡蓮。睡蓮はそこまで自分の力を見せる気はなかったと思うが、ワタルが全て防いでしまうため今は全力でワタルに向かっている。


「アクアスネイクでしたっけ、凄いわね。攻撃と防御が一体している。しかも自分のいるところ以外にも発生させて敵にぶつける事ができるとは。かなりやっかいだわ」


 サラは素直に感想を言った。もし、何も知らないで睡蓮と戦ったら、もしかしたら自分は負けるかも知れないと感じた。


「ワタルさんに感謝しないとね」


「でもだったら、なおさらワタルを花蓮に渡す意味が分からないわ」


「秘密」


 木広は意地が悪そうに笑っている。


「ちなみに、ワタルさんを花蓮に渡せば、キスしてもいいんですって? これって小学校からずっと片思いだったのがついに成就して両思いになるきっかけになると思うけど、サラちゃんどう思う?」


「お姉様、それが目的なんでしょう?」


「7割くらいはそうよ」


 木広の即答を聞いて、サラは溜息をついた。


「しかし、ワタルの本当の力がまったく見えないのは残念だわ」


 睡蓮と戦っているワタルを見ながら木広が呟いた。


「あいつの実力? なんでそんな事をお姉様は知りたがるの?」


「不安なのよ。近くに正体が分からないモノがいるとやはり落ち着かないわ。だからせめて力だけでも確認しておきたいのよ」


 木広がワタルを警戒していると、はじめて知った。軽く驚く。


 確かにワタルの正体はよく分からない。しかも言われてみれば、ワタルは自分からサラに近づいてきたのだ。それが偶然だったのかは分からない。


 しかし、サラは不思議とワタルの事を信頼している。


 ハッキリとした理由も、根拠もなかったがワタルは自分をぜったいに裏切らないと当たり前のように信じていた。だからワタルには不安ーーー女たらしの性格は絶対に許せなかったし、かなり不安だったがーーーそれ以外ではワタルに不安を抱くことはなかった。


 ………もっとも、花蓮のこともワタルは裏切らない気がするから、それが不安というば不安だった。


 自分以外にもワタルが大切にしている人眼がいることが、ちょっと不安だった。


 ………あれ? あたしけっこうワタルに不安を持ってたりする?


 なんか考えると段々不安になってきた。


「大丈夫よ。ワタルは決してあたしを裏切らないわ」


 自分に言い聞かせる。それを聞いて木広が、


「ああ、サラちゃんがそう思うのは当たり前よ。だってワタルさんのこと好きなんだから」


 といってからかってくる。


「な、な、何を言うのよ」


 木広に思いがけない事を言われて、からかわれていると分かっているが狼狽えてしまう。「だからワタルさんの事はしばらく花蓮にまかせて様子をみたい。もし信用できるようなら、きっと戻ってきてくれるよ」


「その根拠は?」


「無いわ」


「ねえ、もしワタルが戻ってこなかったら、どうするのよ?」


「別に戻ってこなくてもかまわないじゃない。いままで通りで何も変わらないわ」


 そんな事はないと否定したかっらが、木広がニヤニヤこちらを見ているので何も言わなかった。そのままそっぽを向く。


「そろそろ決着がつくみたい」


 見ると、睡蓮が疲れ切ったその場に片膝をついていた。


 呼吸が荒い。


 そんな睡蓮にワタルが近づいていき人差し指で睡蓮の額を押す。すると睡蓮がそのまま後ろに倒れてしまう。


 睡蓮はそのまま起き上がる気配がない。


「どう? これでよい?」


 結局ワタルは逃げ回り続け、睡蓮は自分の体力と魔力を使い果たしたのだ。


「木広、これで良い?」


 僅かに呼吸を荒くしているだけで、傷ひとつないワタルがサラの隣にいる木広の方を向いてそう言った。木広を見るワタルの目はちょっと責めている感じがする。


 微かに木広がたじろぐが、別にサラは平気だった。


「あんた、なにお姉様のことにらんでるのよ」


 だから木広の代わりに文句をいってやった。


「べ、別ににらんでいる訳ではないよ」


 サラが逆に睨んでやると、ワタルはそう言って困ったような顔をする。


 やはりなぜ木広がワタルに対してそんなに不安にになって警戒するのか、よくわからない。


 サラは後で、木広にきちんと確認しようと思った。



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