ordeal
「まず二人で相手をする、特に僕たちが勝つことは難しいけど、防戦なら分はある」
「私は何をするの?ただ見ておくことなんてできないからね?」
そう詰め寄るキル、しかしカイースは意に介することなく計画を話す。
「キルの特性上、長期戦は副団長の方に分がある、ただ速攻かつ一撃で決めれば勝ち目はある」
「つまり俺らは副団長の体力を減らすだけだな?」
「3人で戦うのじゃだめなの?」
「それはいけない、キルにはやって貰いたいことが有るからね」
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これは副団長のレイデンなのか?副団長の周囲と訓練場が透明の幕によって隔てられる。
しかし不味いことには代わりない。俺とカイースが中にはいるが、外にソルがいる。
ソルの援護があってこその作戦だったからな。とりあえず二人で何とかしなければならない。
カイースと協力したところで勝てるのか?
「さてソル殿、ここからは本気で行くとしましょう、我々の邪魔者は排除しないといけませんからね」
どうやら最悪の事態のようだ。
ただカイースとの作戦を変更するわけにはいかない。
ここで二人の猛攻を防ぎきらないといけない。さあどうする俺?
「副団長はあいつらの仲間なのか?」
「まあそうですね」
これは防戦一方になりそうだな。ただ防戦に移すとしてもあの大剣がほしい。
一応この領域内に有るから取りに行きたいが行けるか?
場所は俺の背後、ただこのまま振り向くのは駄目だ。
速度で言えば互角以上の相手だ。しかも手加減されているかもしれない状況で互角なのだ。
そんなのに背を向けたら死んでしまいそうだ。ならここは……
「さすがに隙だらけですよ」
考えすぎた、すでに副団長は目の前にいる。
バックステップが何とか間に合うが、距離はいまいち大剣には届かない。
しかし追撃を受ける前に相手と離れた今がチャンスだ。
再び副団長が来る前に俺は後ろを向き、剣の位置を確認したのと同時に走り出す。
すると聞き覚えのある声が響く。
「ソル伏せろォ!」
俺は考えるより先に姿勢を低くする。そして副団長の斬撃が空を切る。
カイース?計画を無駄にするのか?いや考えるな。
俺らは俺らの為にただ戦うんだ。俺は心の中で自身を奮い立たせた。
まずこの状況を打開しなければいけない。距離で言えば副団長を挟んで対角にカイースがいる。
そしてカイースは今副団長目掛けて攻撃しようとしている。
ひとまずあの声でカイースの方に副団長の意識はある。
この好機を逃すわけにはいかない、俺は後ろを確認するのと同時に大剣を振るう。
しかし副団長は俺の攻撃を躱す動作と同時にカイースに詰め寄る。
「君は裏切らないと思っていたんですがね」
距離を詰めると同時に剣先をカイースに向ける。
喉、目、確実に殺す気で副団長は攻撃を繰り出す。
カイースは躱すだけで精一杯だ。今なら加勢できるか?
俺は後ろから副団長を目掛けて切りかかる。
死角からの攻撃、しかし副団長はカイースを横に蹴り飛ばすと、その勢いで攻撃を躱す。
蹴られた衝撃でカイースはあの透明な壁にぶつかる。
俺はカイースの近くに寄り、副団長とカイースの間に立ち副団長と対峙する。
「ソル一撃でも副団長にいれれるか?」
カイースは口元を手で拭うと、そんなことをつぶやいた。
「いける気がしないが、やらなきゃいけないのだろう?」
「物わかりがいいじゃん、とりあえず僕がレイデンを使って君の指示をする、
何としてでもどうにかして副団長に一泡吹かせろ」
カイースは立ち上がる。
そして俺は片手に持っていた刀を腰の鞘に納め、大剣を両手に持ち直して構える。
「どうやら二人の相手をしなければいけないようですね、この後もう一人控えているので手短にいきましょう」
きっとキルのことを指している、ならこれは俺らにに対する挑発。
しかしカイースは冷静そうに見える。
「副団長にはここで死んで貰うとするよ、組織を裏切ってでも僕は彼女を守る」
いわばそれは決心であり、宣言でもある。
ここで副団長に勝てなきゃ意味はない。
俺らの勝率はまだゼロではない、俺らは諦めていないのだから。
(カイースは俺に指示をしてくれる)
(ソルは僕の剣となってくれるだろう)
((俺が剣で僕が目ならきっと大丈夫、だって一人で二人には勝てないから))
「ソル右に!」
掛け声と共に俺は右へ飛び出し副団長目掛けて突撃をする。
カイースは左から幕に沿って走り出す。俺が切りかかる時、副団長は剣で俺の攻撃を受ける。
金属音が響き、火花が散る中、カイースは副団長の後ろをとる。
副団長は速い、しかし逃げる場所さえなければ勝ち目はある。
カイースの剣先が副団長を捉える。副団長は俺の剣を弾き、カイースの攻撃を半身ずらして躱す。
すかさず俺は上に飛び副団長の逃げる場所がないように、わざと副団長からずらして剣を振る。
そこにカイースも剣を回し、挟むように副団長目掛けて攻撃をした。
副団長は剣で俺の攻撃をいなした、ただカイースの一撃は入った。
背後からの一撃であったが、俺の方に副団長が詰め寄ることでかすり傷程度で済まされた。
そのまま俺の剣が地面に刺さり土埃が舞う。
「いいコンビネーションです、ただこれだけではまだ勝てないですよ」
副団長は肘で俺を飛ばすと、カイースの方に向き直る。
俺は地面に剣を突き刺し耐える。いったん状況整理をしよう。
向こうでは副団長がカイースを手数で圧倒している。
カイースはギリギリで副団長の剣を捌く、が押しきられそうだ。
状況は最悪、しかもキルとは連携が取れない。
なんとしてでもここで副団長の動きを止めなければ。
カイースは副団長の剣を受けきれず遂に自分の剣を飛ばされる。
「さあここからどうするんですか?カイース殿」
カイースの後ろにはあの透明な壁、そして武器は手の届かない位置まで飛ばされる。
カイースもさっきの攻撃を受けきれず尻餅をつく形で副団長と向き合っている。
「受けとれッ」
俺は副団長目掛けて刀を投げ、大剣の剣先を副団長に向けて突進する。
副団長は刀は避け俺の突進を弾き俺との戦闘に移る。
「まだ単調さが目立ちます、もう少し技を磨かないといけませんよ」
そういって副団長は俺の剣を蹴る。
バランスを崩したところに先ほどの蹴り足を軸にし後ろ回し蹴りを俺の顎に入れる。
軽く脳震盪でも起こしたようで、俺は立ち上がれそうにない。
ただ俺が投げた刀を使い、カイースは副団長の後ろをとる。
「貴方は能力に頼り過ぎな防戦が軸の戦いをしすぎです」
そういって副団長はカイースの一撃を弾き、手に目掛けて蹴りをする。
刀は回転しカイースの後ろあたりに突き刺さる。
「さあこれでおしまいですね」
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どうして二人は見えないのだろうか。
私はこれに阻まれて中の様子がわからない。
明らかに計画外の状況、二人は大丈夫なのだろうか?
しかし今の私には信じることしかできない。私にはやるべきことがあるから。
心配は募るばかりだが、こちらも待ってるだけではいけないと切り替える。
私は一度訓練場の外に出る。そしてカイースの部屋に行き、約束のものを持ち出す。
後は二人が約束を果たすことを祈って私は訓練場へと向かった。
今回は新キャラ居ないんで参考資料はなし!
♢戦闘描写ってムズいですね...実際に体を動かしてこうかななんて考えながら書いてます(後ろ回し蹴りって以外にできるけどピンポイントを狙うのは難しいですね...)あと私事ではありますがdiscordの人達はコレに気づいていないんですよね...(いつ言おうかな...)
と言うことで5話でした!明日も投稿します!