第41話 一期三会(トリニティ・アニズム)
トリニティ・アニズム
分類 強壮魔術
コスト ダブル・ベールを取得済みであること
属性 無
1つの行動で3倍の成果を得る魔法。
プロスポーツ業界ではインフレ防止のため禁止されている。
「…んのランタンババア…!
次会ったら粉々に砕いてやる…!」
「言ってる場合じゃないでしょ!?
大丈夫なの!?」
「…平気っぽい。もうなんともねえわ」
既に痛みは引いているようだ。
しかし何事もなかったようにテストは再開された。特に部屋が荒れる程の暴れ具合ではなかったので先生は続行を可とした。
「こんなんで昼飯抜きとか無しよなー」
「てか一貴、いつの間に
あんなに魔法を使いこなしてたのね
さすが魔術の学年主席じゃん!」
「まーねー…。
なんてーか、面白いのよ」
それをそばで聞いていた曛は
一貴にお願い事を申し出た。
中身は再試験を受ける友人の勉強を教える事。
その友人とは、現在保健室で休んでいる茜音のことである。
「別に良いけど…
曛姫じゃダメなの?」
「私よりも一貴の方がいいと思うの。
あと本人の前で"姫"は無くしてほしいな」
「うーん…よし!引き受けた!」
しかし忘れてはいけない
一貴には予定が目白押しなのだ。
なんなら直近の予定としてその日の25時には
もう一度学校に行かなければならないので、
これからテスト担当の先生と打ち合わせなのだ。
しかも夏休みは黒男の手伝いがある。
「さあて、どうしたもんか」
あれこれ考えているとテストは終了した。
お昼は作った料理をそのまま食べることになっている。その後は自習だが、これと言ってやる事はない。なので夏課題の段取りがメインだ。
その少し前、グラウンドでは2組の攻撃が始まっていた。
先頭の拓哉はホームランだが続く2、3番はフライを上げてアウト。4番の冥斗が打席に立つ。
「俺らの学年はスラッガーばかり。
その中でも特に麗斗は投手もいける…!
ここで出さないのは恐らく決勝戦を狙っているな」
麗斗は内野を守っている。
どうやら勝つために体力を温存する方向に転換してきた。
「優大は9番。一貴の話をよくするという事は
恐らく…何か切り札があるな」
「麗斗は狙っている
ここで俺達を捩じ伏せるのではなく、
決勝戦で思い切り叩き潰す気だ…!
もうここしか勝ち筋はない…」
麗斗はサインを出す。
どうやら敬遠のようだ。しかし、フォワボールではなくあくまでもホームランを打たせられる球を投げるように指示した。
突然の事に驚いた冥斗だが
一つ空振りを取ると、次の球はホームランを打ち込めた。
「お、おっしゃあ!やりい!」
「(こっからだな)…ナイスバッティング!
これで…"王手"だな」
「え?まだ2点だぜ?…まあたしかに
決勝いくならある意味正解だけどな!」
しかし…なんとここから5番はツーベースのライナーで失格、6番はファーストファールフライ、7番は空振り三振で8番はセンター前ヒットで失格。残すは9番の優大だけだった。
そしてここで5組は投手交代。
出てきたのはなんと麗斗だった。
夏の暑さを考慮して作戦を変更してきた。
「悪いな優大。推薦への一手は
俺が決めさせてもらう」
「ぬかせ…」
汗が頬を伝う。初級のカーブをボール球と見切り
2球目のストレートを受けるがなんとデットボールだ。
「…!(コイツ…わざと…!?)」
「すまん!平気か?」
当然のように謝るがその瞳の奥には悪意が見える
ベンチからはデットボールで当たったように見えたので2組は決勝進出かと思った。だが優大はこれをギリギリで躱せたと言い放った。
「(やはり、策があるか!)」
ゲームが再開すると3球目をスライダーで空振りに決めてあと一つだしかし4、5球目をボールにすると麗斗は詠唱を開始した。
「(…感じる。
次の一球で仕留めるつもりなんだと)」
優大はわかっていた。
奥の手を封じるためのデットボール、
そして追い込ませたこの状況。全ては麗斗の
手中で企てられた策の一つでしかない。ならば
「これが俺の夢への第一歩!
手始めに友の首を討たせて貰おうか!
天に舞う火の鳥!」
火の鳥をキャッチャーミート目掛けて
投げ放つ!
「お前の夢は俺が阻む!
同じプロ野球選手を目指すものとして
易々と負ける訳にはいかない!
一期三会!」
バットに当たるボールが大きく燃え上がる。
振り抜けるか、振り抜かれるか。
その答えは二つの火球と一つのボールが
全て物語ってくれた。
「伸びろおおお!!!」
「落ちれええええ!!!」
2人の思念が交差し、やがてボールは高度を下げる。
"3球とも"スタンドインした。
「え!?ボールが3つに増えた!?
審判!アレなんなんすか!?」
「甲子園やプロ野球じゃ失格だが、
レギュレーションはあくまでもテスト式だ。
よって3点分と見なす!ゲームセット!」
歓喜する2組と沈む5組。
それらに拍手を贈るのは1、3、4組だった。
「まさか…あんな手を使うとはな。
だが、プロの世界は結果が全て、
推薦はお前に相応しいだろう…」
「なーにしょぼくれてんだ。
俺達まだ一年棒だろ!2年、3年もあるんだし
来年は俺のこと討ち取りゃあいいのよ!」
「フッ…それもそうだ。さすがだな、優大」
2人は固く手を握り握手を交わした。
テストも終わり、5限の自習中
一貴は家庭科のテスト担当の先生と一緒に
野上に何があったのか打ち上げた。
「…なるほど。状況はよくわかった
実はこの手の話に詳しい人物が居て、それが…」
「はい!私という訳です。
いやー、担当が違うと会わないね」
「遥秋先生やないですか。お久しぶりですよねー」
街灯のような頭をした不気味な女の怪物。
遥秋は以前より自前で調査していたらしく、
教育委員会の方でもそれらの存在を脅威とみなしている。
「筑前君達が会ったのは(レディ・ランタン)。
女の異形だね」
「異形って呼んでるんですね」
「学校の七不思議の体現化として、僕らは
(七不思議の異形)…略して異形と呼んでるよ」
レディ・ランタンは怪しく輝く燈で人のエレメントを操作するという。一貴を苦しめた術の一つがそれに当てはまり、氷のエレメントコアを握り潰す…要は心臓を強く握り締めたようなものだ。
「あいつはエレメントに干渉する術を得意とする。
遠かれ近かれ、攻撃は不可だろうね。
銃を構えたって、彼女は仕組みに干渉するんだ」
「どこかの城の主人みたいな事するんだな。
なんつーか、すげー魔術師って感じ」
「それもそうかもね
恐らく彼女は元々高名な魔術師だった可能性が
とても高いんだ」
打ち合わせの結果
結局、一貴はいちいち帰るのを面倒と捉え学校に泊まることにした。
閲覧いただきありがとうございます!
さて、トリニティ・アニズムとやら。
私なら1日の出勤で3日分の給料がほしいです




