第34話 通常攻撃魔法(アタック・オプション)
アタック・オプション
分類 基礎攻撃
コスト なし
属性 無
基礎攻撃魔法のひとつ(オプション)は
様々な形の護衛を出す魔法だ。
剣のオプションなら斬撃、銃のオプションなら
射撃を行ってくれる。身の回りの世話を行うモデルも
存在するようだ。
学校閉鎖が終わって数週間が経つ。
カレンダーは7月の始まりを伝えていた。
再び始まった学校生活にも慣れ始めて、
壊された校舎も段々と補修が終わってきていた。
しかしその間、勝だけは1日も教室に入らなかった。野上の計らいで別室で自習ということにして
みんなと顔を合わせないようになっている。
6月も終わる頃には机は撤去され、退学を喰らったなんて噂も回っていた。
「よし!次!」
今日も炎天下の中校庭では魔術の練習が行われている。基礎攻撃魔法を放っているが、誰一人としてアーツを生成できた者はいなかった。
火属性の船波はエレメントを使っていくたびに
暑さに対して耐性が付いたと言っている。
逆に一貴はさっそく夏バテしてしまっていた。
「うへぇ…あつ〜…気温35度とか死ねる…」
「うーん、昔も俺はそう思い込むはずなんだけど
なんか今年は全然平気なんだよな」
自分の番が終わると一貴は氷の塊を生み出して
涼をとっていた。なんというか、エレメントに
かなり大きく影響されているように見える。
その日の放課後。
久しぶりの通常授業に痺れを切らしたか
帰りにバーキャスに寄ることになった。
「なんかさー、ひっさしぶりに
普通の日って感じだったよなあ。」
「まあ仕方ねえよ。
ただ心配なのは勝だけどな」
「もうアイツに関わるのやめとけて。
俺たちを殺しかけた連中の一員とか怖すぎ」
ストリートモールの中にはレストラン街がある。
上階層になるほど高級レストランだが、
下階層は至って普通のフードコートだ。
平日なので人は少なくガラリとしている。
「いらっしゃいませ、ご注文をどうぞ」
「クリムゾンブレスバーガーのセットで。
サイドはドラポテでドリンクはラムネ。」
「俺チーズブレスバーガーのセット。
サイドはポテステ(ポテトのステーキ)で
ドリンクは烏龍茶!」
「かしこまりました」
クリムゾンブレスバーガーのスパイシーな
甘辛ダレが食欲を倍増させ、それを牛豚のミンチ
で作られたパティが満たす。甘辛に炒めた青椒肉絲と挟まれたレタスや
トマトがなくなる水分を補充するのだ。
美味い、美味すぎるっ!
チーズブレスバーガーにかかるチーズは
チェダー、ゴーダ、ゾーラの3種類。
それらを分厚いパティにどろりとぶっかけると
それを守るように下のパティは少し大きくする。
そして上はシーザーサラダになっている。
伸びるチーズが堪らないっ!
「ああー!豪遊!たまんねー!」
「だな、後店ん中ではお静かに」
ある程度食べ終えると丘咲からは攫われた後のことを聞かれた。前々から聞かれていたからウンザリしていたが腹も膨れると、そんな事は正直どうでも良くなっていた。
「結局勝はあの後姿を忽然と消していた…
と、いうより暫く行方不明になってたのか」
「まあね。そこからどうしたかは知らないけど
どうにか警察の包囲を抜けたらしいよ」
「…なんだろーなー。
なんでそんなに暴走族にこだわるのかな、アイツ」
「それがな、ちょっと深い理由がある…って
それはもう前に説明したよな」
「ケツ言わせてもらうと、まあ金目と権力に逆らえなかった親父さんの事業の撤退が余りも呆気なかったから失望した。でしょ」
一貴からすれば、正直この話はもうしたく無い。
あの場でただ1人真実を知った以上はあまり深掘りしてほしく無いしされたくない。
「明日はどよーびだー、
俺は釣りにでもいってくるかなー」
「お前釣りなんてやってたんだな。
今の旬とかわかるわけ?」
「シーバス限定としてマダイとかクロダイかな
ま、調理しないからリリース前提だけどね」
ここで明日は朝から準備したいから
里流が今日はもう切り上げようと動いた。
バーガーショップから出て別れると
一貴はある事に気付いた。
最近水ばかり飲んでいたせいか飲んだラムネが
異様に美味しく感じた。どう言うわけか今まで炭酸ジュースばかり飲んでいたのに水ばかり好むようになっている。
一方で野上はランカーキラーモーターズの本社に来ていた。営業は再開しており、受注している修理の作業をメインに事業は進んでいた。
「こんちはー…っす。」
「突然で悪いが、代表はいるかな」
「…呼んできやす」
受付のクルーは怯えたような、何処か恨みを抱くような表情で後ろに下がっていった。
やがて社長の鬼島が出てくると、奥の会議室に案内された。
「どのツラ下げて来やがった…
オメーはもう客でも何でもねえぞ」
「そんな釣れないことを言うな…
それに、聞きたい事は修理じゃない
勝はどうした。」
「辞めたよ…自主退職だ
責任を感じるからだとよ」
鬼島は眉間をピクリとさせながら低い声で
ハッキリと呟いた。怒りを抑えるだけでも
手一杯なのだ。うっかり護衛を
出してしまったが野上は動じない
騒動が終わった翌日…
用事を終わらせて本社に戻った時には
既に休憩室は怪我人で一杯だった。
連絡は取っており、立ち塞ぎからの出戻りの班には怪我人の応急処置をさせていた。
重症を負っても救急車は呼べない。
今の自分達に置かれている状況で呼べる筈が無い
だが魔法がある。だから命を落とす者はいなかった。
勝も救護班として立ち会い、出血を止めたり
水の買い出しに勤しんだ。その様子を見て誰も
恨むような感情を抱く者はいなかった。
「…ボス…俺…仕事辞めます
今日の騒動で親の目が厳しくなりましたし
なにしろ…これ以上…は…」
「…泣くな。お前は悪くねえよ…
寧ろ俺達の行動に今までよくついて来てくれた
誰も恨まないし責めもしない。行ってこい」
「今までありがとうございました…」
勝の額を大粒の涙が伝うのが見えた。
短い間だったが、身を粉にして働いてくれた。
仕事が好きでいつも始業に遅れなかった。
思い出すだけで腹が立つ。
勝が小学生の頃によく遊び相手に仕事を見せては
やって見せて色々と触れ合ったものだ。
それを一方的に…
とはいえ鬼島もひとりの大人。
ここで騒ぎ立てるのは違うとわかっている。
だが最早限界だった。
野上は神妙な顔つきで言葉を放った。
「生徒の1人に無茶をさせたのは
わざと本拠地に潜ってもらい暴れてもらう為」
だと言う。しかも勝には無理矢理協力してもらう形で、だった。
「まさか…
俺達の腹を探るために利用したってのか!?」
「違う!あくまで俺は顧客という立場だ。
アンタらだって…本当は国のやり方が許せない
だけで、魔動車の導入に賛成してるはずだ!
どうして生徒を犠牲にするゲームなんかに
首を突っ込むんだ!」
「それとこれとは話が違えだろ!
綺麗事ばかり吐くのも大概にしやがれ!」
「ああ何度だって吐いてやる!
お前達暴走族が立派なモーターショップに
なるまで延々とな!」
しかし卿は一瞬で冷めた。
この場で激しくぶつかっても復興が延びるだけ、
ましてや戦える人間なんて自分を含めて
誰もいなかったのだ。
「…ガソリンは入れてやる。もう帰ってくれ」
「待ってくれ、"ゲーム"について聞かせて
欲しいことがある。今日はその為に来たんだ」
「答える気にならねえ。
俺は別件で忙しいんだ、じゃあな」
野上のトレノをスタンドへ案内すると
ガソリンを注入し、そのまま見送った。
「ボス、次の遠征なんすげと…
予定を変更して欲しいとのことです」
「構わん、向こうの好きにさせろ。
どのみちもう"アレ"に頼る他無かったんだ
もう俺たちは期限を意識する必要なんか
無くなったって訳さ」
「待ってろよ…アヴァロード大鉱石とやら…!」
閲覧いただきありがとうございます!
社員を守る為の決断とやりたい事のための決別。
前社長と鬼島もまた苦悩に悩まされる日々なのです。
重圧の中、大人の振る舞いをする経営者ってすごいな…




