第32話 ミスティカ・アーツ
ミスティカ・アーツとは
魔法を使った際に稀に出てくる
魔素で作られたアイテムである。
また、それらを使い魔力を込める事で
ノーコストで魔法が使えるのだ。
なお人口的に作ることも可能だが
性能は落ちる。運良くできたらラッキーだ。
一貴と野上を背後に取った精鋭の男。
またとないチャンスに恵まれたか、銃を構える。
「(馬鹿め、悪党に背中を向けるか!)」
為らないも無く引き金を2発引く。
ズドン!ズドン!と音がなり一貴振り返る。
「…!な、なぁ…なんだと…」
「筑前…おまえ…」
弾丸は二人の目の前で止まっていた…
いや、凍っていた。
精鋭の男は腰を抜かして後退りする。
これにも懲りずにまだ攻撃する悪党に嫌気が
差し切っていた一貴には激薬。野上も呆れていた。
「てめえ…何故撃った…」
冷気を溢れ出しながらコツンと音を立てて迫る。
「ぁ…ぁぁ…ゆ、許してくれ…!
これはアレだ、魔が刺したとかそういう」
「魔が刺したら人殺していいってのか!?
今の俺ならお前を永遠に氷付けにできるんだぞ!」
「ひいいいい!!!すいませんでしたあ!!!」
氷の魔力を込めて蹴りを入れる瞬間
「やめろ筑前!魔法を暴力に使うんじゃない!」
野上の一言で我に帰った。
そうだ。
ここで跪くこの男に蹴りを入れても
鬼島達のような暴走族となんら変わりない。
成り下がる意味もない。
「気持ちはわかる。だが抑えてくれ
お前まで"そちら側"になることない」
そういうと拳銃だけ氷漬けにしてその場を去った
帰り道のトレノの中で俯く一貴に
よくやった、と頭を撫でると
お礼に自分の行きつけの店に招待すると言った。
「それって一見さんお断りー、とかの?」
「そうだ。なんなら丘咲や福吉も誘って良いぞ」
「ふーん…」
翌日…
事情聴取で一貴たちは学校に招集された。
「おはよー」「ういーっす」「おー、おつかれさーん」
制服はスラックスだけ傷や汚れが残っていて
上着だけ綺麗なのでやや違和感がある。
「まー…なんとか帰れたな。
マジで起きたらトラックの中は
生きた心地がしなかったわ」
「でも先生とカズのお陰でなんとかなったわな。
ホントありがとな」
「なーに、俺からすればわざわざ作戦にのって
くれたオメーらにお礼を言うさ」
小、中、高校。近隣を巻き込んで
1週間は学校閉鎖だ。当然だが事件の余波として
これからまた再犯の可能性もある。
一貴たちが学校に行ったのはあくまでも
警察の管轄というものだ。
「は〜…優勝した後のプロ野球チームって
こんな気分なんだろーなー…まだ眠いわ…」
「しかも俺らの相手はマスコミじゃなくて
警察ってな。ま、変に詰められないだけマシか」
会議室で待っていると
野上と日登がコーヒーを淹れてくれた。
「ほらっ、飲めよ!
今回ばかりはサービスしなくちゃな」
「「「おー!あざーす!」」」
ある意味モーニングコーヒー。
一貴たちにとっては初めての経験だ。
「警察署の人達が来るまであと数十分は掛かる。
騒がない程度に待っててくれ」
それぞれで雑談してこれまでを語り合った。
「カズ、今度さー魔術いろいろ教えてくれん?
なんてーか…こう言う時に役立つやつ」
「ならまずカース・エッジをもっと鍛えた方が良いんよな、冥斗のやつはリーチがな…
ま、今度そこいら教えるわ!」
「サンキュー!助かるわ!」
ここで修太ある事を聞いた。
どうして一貴は召喚獣を出さないのか。
事件が起きてから一才召喚していない以上、
戦力となる筈だったのに。
「そりゃあ…"竜王類"だし
得体の知れない何かが出て混乱したら
不味いよなあって思ってさ」
「でも王類は貴重なんだろ?
なんで興味が湧かねえんだろうってなるよ」
「それは個人の問題だし…」
「…?へんなのー。ま、いいか」
やがて警察署の人が入って事情聴取が始まる。
先生も立ち会う中、洗いざらい全て話をした。
逃走のために使ったバイクはいずれも商品で
修理持ち込みという訳ではなかった模様。
「あのバイクは…まあ、我々が言うのも
ナンですけども素晴らしい出来栄えとしか
言えないです。白バイでも悠に逃れられる
くらいスピードを出す効率の良さが目立ったよ」
「なるほど…確かにデザインからして雰囲気は
ありましたが…いやはやそんな凄い物とは」
逃走の要になった盗んだバイク。
警察は処分に困っていたが然るべく手続きを
踏んでいるそうだ。
更に数日後…
一貴は丘咲と福吉を朝学校前に集合させた。
野上の言ったとおり、とある店に招待した
というものである。
「また休み中かよ!?」
「しょーがねーよ、大体ダイなんて
いつもは部活クソ忙しいのにわざわざな」
「いーよ…まだ10代なのに家の中でゴロゴロ
してたらストレス溜まってイライラするし」
雑談を交わしていると先生が来た。
「よし!全員揃ったな。
まずは…丘咲、福吉、休み中にありがとな」
「まあ…暇してましたし…」
「ともかく出発しようか
電車使うが、定期あるならそれ使ってくれ」
しかし誰一人と目的地方面までの距離を
有する定期券を持っていなかった。
3人とも逆方向で中学もほぼ隣同士の
区域だった。ちょっとがっかりする野上だったが
流石に考えが甘かったと頭をさする。
電車は地下鉄に突入する。
3駅目で降りて地上に出ると
そこはかなり都市部の中でも
落ち着いた場所になっており、歩道も広く
歩きやすい道が続いていた。
「へぇ〜…都市部から離れるとこんな感じか」
「博多あたりならオメーもいくだろw」
「いや…電車で往復したら1500円は降らんぞ?
そんなにボカスカ行けねーっての」
街中にはおしゃれ飲食店がポツポツ並ぶ
その中に一際アンティークでおしゃれな
お店の中に入った。
「いらっしゃい、あ!野上さん!」
「お久しぶりです、夜咲さん
この子達は生徒なんで招待客ですよ」
「そうなんすねー、
まあゆっくりしていってくださいよ!」
店の中はコンセプトカフェみたいな雰囲気だ。
しかしカウンター席以外に座る場所はない。
だが問題は店内の品揃えだ。
とてもじゃないがファンタジー世界でしか
見たことのない装飾品がずらりと並んでいる。
一貴たちは物珍しさ視界を奪われていく。
「なんだこれ…どういう技術で作ってんだ…?」
「触っていーよ。気になるっしょ」
一貴が触れたのは赤色の綺麗なガラス細工。
龍の形をしており、とても厨二心溢れるデザインだ。爪先や翼にかけて黒いグラデーションが
掛かっていてかっこいい!
「うわ!おもちゃの剣だ!
懐かしーなー、魔神ライダーのおもちゃみてーだ」
…ところが鞘を抜くとバリバリの業物だった。
思わずびっくりして納刀する里流であった。
「これ…部活とかで使えそうだな。
皮も厚いけど変にゴワゴワしてないし…」
バッテ(バッティンググローブ)と勘違いしたか、
手袋をとって吟味する。こっそり付けてみたが
これが驚くほど手に馴染むし圧迫感がない。
「よし、注目!突然だが課外授業だ」
3人の目が一気に冷める。
「今お前達が手に取った物は魔術を極めた者が、
それらを更に高めるためだったり継承するために
形に残した物だ。(ミスティカ・アーツ)と呼ばれている」
「つまりここの商品て身につけたり、
プリファールで反応を起こすとそれ専用の
魔法がつかえることになるんですかー?」
「そうだ、更に形にして残すから
様々なメリットがある。例えば魔力切れを
起こした時なんかは、このアーツに頼れば
無償で使えるからな」
それ以外にもメリットは存在したが
野上としてはあくまでも興味を持ってもらう事が
本命である。あとは自由に店内を散策させた。
閲覧いただきありがとうございます!
何も知らなかった、そして自分はまだ何もわかっていない。
そんな一貴もこれからどんどん強くなると言うわけなのです。




