第2話 「センドワール・ワード」
〜センドワール〜
言葉を…というより音を発生させずに意思疎通を行いたいならこの魔法を取得する事だ。少し集中力を使うが、いつでも情報を交換できる。
伝えたい言葉を思い浮かべたら相手を思い浮かべ
文字を紙に書くとその言葉そのまま相手の頭に
浮かんでくる。これぞセンドワールだ。
一つ留意点がある。それはその時思ったことが
ほぼ伝わるので、愚痴やいやらしい言葉は
使わないように。書いてなくても伝わるからだ。
昨限の授業のことが忘れられない。
ボールが太陽に変わった衝撃が脳裏に焼き付いて
離れないのだ。
「俺だって…ふんっ…!」
一貴が魔力を込めてボールを浮かし、
火球に変える。しかし、線香花火のような輝きを放った
と思えばすぐに落下して元通りだ。
「はあ、はあ…ダメか…」
「一貴よー、無理なんだって。大体さ野上先生は
保体の指導もやるから素の体力が違いすぎるんだよ。」
魔術科担当兼保健・体育教員の野上鶯我は学校内でも特に鬼教師として知られている。軍隊出身で時間に厳しいのと、以前は怒声をあげた衝撃で窓ガラスにヒビが入ったくらいだ。
といっても、カツアゲしていた生徒を本気で
怒ったからなので特に問題ではなかったが。
「カズー、明日の数学の課題なんだったー?」
「あぁ?ワークの16ページの問題だろ?」
「それそれ!答えわかる?」
「わかんねえよ!5月から関数使われたら死ぬわw」
二限、三限、と時間を超えて四限の真ん中辺り。
「…ではこの問題を丘咲!…ん?おい、丘咲。」
「おい…起きろって…」
「んが!?やばっ、寝てたわ」
居眠りをしていたのは隣席の友達、
丘咲里流だ。
「丘咲、遣隋使の目的を応えろ。」
「え!?えーと…
(やばいって、いきなりわかるかよ!?)」
そんな時、一貴が頬をあげてニヤリと笑う。
あたふたしていた里流を眺めて何かを考えていたら、突然何かを閃いたように答えを吐いた。
「…随は当初、アジアで最高の力を持つ国。
詰まるところ、謁見は地位の確立にあたります。」
「お、おう!正解だ!なんだ、ちゃんと
聞いていたのか…全く…」
「(なんで突然閃いたんだろう…?)」
終了のチャイムが鳴る。
持ってきたお弁当や購買のパンを机の上に
並べてはスマホをいじり出した。
「なあカズ、あのさ。」
「なぜか遣隋使の目的がわかった。だろ?」
「そうそう…え、なんでわかんの!?」
「そりゃあもちろん魔術の教科書を
読んだからに決まってんだろ。ほれ、ここ。」
一貴が教科書を開くとそこには基礎魔術の一種
「センドワール・ワード」が載っている。基礎的な使い方は
テレパシーで脳内に文を送る事だが、応用すれば
石や水面に文字を映し出せるようにもなれるとか。
「ノガ先が出した太陽が忘れられなくってよ、
ちょっと予習してたんだわ。」
「へえ〜…カズがそこまでビビってたとは。」
「るせーよ。大体あそこにいたメンツで
アレに対抗できるやついねーだろ。
むしろセンドワールすら知らなかったってのに。」
試しにもう一度やってくれと
里流に念を送ってみる。しかし…
「…え?なんこれ?w」
「ん!?俺今明日の昼飯は学食って言ったけど?」
「いや…俺には今女装したノガ先が映ったぞw」
「ブフォッwおまwキショ過ぎんだろ!www」
失敗だ。伝えたい言葉よりもふと思い出した
日常の雑念が強く出てしまったようだ。
むしゃむしゃと昼ごはんを食べながら
スマホをいじっていると福吉優大が勢いよく教室の扉を開けて入ってきた。
「大変だ!二年の先輩が刺された!」
「え…どゆこと…?」
「言葉通りの意味だよ!しかも犯人は…」
優大が放った言葉に教室にいた殆どが戦慄する。
なんと犯人は刺された先輩を攫い理科室に逃げたようだ。
放送が入る。野上の声だ。
「ただいま、学校内に不審な人物が
入り込んでいます。生徒の皆さんは
直ちに教室に戻り、担任の指示を待ってください」
「ダイ!何があったんだよ!?」
「お、俺…怖くて何もできなかった…」
「それはいいから…!てか、犯人ってどんな奴?」
「人だった。黒いレザージャケットを着た
2メートルくらいの大男だったよ…」
入学して数ヶ月。
まさかこんな事件が起ころうとは。
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