第25話 「ゆとりを誘う音(オルゴール・ヘルサイズ)」
オルゴール・ヘルサイズ
分類 魔導呪術
コスト 楽器(精製条件は問わない)
属性 闇
思わず油断するほどしんみりとした音を奏でる魔導呪術。
なお油断する呪いを掛けるといった類である。
思っているより体力を消耗しないので、人によっては
油断させながら何かもう一つ行動するのも一つの案となる。
「…捉えられた者がどこに向かうのか…
そんな事を聞いてどうするつもりかな?」
「黒男以外にも奥の部屋へ連れ去られた者が
居ますが、それらの素性に付いて我々は知らない。知りたくなるのは知識人として当然かと」
「知らない方が良いとしても?」
「何を言われても、ですよ」
カラーレスビルのオフィスルーム。
昼休みにて
課長の祈然左京は寛いでいる所に槍を刺されるような質問が飛んできた。連れ去られた人間のことを聞いて、まるで私は今後貴方を裏切ります、
なんて言っているようなものだったから尚更。
「答えられないようでしたら、流石に入れ込みませんよ。好奇心一つで左京さんが追われたら僕が困りますし」
「そうか、なら聞かないでくれ」
「失礼しました」
上路間明技は知りたかった。
どうして人攫いで点数が稼げるゲームなんてものを運営するのか。信頼できる左京なら何か話してくれると思っていたがそうも行かなかった。
一方でトラックの中、一貴は皆を起こすと
状況を把握する為に持っていたスマホで位置を
調べたり何があったのかを報告した。
「…そっか、2組も襲撃にあったのか
でもトラックは一台でここにいるのは先生と
俺達1年のみ、なら2年以上の生徒は丸っきり
無視みたいな感じだな」
「とりあえず状況はわかった。
そういえば1組の魔術科はどこまで進んだ?」
「召喚術の所までは行ったわ、
でも出してはいないな。そもそも原則禁止だし」
4〜5月の科目は主に基礎魔術、攻撃汎用、
生活、歴史のごく一部に召喚があった。
なので予習済みの一貴以外はほぼ同じくらいだ。
「先生はなんか使えんの?
こういう状況を打破できる何かみたいな」
「うーむ…(アルティメット・ハイペリオン)で
10人乗りのマイクロバスなら出せるぞ。」
「おお…ずっごいありかたい!
後は元になる乗り物がいるけど」
「なら全然問題ないな。勝の本拠地は自動車工場だし、
寧ろソレ系の物がゴロゴロあるだろ」
脱出のためのマシンは用意できた。
無論召喚獣でも良かったが鈍足のモンスターが
足を引っ張ってしまう。バスを出せる人物が
いるのはありがたい。
「免許ってやっぱいるわな…
エンストありきで一足じゃダメだわ」
「え?お前無免したの?w」
「あ…やっぱナンデモナイデス…」
先生もドン引きする中次の手段が選ばれる。
すぐに逃げる為にマシンの強奪は必須だが、
ここで問題が浮かんだ。
勝のことで皆の顔に曇りが出てきた。
放っておくでも問題はないが、このままだと
死傷者が出ても目的次第で人を攫う可能性がある。そこでまとめとしてはできる限りの情報を持ち帰る事にした。
「危険は承知だ。
選択肢を増やしておきたいから全員でいこう」
「よっしゃ!勝の秘密をダシにすれば
今回の事件は解決できるも当然よ!」
「あくまでも悪事の脱解と被害の蔓延を防止するのが
目的だからな。変にイジるなよ」
「冥斗がそう言ってくれるなんてな。
やっぱ教室がギスギスすんのは嫌だしなー」
トラックが原則すると当たりが暗くなる。
やがて停車したとおもったら足音がした。
「カズ…!トラックが停まっちまったみたいだぞ」
「心配すんなって、もう脱出経路はしけたよい」
運転席から足音が迫る、こちらへ向かう足音だ。
ガチャ…と扉を開けると
積み荷の中は間抜けの空になっていた。
「なんだと!?」
「どうした!?その反応はまさか…!」
一貴達が居ない。逃げられたと思ったその時
背後から思い切り鈍器のような物で殴られた。
ばたりと倒れた暴走族を後に動き出そうとするが
「…オイオイ、痛えじゃねかよ」
「!?…違う、幻だ!みんな気をつけろ!」
暴走族の幻体がドロドロの水銀に変わって蒸発する。
(エンター・ディベロップ)で先に偵察しに来たようだ。
「…オイオイ、自分達の状況解ってんのか?」
「ははっ、ピラニア攫っといて何言ってんだ」
「おーおー…威勢良いなぁ
だったらたっぷりとシメ上げてやるか!」
冥斗と一貴で前線を担う。
「(カース・エッジ)!」
「(アイス・アーツ)!」
一貴以外の生徒は武装するとなるとカース・エッジ以外に手段がない。(アーツ)は武装品を出す基礎魔法だがそこまで科目が進んでいないようだ。
「(バースト・バレット)散弾撃ち!」
「(アイス・ロッカー)!」
一同を襲う攻撃を懸命にガードする。
アイス・ロッカーでできた氷山を華麗に
(エアリル・ウォーカー)を使いながら移動し、
半ば無理矢理にでも短期決戦の為に近接で
氷結攻撃を決める。
「筑前君は…もう飛び級できそうなくらい
実力が備わっているのだな…」
「でも平然と問題行動しますよ」
「やっぱ今の発言無し」
「はあっ!」
「うおっ、衝撃波飛ばせるとは…ってん?」
闇のエレメントで衝撃波を出すも強すぎて
自分がぶっ飛んでしまっている。
「あいたー!…」
「あーあー…しょうがねえなぁ…」
一貴が冥斗に向けて意識を集中すると
氷のパワーマリスタルを自分の体から抽出して
冥斗の体から闇のパワーマリスタルと交換した。
「ん?なんか今一貴の何かを理解できたような」
「こっちのは…まだ未熟だな。冥斗!
アイス・シューターで遠距離銃撃戦だ!」
「がってんしょうち!」
相手の属性の核心であるマリスタルを
自分の物と交換する(エレメント・スワップ)だ。
しかし相手の魔術の熟練値に応じて自身の能力値も変わってしまう。
「すご!魔法ってこんな簡単に使えるのか!」
「あー!もう!リーチクソだろ!このエッジ!」
とはいえ戦いはサマにはなった。
「なかなか…やるじゃねえか…!」
「へっ!大人相手でも容赦しねえぞ!」
リーチの無いカース・エッジは(ハート・ロンド)で出したアドレナリンを魔素に変えた付け焼き刃に変えて補っていた。なるべく致命傷を受けない為にも(エクシード・スピリット)で的確にカウンターの刃を振るう。
「ガキの癖に…なんてバトルセンスだよっ…!」
「(カウンターが様になっている…まさか!?)」
わざとぶつけ合わせるような剣戟に疑いが掛かる。一貴は薄々嵌られていると悟ったが、だからと言って逃げ筋が無い。
後ろでは氷山に隠れつつアイス・シューターを二丁拳銃で撃ちまくる冥斗がいる。更に後ろでは魔力供給で的確にタイミングを見計らう他の皆が焦ったそうに構えている。
皆薄々気付いていた。
今自分達は時間稼ぎをされている。
圧倒的な力で捩じ伏せるために、その準備をしているのだと。
「…みんな、相談がある
二組のメンバーは、このまま一貴に続いて
情報を探りに行ってほしい」
「そんな!さっきの話し合い忘れたかよ!?
全員で行動しなきゃって…」
「全員で動くからドツボにハマるんだ。
向こうはおそらく"誰一人油断しない"…!
全員動けばそれだけ全滅のリスクは高いんだ
だからやっぱり分散しよう。それがいい」
少しの静寂が訪れる。
しかしやがて全員が頷いた。このままジリ貧されるくらいなら少しでも可能性を高めようと。
「先生は一組の子達を見ます。
何かあったらすぐ抜け出す事、いいですね」
「わかってる、皆で必ず生きてここを出よう!」
閲覧いただきありがとうございます!
(マリスタル)?と思われたかもしれませんが
今後の展開で明らかにします。暫しお待ちを。




