第15話 「ダンス・ドール」
〜ダンス・ドール〜
ダンスとは心の喜びである。だが人はポーズが
魅力的なものである程魅了されるのだ。
ダンス・ドールを使うと表現の最後に神秘的な
魅力を付けることができる。
例えばボクシングをする時に、ジャブで牽制して
ストレートを決める流れがあるとする。それを
わざと外して本命のアッパーで決めるとしよう。
あとは流れを作る中で魔力の流れを体に纏い
タイミングよくアッパーを決めるだけ。
この時に重要なのが結末でどうなって欲しいのかだ。当然決まらない時もあるが表現することが
ミソである。ちなみに名人にもなるとスパルタン・ライフと組み合わせる猛者がいるらしい
宿題を終えるともう就寝時間だ。
モニムを開いてお気に入りの投稿者の動画を
寝そべって見ていれば1日が終わる。
「そーいや勝のやつ事件以降全然学校こねーな
風邪なんか引くようなやつじゃねーが…」
勝はあれから立ち直れていない
野上が送ったあと、食事もあまり摂れていないようだ。精神的にもあまり良い状態じゃ無い。
「ぅぅ………」
今でも幻聴、幻覚が彼をたまに襲う。
もはや今までの生活が嘘みたいだ。
ストレスで髪を掻きむしっては爪を噛む毎日は
もはや世間を舐め切った目で見てた日々を
虚無に帰したかのよう。
「野上ぃ…先公の分際で……覚えてろ…!」
明くる朝
「おはー」「おざざー」
今日も今日とて暑苦しい電車内は昨日に比べて
冷房の効き目が強くなったように感じる。
「(おわ!明日から梅雨入りだとよ!
チャリ用のレインコート潜ませとくか)」
「(あー降った時に限ってねーんよなw)」
一限の英語の単語テストの為に二人とも
会話を最低限に済ませては単語帳と睨めっこだ。
電車から自転車に乗り換える時に
一貴はデオドラントを買う為にコンビニに
寄ることにした。丘咲とは離れることにする。
「ありがとうございましたー」
「さてと、早速使うか…」
駐輪場で開封しているとふと思い出す言葉がある
「結局、みんな強い"力"の言いなりだ。
そんな中でもお前達は道を切り拓いた。
力を屈服させる最優の手段は力だけだ。
先生が言うのもなんだが、そんなもんだ」
昨日の会話の最後に野上が放った言葉を思う。
なぜかわからないが"強い力が欲しい"という
気持ちがふつふつと湧き上がるのだ。
2限終了後の職員室にて
野上は急用で授業を代わってもらうことになった
「野上先生…ホントにいいんですね?」
「ああ、悪いがやっといてくれ
じゃ、ちょっと行ってくるわ」
三限の体育にて…
「はーいちゅうもーく!
体力測定も無事終わって新入生最初のカリキュラムが始まります!種目はダンスです!」
「ダンス!?お、おれ音ゲーなら得意!」
「バカw矢印踏む授業なんてあるかよw」
そう言った矢先に大型のプロジェクターに
映ったのはダンスゲームの映像だ。
「えー、皆さんにはこのダンサーを見本に
踊ってもらいます!まずは一通りに流しますねー」
見覚えのある映像。
なんとゲームの画面がそのまんま教材になった。
「「「音ゲーだ!?」」」
「ポーズも決める時決めないと、
攻撃を放ちますからね!ではスタート!」
「「「ふ っ ざ け ん な や あ !」」」
デスゲームならぬデスレッスンが始まった。
足の踏み方は譜面が流れてくるが
上半身はガッチガチになりがちだ。
いかにも羞恥心を見せて動きが鈍った生徒が
先生の目にとまる。
「(まずい…!マッチーが睨まれた…!)」
先生は新西に視線を向ける、恥ずかしさで
足がふらついた隙を狙ってショットを放つ。
「きゃ!?」
「野郎…!マジで手ぇ出しやがった!」
「バカが!俺達生徒も魔法使えんの忘れたか!
みんなやるぜ!先生を総リンチだ!」
「おう!」
しかし先生もそんな事はわかりきっている。
生徒が体育館に入る前には既に
(プレッシャー・スタジアム)が仕組まれていた。
「ぉ、重い…」「クソが…」
一貴達は全員重圧の檻に閉じ込められた。
「嫌ならしっかりとやりぬくことだ!
言っとくが授業が終わったら記憶は消してやる」
「舐めやがって…!」
しかしここで一貴は先生の前に出て提言した。
「先生、一つ相談が。
せっかくですし、ダンスバトルなんかどうです?」
「先生に踊って欲しい、と?構いませんよ」
「では決まりですね。曲は自由!
俺は(rising someday)で行かせてもらいます」
「いいですよ…」
しかし先生はこれこそ狙いだった。
(ダンサー・ドール)を使えば簡単に黙らせられる。
「ほほう…一年棒にもデキる奴がいたのか。
とはいえ先生の言う事は従った方が
身のためなのになあ!」
一貴はダンサー・ドールを知らない。
だが"場数"を踏んでいるからこそどうすれば
良いのかが自然とわかってくる。
つまりこの瞬間"ダンスで人を魅了する魔法がある"
と勘づいた。
ダンスとはポーズの連続表現である。
相手がプロのアイドルならその動きまで
機敏にしなければならないと考えるが、
先生はただの素人。なら意識するのはポーズだけだ。
曲が始まると魔素を纏う。指を突き出し
太陽が昇る姿を表現する。次は日が昇り
照らされた大地で喜びを表現する動きにつなげた
魔素は答える。昇る太陽に光を与えた。
十分に時間を溜めて放つならスーパークラッカー
で派手にダンサーを彩るのだ。
「な…なんだと…!?
アイツのどこにそんな才能が…!」
「(今だ、冥斗、晴樹!)」
一貴が合図を出すと紫陽冥斗と伊藤晴樹がダッシュで駆けつけてバックダンサーを飾る。
「す、すげえ…まるでB-Boyのプロチームだ…」
「魔法一つでここまでできんのかよ!?」
「カッコいいぞー!」
バク宙、ストップモーション、ソロ
全てが完璧に出来上がっている。
魔法を使っているので演出も派手に仕上がっており普通の体育館は今や東京ドームのライブ会場
顔見知りのフィールドになった。
曲が終わると生徒は一斉に駆け寄った。
「カッコよすぎだろ!女子なんか全員
目が釘付けになってたぜ!?」
「カズぅ、何の魔法を使ったんだよ〜
てか俺にも教えてくれよ!」
「やっぱ冥斗君だよね!?
今度テスト勉強誘っちゃおうよ〜!」
「え〜!私晴樹君のキックアピールが好きー!」
騒ぐ生徒にワナワナと震える先生
とんでも無い大声でお前らあ!と叫ぶと…
「すっばらしいダンスだったぞ!!!
流石は野上先生が認めただけはある!」
「何だよ今更気持ち悪りぃ…」
生徒からは汚物を見るような視線を向けられる
「あ、あ〜…いや、これはだね
野上先生から指示で…」
「そんな卑怯な真似する先生じゃねえだろ…」
とにかく全員で詰めよるやいなや
全員で足蹴リンチを決め込む事になった。
「いた…いたい…やめて〜!!!
悪かったから許してくれ〜!」
「ったく…これに懲りたら2度とすんじゃねえぞ」
「はひ…」
先生は結局一人保健室まで向かった。
「し…失礼しばず…」
「あら、貴街先生どうしたんですか?
顔はともかく体までズタボロに…」
「挑発の仕方が悪がっだとでず…
生徒にリンヂぐらいばしだ…」
今回体育を指導したのは貴街弥。
かなりのナルシストで生徒からはネタ枠なんて思われて
いる3年2組の担任だ。
「いででっ!新川先生もう少し手を抜いて…」
「もう…生徒は声もあげませんよ」
治療中の荒川蓬樹は
仕方なさそうに薬品をぬって包帯を巻く。
閲覧いただきありがとうございます!
一貴たちが魔法で用意したパフォーマンスは
Eで始まる某ダンスボーカルグループをモデルに
してます。




