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その次の日も、一人死んだ。
今度は中学生男子だ。
もう何人目になることか。
うちも引っ越しが決まった。
父が会社を休み、引っ越し先を探してきたのだ。
荷物をまとめていると、叔父がやって来た。
母方の親族だ。
叔父に会うのは久しぶりだ。
「ニュースで見た。大変なようだね」
「ああ、大変だ。命がかかっているし。もう明日引っ越すことにした。業者も引っ越し先も決まったし」
「その必要はないさ」
「えっ?」
「ばあさんはどこだ?」
「奥の部屋にいるが」
叔父は奥の部屋に入った。
そこには祖母がいた。
祖母は右手と柱を硬いひもでつながれていた。
不本意だが、こうでもしないと本当に危険なのだ。
叔父は祖母の前に立つと、持っていたカバンから何かを取り出した。
それは手鏡だった。
ひどく古いものに見えた。
その鏡を祖母の前に持っていく。
鏡に祖母の顔が映る。
「なにしてるんだ」
「悲しいけど、もうこうするしかないんだ」
祖母は鏡に映る自分をじっと見ていたが、しばらくすると祖母の顔が変わった。
明らかに苦しみだし、そのうちに全身をばたばたさせるようになった。
そして床に倒れ、倒れたまま激しく床を飛び跳ねる。
水から上がった魚のように。
「!」
父が思わずかけよろうとしたが、叔父が制した。
「動かないで!」
叔父の強く鋭い声で、父は止まった。
黙って祖母を見る。
祖母はとても八十四歳とは思えないほどに激しくのたうち回っていたが、やがて静かになった。
その顔に零れ落ちそうなほどの苦悩と恐怖を刻んで。
「終わったな」
「これはやばい。救急車を呼ばないと」
「必要ないよ。もう死んでる」
「なんだって」
叔父は大きくため息をつくと、言った。
「お前は知らなかったようだが、ばあさんは呪術師だったんだ」
「呪術師?」
「ああ、簡単に人を殺せるほどのな。もちろんむやみに殺したりはしないが、痴呆で訳が分からなくなったんだろう。無差別に近くにいるものを殺すようになった。自覚のないままに。だからこの近くで毎日人が死んだんだ」
「……」
「それを止めに来た。これを使って」
「その鏡はなんだ」
「これは呪術を跳ね返す鏡だ。ばあさんは鏡に映った自分に呪術をかけた。その呪術が跳ね返って、ばあさんに呪術がかかったんだ」
叔父はそう言うとうつむき、少し涙を流した。
終




