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神=鬼畜

 次の日から王都ダンジョンの活動する階数が変更になった。まずは11階層から16階層の入り口の魔法石を目指す。

 11階層からはオークの上位種が出てくる。ただし遠距離攻撃をしてこない。


 通常のオークの他に、力の強いオークソルジャー、剣技が上手いオークナイト、盾を使いこなすオークタンク、全てにおいて高い能力のオークロードなどが相手だ。


 注意するのは盾を使いこなすオークタンクになる。魔力球を盾で受けられる可能性があるからだ。

 しかしアイヴィーの魔力球の威力だとオークタンクでも一撃で倒してしまう。

 オークタンクが出てきた時だけアイヴィーが倒してくれるそうだ。スパルタと言っても安全はしっかり確保してくれている。


「エルシー、オークタンクが出てきたら射線が有れば顔を狙えよ。盾で顔が見えない時は俺がやる」


「了解! 頼りにしてるわ、アイヴィー」


 11階層以降は他の冒険者がほとんどいない。人の目を気にしないでダンジョンを進んでいける。

 現在、私の魔力球の大きさは10㎝くらいになっている。


 魔物の集団に遭遇した。

 先頭にオークタンクがいて、顔に射線が一応は通っている。私は魔力球をオークタンクの顔を目掛けて撃ち込んだ。

 オークタンクは素早い動きで魔力球を盾で受ける。爆発音がしてオークタンクを2mほど後退させる事に成功した。

 オークタンクの後ろにいた集団が巻き込まれてこちらへの突撃が止まる。


 アイヴィーが私の一歩前に出る。

 右手に魔力球をつくり上げる。大きさが20㎝ほどだ。

 体勢を崩しているオークタンクにぶつかる。

 凄まじい爆裂音。オークタンクを盾ごと屠る。

 相変わらずの圧倒的な破壊力。

 私は生き残っている個体に魔力球を撃ち込んでいった。


 他の冒険者に会わずに16階層の入り口に着いた。

 私の魔力を魔法石に登録をする。これで16階層まで来れるようになった。

 時間はまだ午前中だ。このまま21階層の魔法石を目指す事になった。


 16階層からは各種オークと新しくオーガが出現するようになる。

 オーガは身長が2.5mを超える巨体で強靭な肉体を持っている。筋骨隆々な身体だ。通常は緑色の皮膚をしているが、怒ると赤色に変化して大暴れする。


 ここからはアイヴィーが全て倒してくれる事になった。私の魔力球では、まだオーガを一撃で倒せないと言われた。

 アイヴィーは浅い階層と同じようにダンジョンを進んで行く。あっさりとオークとオーガを屠っていく。


 私は背中のリュックに大きめの魔石を詰め込んでいく。

 アイヴィーが苦戦する相手っているんだろうか? 歩く最終兵器だわ。これで全盛期より弱いとは。

 アイヴィーにどうやって封印されたか聞いてみた事があるが教えてくれなかった。自分の不利な情報は眷属にも教えないそうだ。


 リュックがパンパンになる頃に20階層の一番奥についた。20階層の試練の間だ。

 今回も何の気負いもなく試練の間の扉を開けるアイヴィー。


 10階の試練の間と同じ30メートル四方くらいの部屋だった中央には3mを超えるオーガがいる。

 オーガ亜種だ。最初から赤色の皮膚である。こちらを見ると雄叫びを上げて突っ込んでくる。思わず身体が竦んでしまう。


 アイヴィーはいつも通り平静な様子で30㎝ほどの魔力球を作り上げる。間髪入れずオーガ亜種に撃ち込む。

 耳をつんざく爆発音。

 オーガ亜種は下半身だけになっていた。


 アイヴィーはゆったりと奥の階段状の祭壇を登り、なんの躊躇いもなく宝箱を開ける。宝箱には細身の黒色の剣が入っていたようだ。

 アイヴィーの瞳が青色から赤色に変わる。

「ふむ」と一言呟いて、その細身の剣を左腰に装着した。


 アイヴィーのお眼鏡に叶う剣だったのか。そういえばアイヴィーの接近戦ってどうなんだろう。以前、鷲の翼のカイドルに斬りかかられた時はあっさりと躱していたな。


 私はオーガ亜種の魔石を拾いアイヴィーに近づいた。

 そこでアイヴィーの背が私を超えている事に気がつく。


「アイヴィー、また身長が伸びたのね。まだまだ成長期かしら?」


「あぁ、今のオーガ亜種のおかげだな。目線がやっと元通りだ。この身長が俺の通常の大きさだ。これ以上は大きくならんな」


 現在のアイヴィーの身長は180㎝弱くらいか。隠しているので顔つきが分からない。

 私はアイヴィーの顔を見てみたい衝動に駆られる。


「ねぇ、アイヴィー。成人になったあなたの顔が見てみたいんだけど」


「うん? 別に何も変わらんぞ」


 気のない返事をしながらもアイヴィーは頭巾を外して顔を見せてくれる。


 頭巾から溢れる白銀の髪。

 切長で涼しげな目。

 一流彫刻が彫ったような綺麗な鼻筋。

 色気を感じさせる口元。

 芸術品? 国宝?

 そんな言葉はアイヴィーの容姿を(たと)えるには陳腐だ。

 これは神だ!

 神の降臨だ!

 私は数秒間アイヴィーに見惚れていた。

 いや魅了されていた。

 神が口を開く。


「いつまで呆けているんだ。早く21階の魔法石にお前の魔力を登録するぞ。ここまでくる冒険者は皆無だからな。これからは安心してお前の強化ができるな」


 そうだ。

 私はこの神が鬼畜だった事を思い出し、身体が震えた。

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