絶対的強者の真理
今日も何とかダンジョンでアイヴィーのノルマをこなした。
今は夕食を食べ、入浴を済ました落ち着いた時間。私はアイヴィーの部屋に行く。
ノックをしないでアイヴィーの部屋に入ると、アイヴィーの片方の眉が少し上がった。
「近頃のお嬢さんはノックもしないで他人の部屋に入るようになったのかな?」
「アイヴィーは500年も封印されていたから知らなかったのね。婚約者でもある姉と弟の関係にはノックなんていらないのよ」
鼻で笑うアイヴィー。そんな姿も絵になる。
「まぁ良い、それで何か用か?」
「用って訳ではないけど、アイヴィーと少し話をしたかったのよ」
「それは残念だ。案外俺は忙しい。今も世界征服の計画を考えていたところだからな」
「そう、その事なのよ。アイヴィーは世界征服をするって言っているけど、なんで?」
「これはまた愚問だな。世界征服ができる力があれば、殆どの奴が世界征服するだろう。力ある者なら当たり前の思考だ」
そうなの? そんなものなのかな? それでは世界征服した後は?
「アイヴィーの考えは少しは分かるわ。それなら世界征服した後はどうするの?」
「今日は愚問が多いな。世界征服した後の事など知ったことか。俺は世界征服が望みで、その後のこと等には興味がない。皆んな勝手にすれば良い」
アイヴィーは迷いが全くない。自信満々に話してくる。私は何故か正しい事を聞いている感じになってくる。
「世界征服の後はどうでも良いだなんて無責任じゃないの?」
「本当にお前は馬鹿だな。誰が俺に責任を負わせる事ができるんだ。俺は絶対的な強者だ。誰も俺に責任を負わせる事などできる訳がない。責任があると言う事はそれより強い者に命令される事だろ」
馬鹿を諭すような顔になるアイヴィー。
「いいか、俺は不老不死なんだよ。世界征服は壮大な暇つぶしだ。それ以上でもそれ以下でもない。世界征服をした奴は歴史上いない。だからそれをやってみたいだけだ」
ある意味純粋なまでの欲望だった。
私の普通の器でアイヴィーを理解しようなんて馬鹿だった。