ご主人様は鬼畜
その日は王都ダンジョンの6階層に戻り、私がオーク狩りをやった。私の魔力球はアイヴィーと比べて小さいが、破壊力は抜群だった。
徒党を組むオークの集団に向けて魔力球を放つ。
一発で沈むオーク。
魔力球は連射も効く。
オークの遠距離攻撃は無い。
ただこちらに突っ込んでくるだけ。
それに魔力球をぶつける作業。
途中からアイヴィーに左手でも魔力球を出すように指示される。
連射速度が倍になる。
魔力球を30発くらい撃つと魔力切れなのかフラついてしまった。
アイヴィーが私の服の中に手を入れ、直接左胸を触る。びっくりしていると暖かい力が身体に入ってくる。どうやら眷属の紋章を通して、魔力を回復してくれたようだ。
「ほれ、早く魔石を拾って来い」
ぞんざいに私に指示するアイヴィー。私はリュックに魔石を詰め込んでいく。
少しすると前方にオークが現れる。魔力球をオークに撃ち込む。
私は夕方になるまでこのサイクルを繰り返した。
最後の方では魔力球の大きさが一回り大きい6㎝くらいになっていた。
集めた魔石は、お金換算で昨日と同じ5万バルト分だけ納品した。あまり目立ちたくないとの判断だ。殆どの魔石を持ち帰り帰宅した。
確かに王都ダンジョンに入る直前にアイヴィーは「スパルタで行く!」と言っていたが、アイヴィーは私が思う以上のスパルタだった。
次の日から王都ダンジョンの6階層から10階層をひたすら周回をしていく。
毎日2周のノルマだ。距離にして20Kmになる。戦いながら進んでいくため、朝早くに出発して夕方頃に終わる。
それでもダンジョンでは魔物を倒して行くと身体能力と魔力が上がる。五日もすると身体が慣れてくる。
安心していたところにアイヴィーの指示が変わる。
「今日から6階層から10階層の周回のノルマを3周にするからな」
ここに確かに鬼畜がいた……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
1階から5階層はコボルトやゴブリンが出現する。だいたいの冒険者は5階層までで生計を立てている。
4人パーティで1階から6階層の入り口まで行くと魔石がお金換算で4〜5万バルトが手に入る。
生活には困らない程度だ。
6〜10階層は中堅を超えたベテラン冒険者がいる。
オークが相手になる為、実力がしっかりしていないと逆に稼ぎが悪くなってしまう。オーク討伐で生活できるようになると一端の冒険者と認められる。
オーク討伐で生計を立てている冒険者は1割いるかどうかだろう。
11階層を超えるとオークの上位種が多数出現する。
11階層を超えて活動する冒険者は1%くらいだろう。大手のクランの中心パーティぐらいになる。
現在、私は6階層から10階層の周回をしている。目立たないようにしていても目立ってしまう。
今は頭巾で顔を隠している。外からは目だけが見える。
私とアイヴィーは謎の冒険者として噂になってしまった。
オーク討伐で生計を立てているものでも10階層の試練の間に行く冒険者は少ない。オークキングがそれだけ危険性があるって事だ。
私は関係なく試練の間に入りオークキングを屠る。
11階層の魔法石から6階層に転移しようとしたら、ちょうど11階層に来たパーティと遭遇した。4人パーティだった。男性が3人、女性が1人だ。
私とアイヴィーは軽く会釈をして、すれ違おうとした。
その瞬間、一番近くにいた男性がアイヴィーに対して剣を振り抜いた。
アイヴィーは軽く身を躱す。
私には剣もアイヴィーの動きもまったく見えなかった。
緊張感が辺りを包む。
頭巾越しにアイヴィーが声を出す。
「ヤル気なら容赦はしないが?」
剣を振るった男性は笑い出す。
「ハハハハ! いやぁ、すまん。ちょっと噂になってる冒険者の腕を確かめたくてな。俺は鷲の翼のカイドルだ」
「こちらはお忍びでダンジョンに潜っているので名乗る名前はない。すまんな」
「そうか、まぁそんな奴もいるだろ。じゃ、またダンジョンで会ったらよろしくな」
軽い調子でカイドルは11階層のダンジョンの奥に向かっていった。
カイドルのパーティが見えなくなるとアイヴィーは私を見る。
「エルシーは鷲の翼って知ってるか?」
「王都で一番大きなクランね。カイドルは中堅のエースかな」
「なるほどね。そこそこの剣の腕だったから、増長しているのか。虎の尻尾を踏んでしまっても気が付かないんだな」
「何か報復でもするの?」
「いや、今は雌伏の時だ。羽虫に構ってる場合じゃないさ。さぁあと2周残っているから急ぐぞ」
どんな事があってもアイヴィーの鬼畜度は変わらない。